青くて痛くて脆い/「気持ち悪っ…」 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 

 

 

 

※ネタバレ注意

 

 

 

 

青くて痛くて脆い

 

「気持ち悪っ…」

 

監督: 狩山俊輔さん

出演: 杉咲花さん、吉沢亮さん、他

 

 

 とにかくコロナで洋画が全然公開されないということで、普段観ないものを…ということで「青くて痛くて脆い」を観てきました。原作未読、予備知識なしで鑑賞。

 

これがビックリ!まったくノーマークでしたが、ものすごくグッときた映画になりました。割とまじで今年のベストテンに入れたいくらいです。

 

 

 

中盤のバーベキューパーティーで杉咲花がさっそうと登場したときは驚きました。「あ、こういう話か…」と。その瞬間に「あ、この話想像以上に気持ち悪い話だぞ…」そして「この禍々しい心の暗部、俺も感じたことがある感情かもしれないな、なかったことにしてるけど…」と思ったのでした。

 

 一緒にモアイというサークルを作った杉咲花のことを「あいつは死んだんだ」なんて言ってた吉沢亮の実態は、ほんとにひん曲がったそれこそ痛い、嫉妬とエゴと恋愛感情とコミュニケーションの歪みと…ものを斜めから見る性格だったり…それらを全部間違った方向にこじらせたもので。この方向の学生の薄暗い感情みたいなものをしっかりと描き、そこに観客を向き合わせる作品ってあんまりなかったですよね。キツさでいうと「何者」を超えてるような気がします。


しかも、この杉咲花と吉沢亮の関係性って、ほんっとにあるよね。あるし、見てきたし。ほんとあるんですよ。そして怖いのは「じゃあお前はそういう気持ちになったことないのか?」ってことで、僕だってたまたまこうならなかっただけで、何かを間違ってればこうなってたんじゃないか?と思わせる怖さがこの映画には濃厚にあってね。そこがこの映画の白眉だと思います。


個人的に思うのは、これって男と女が逆だったらこの問題って起きてなかったんじゃないか…ということで。このしょうもなさは男だから起き得たもので、本当に男というもののしょうもなさと気持ち悪さが詰まっていると思いました。この問題の本質はほんとに他人事ではなく、問題をひとつひとつ解体していくと今向き合わなければならない問題が詰まっていると思いましたね。


この男のしょうもなさの描きこみがハンパなく上手くいってるからこそ、クライマックスの杉咲花のゴミを見るような目や、やべぇこいつ話通じねぇという呆れ顔、そして渾身の「気持ち悪っ…」がめちゃくちゃ効きます。男はバカなのであそこで初めて気づくんですよね。本当にバカです。でもこれ、こういうの、ほんとうにあるよね。知ってるもんこれ。


ただ「気持ち悪っ…」と言われただけ、あそこで突き放してもらっただけ、まだよかったのでは?あの「気持ち悪っ…」はある種の救いで、本当はあそこまで感情で向き合ってくれないよ。ほんとうに暗い話で出口のない話だし、一見救いのないような話だけど、でもラストで彼があの選択を取ろうと、そう決断したのはやっぱりここで杉咲花がしっかり向き合ってくれたからなんだよね。杉咲花には頭が上がらないよ!

 


ほんとに他者を理解すること、他者とちゃんと向き合うことってまじで大事で、こちら側の勝手なイメージって往々にしてクソなこと多いじゃないですか。意識高い系の皮をかぶったヤリサーだよ、なんて言われてるあいつが実はめちゃ良いやつ、とか、本気で社会を変えようとしてるやつだった、とか、ほんとにあるし、それに気づいた時の自分の醜さへの後悔と反省って、どうですか?感じたことない?( ̄∀ ̄)ニヤッ


そんな俺たちのひん曲がった感情に容赦なく向かい合わせる映画がこの「青くて痛くて脆い」でした。


言いたいことがないわけではなく、特に松本穂香の都合のいい使い方は気になったかなぁ。彼女の視点をもうちょっと上手く使えたら、もうちょっと掘り下げてたら、また違った第三者視点からの批評的な視点というのも付与できたのかなぁなんて。彼女の視点が周りの人間とはひとつ違った段層にあるっていうのがちょいちょい見え隠れする分、彼女の使い方はもうひと工夫あってよかったなぁと思います。


まぁでもしかし、こんな映画だったのかよ…!と今年トップレベルで衝撃を受けました。舐めることなかれ。僕は全力でオススメします。