のぼる小寺さん/くどぅーの身体性 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。




のぼる小寺さん


くどぅーの身体性
監督:古厩智之さん
出演:工藤遥さん、伊藤健太郎さん、他



工藤遥 主演ということで、ハロプロ好きとしては見届けに行かねばな…と思っていた「のぼる小寺さん」を観てきました。

工藤遥はモーニング娘。に入った時からいつだって輝いていた。それはもうとんでもなく輝いていた。






モーニングを卒業してすぐにニチアサの戦隊ものの役を取り活躍、そしてついにスクリーン初主演「のぼる小寺さん」であります。モーニング娘。加入時から見てきた身としてはもうこれだけで感慨深くてね…映画の中身はどんなんでもそれなりに満足するわなと思ってましたが、予想以上に素晴らしい青春映画でグッときました。


まずよかったのはなにより工藤遥 くどぅーであります。ほんとに頑張ったし、キラキラと輝いていました。この映画は、工藤遥が魅力的であり観客が彼女に惹きつけられなければ成り立たない脚本なんですが、見事にやりきった!しかもごまかしのきかない「身体性」そのものが重要な役。実際にのぼる、落ちながらものぼる、そののぼる姿そのものに感動が生まれる役なわけで、戦闘集団モーニング娘。とニチアサ戦隊ものを経た工藤遥にはうってつけの役であったと思います。


言うなれば工藤遥はこの映画において圧倒的強者で彼女を中心に周りが感化されていくお話なんですよね。何かを損得なしで心底好きである、夢中になれるものがある、これって青春映画において圧倒的強者なんですよね。進路希望調査をめぐる先生との対話なんかですごくそこが際立ちます。

人からどう思われるとか、周りとうまくやるとか、そんな学生生活という小さな枠にとらわれず、彼女はひたすらに壁をのぼる。上に上にのぼる。そんな彼女に、僕たちはただただ見惚れる。そして何故かわからないがとてつもない応援の気持ちが湧き上がってくる。「あなたはアイドルを応援しているのではない。アイドルを応援しているようで実は自分を応援しているのだ」と言ったのはニーチェですが(大嘘)、その彼女を応援する気持ち=自分を応援する気持ちが徐々に波及し、だんだん自分も上に上に登っていってしまっているもんで。そんな誰かを応援することがものすごくポジティブに描かれてて、この映画の精神性が僕はたまらなく好きです。見てよかったし、そういう意味では元アイドルの、元モーニング娘。の工藤遥がこの役をやることの意味はかなりデカイと思いました。

ま、となると個人的好みからするとラストシーンはもっと男側を置いていく終始上に登り続ける圧倒的な存在、学生生活などとは超越した存在として描き切ってもよかったかなぁなどと思ったりしました。「そんなことはいいからさ、君も登ろ?」とホースで水をかけてくるような、そんな手が届かない圧倒的な工藤遥でも良かったかもしれない。でも、彼女の最後の顔はこの映画ではじめて等身大の女子高生になる。そこに少しホッとしたりもした。