私をくいとめて
「く!」
監督:大九明子さん
出演:のんさん、林遣都さん、他
大九明子監督の新作ということで観てきました。「勝手にふるえてろ」「美人が婚活してみたら」と、ここ2作品はどちらも年間ベスト級。今作も期待しておりました。
おもしろかったですよー!
正直、全体の出来だけで言うと過去2作品のほうが上だとは思うんだけど、のんの圧倒的魅力と大滝詠一で押し切ると言うパワープレイは全然嫌いじゃなく、魅了されました。ただ過去2作品のほうが展開的な工夫と毒っけ、派手さはやっぱりあって今回は割と淡々としてて、こじんまりとした作品ではあります。散文的だしね。比べるとやや物足りなさはあるけども、まぁこれはこれで好きかな。
とりあえずのんさんが素晴らしく魅力的で、ちゃんと綿矢りさ作品の主人公に見えました。大九監督は毎回生活描写、特に部屋のデザインが素晴らしいですよね。あの部屋や料理、ファッションなど、のんさんを彩る各要素がちゃんと主人公の人となりを雄弁に語っていてこの辺は見てて特に楽しい点でした。大九作品の肝は個人的にはここだなぁと毎回思います。
あと誰もがグッとこざるをえないのは、橋本愛とのんの共演でしょう。あまちゃん以来、しかもかなりメタともとれる彼女たちのやりとりは直接的にお話に関係があるかは置いといてもものすごくグッときて、ちょっと泣けたな。あまちゃんも今作も、「ここから出れない」話であったし、その後ののんの騒動とか見てたわけなので、いや〜グッとしましたね。
話の要所でかかる大滝詠一の「君は天然色」も物凄くよかったです。まぁこれも話と関係あるかと言われるとあれだけども、シーンとしてはかなり好きでした。「く!」ってやつ。
全体的にのんのアイドル映画としてとてもよかったです。そこに脚本的なうまさやおもしろさがややついてきてない気もするけど、脳内のAとのやりとりや、クライマックスの「私をくいとめて!」の絶叫シーンとか、ともかく画面に惹きつけられる魅力はとてもありました。
大九作品の過去2作品が「コミュニケーション」についての話だったように今回もコミュニケーションについての話だし「他人とどう関わり合って生きていくか」の話でした。全体的にさらっとしてるし散文的ではありますが、大九監督の作家性の理解がまたひとつ進んだ様な一本として割と好きでした〜。