The Last of Us PartⅡ/暴力に、復讐に、終わりはない。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。




The Last of Us PartⅡ

暴力に、復讐に、終わりはない。


前作はただいまHBOによるドラマも製作中。まぁ文句なしで歴史に残るゲームになりましたラストオブアス。その続編のPS4のゲームですね。The Last of Us PartⅡ。これをプレイし終わったのですが、これが全世界的に賛否真っ二つという感じでしてね。問答無用の大絶賛だった前作とはまた違った受け入れられ方をしている本作。せっかくなので僕もプレイした感想を記録としてちょっとだけ書いとこうと思います。



このラスアス2、批判がかなり多いですが、僕はめちゃくちゃ素晴らしい作品だと思いました。「暴力と復讐」というテーマにしぼるとほぼ完璧な脚本だとすら思う。ラスアス2はゲームでしかできないことをやってのけています。これは映画でも漫画でもダメで、「誰か」を操作しその「誰か」の主観で物語を進め、その「誰か」の体験をプレイヤーも無理やり体験させられるという、ゲームという媒体でしか表現できないことを、「暴力と復讐」というドギツいテーマでやってのけた怪作にして快作だと思っております。

序盤からまさかの展開ですが、いきなり前作の主人公であるジョエルが死にます。前作で共に旅をしてきたエリーは目の前でジョエルが殺されます。殺したのは謎の女アビー。ゲームはそこからエリーの復讐の旅がスタート。プレイヤーはエリーを使い、エリーの主観視点でアビーに復讐をすべくアビーを追いかけていきます。前作からの蓄積もあるし、全世界のプレイヤーはみんなエリーに親心を抱いているので、当然アビーは圧倒的悪だし、お話を進めるごとにどんどんその気持ち、なんなら憎悪を積み重ねていきます。「復讐」とそこから得られるカタルシスをプレイヤーは期待するし、もちろん僕もそこを期待していました。

しかし、そこで終わらないのがこのゲーム。そして賛否真っ二つの理由もここにあるんだけど、物語ももう終わりと思った、クライマックスと思った、そんなところで、なんとここに至るまでのアビーの物語がはじまり、プレイヤーはアビーを操作しないといけなくなります。これまで圧倒的悪として君臨していた、憎しみに憎しみを積み重ねてきた「敵」の話がはじまるのです。しかもかなりのボリューム。普通のゲームなら憎き敵を倒して復讐を果たし、それなりのカタルシスを得てちゃんちゃんとゲームが終わりますが、そんなカタルシスを与えてなるものかという作り手の意思がビシビシ伝わってきます。アビー視点で話を進めていくとわかるんだけど、アビーは大切な人をことごとくエリーに殺されていて、もうほんとにいたたまれない、気まずい気持ちにどんどんなっていきます。

かつてタマフルで三宅隆太さんが「カニと修造理論」というのを話してましたが、

詳しくは↓




まさに本作は「カニと修造」極まれり。視点の転換をここまでうまく使い、しかもそれを徹底したアンチカタルシスを深める方向で使ってくるとは思いもしませんでした。ぶっちゃけアビーを使い始めると、もうアビーに感情移入マックスになっちゃってる自分がいて、でもエリーにももちろん感情移入しててですね…。それぞれの壮絶な体験と復讐心をきっちりそれぞれの視点で体験させられ、それぞれにきっちり感情移入した状態で、2人で命を奪い合わなければいけないのです。もう辛すぎるよ!!

ものすごく胸糞悪い展開。ですが、同時にものすごく「暴力」または「復讐」というものに対して真摯に向き合った作品だと思いました。というか「暴力」と「復讐」というテーマに向かい合いすぎた結果、こんなゲームが生まれてしまったというべきかもしれません。エリーとアビー、どちらにも正義があり、どちらも大切な人を失った。ではどうすればこれを回避できたのか?と聞かれればそれは無理でさ。どちらかが暴力という手段を行使した時点でもう戻れない地獄の道は必然的に決まっていて、その「暴力」「復讐」に出口や終わりや甘ったるいカタルシスなんかない。あるのは虚無だけである、という正しすぎるメッセージをプレイヤーに突きつけてきます。それは、視点の転換や誰かの人生を操作するという主観性など、ゲームでしか味わえないモノであり、圧倒的な暴力の「現実」を突きつけ徹底してカタルシスを排するというアンチゲーム的なモノでもあって、、ゲーム「らしさ」と「らしくなさ」の二面を絶妙なバランスで味合わせてくれます。近年でも僕はかなり心をかき乱された一本になったし、唯一無二の感情を味わったし、僕は代えのきかない傑作だと思うんですよねぇ。

ライムスターのPOP LIFEの宇多丸さんのリリックに「こちらから見りゃサイテーな人 だがあんなんでも誰かの大切な人」というリリックがありますがこのリリックをすごい思い出しながらやってました。


よくこんな攻めた内容を、歴史的傑作ゲームの続編でやったなぁと、その攻めた心意気に僕は称賛を送りたい。「暴力」とはなんなのか、真摯に暴力と向かい合った大傑作だと思います。