騙し絵の牙/横綱相撲! | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。




騙し絵の牙

横綱相撲!
監督:吉田大八さん
出演:松岡茉優さん、大泉洋さん、他



吉田大八監督の最新作ということで「騙し絵の牙」を観てきました。コロナにより公開延期になり、かなり長い時間予告を劇場で観させられていたので、すっかり観た気になっていたパターンのやつ!

そんな「騙し絵の牙」、劇中のセリフ同様「めちゃくちゃおもしろいです!(キリリ)」。とても楽しみました。


色々グッときたんですが、主演2人の松岡茉優と大泉洋が物凄くよかったです。この2人の魅力だけで飽きないまさに横綱相撲的なお芝居でした。

大泉洋のものすごいおもしろいしキレものだけど、なんか凄い怖い部分持ってそうな感じが今回かなり出てて、個人的な大泉洋観とかなり解釈一致な感じでした。色んな大泉洋作品の中でもこの大泉洋が1位。待ち合わせてる陰と陽のバランスが絶妙なのよね。

そんでもって松岡茉優も毎度のことながら最高。松岡茉優が出てると無条件で応援の気持ちが湧き上がる病気なので、今回も応援しながら見てましたが、まさか!あんな素晴らしいラストを用意してるとは!と楽しみました。


ともかく凄いテンポで色々起きまくる映画で、編集が見事。語りしろも多い作品なんですが、さっきも言ったけどラストの松岡茉優にグッときましたね。

私個人の話ですが、私の業界も雑誌と同じようにどんどん衰退していってる文化を仕事にしてますから、ラストのああいう松岡茉優の選択と目の付け方にはめちゃくちゃグッときました。それまでの物語や描写の積み重ねで、「この人ほんとに本が好きだし本屋が好きなんだな」というのを観客にちゃんと刷り込ませてるからこそ生きてくるラストですね。ただのどんでん返し的な騙した騙されたではない、「私はエンタメが好きだからどうにかしたい」というピュアさが根本にあるのがいいなと思いましたし、これは今後衰退していく文化を生業にしてる人みんなに共通する普遍性があるなぁなどと思いました。

予告では騙す騙される!的なお話な印象を受けるけど、というよりは「エンタメ論」的なお話として見ましたし、そこがめちゃくちゃおもしろかったです!ここまで王道なエンタメに振った吉田大八作としても新鮮でした。気分的にはこういう職人仕事的な、または横綱相撲的な吉田作品、もっと見たいかも。