エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ/全肯定してくれる存在 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。




エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ

全肯定してくれる存在
監督:ボー・バーナムさん
出演:エルシー・フィッシャーさん、他



最後に観た映画が「ハーレイ・クイン」なので、ほんとに久しく映画を観てませんでした。コロナウイルスにより映画館に行かない生活になってしまったわけだけど、じゃあ映画を家で見てるのかと言われればそれは否。

ここ最近感じてたけど、年間100本くらい映画館で観てた僕らでも、もう映画館行けませんってなるとそれはそれで平気になるし、なんなら家ではもう観なくなっちゃうもんなんだなってこと。映画館で観ることが習慣になっていたけど、もうこれからは家で観る習慣もつけないとほんとに観なくなっちゃうね。

家で映画を観るというのはこんなにも難しいのかと痛感する日々。まぁそんなこと言ってたらはじまらないので1ヶ月ぶりに映画をちょいちょい見始めました。

そんなわけで見逃してた「エイス・グレード」を観ました。アトロクのムービーウォッチメンで課題映画になったこともありで。


まぁもうとにかく心をえぐられました。かつての自分の恥ずかしいところを引っ張り出されてかき回されたような気持ちです。何かしなきゃ、変わらなきゃ、イケてる自分になりたい…そんな思いと空回り、ほんとに刺さるよね。

中盤のプールシーンは名シーンですね。音楽の使い方と演出の妙に仰々しい感じもプラスに働いてて「なんで来ちゃったんだろう…」というみんな一度は感じたことがあるあの気持ちになりました。

主演の女の子の演技がほんとに天才的なんですが、絶妙にまわりと噛み合わない感じとか、焦りとか、その焦りを見せないようにしてる演技とかがほんとにうまくてね。プールに行くまでがまずいいよね。お手洗いに少しこもって心を落ち着けたあと、いよいよプールへ行くぞ!と窓(現実)を見下ろすあのシーン。あの窓シーンの引きの画はほんとに印象に残ってるシーンです。


なんにせよなりたい自分となれない自分の間で思い悩むって誰にでもあったし、そして心底切実だったよね。あれはなんだったんだろうか。いや今でも多かれ少なかれあるのかもしれませんね。

いろいろ空回りまくる彼女だけど、でも「いやでも彼女は絶対大丈夫だな」と思ったシーンがあってそれはお父さんが出てるシーンほぼ全部なんですよね。

とにかくお父さんが出てるシーンが全部素晴らしいし、お父さんが素晴らしいんですよね。特に後半の火を囲んでの親子のシーンでは『無条件で自分のことを全肯定してくれる存在がいることの心強さ』を心底感じましたし、ちょっとあのシーンは涙が出ました。この超強力な1点を彼女は持ってる。彼女は少々なにがあっても大丈夫だなと思えるくらいあのシーンのいろんなものの詰まりっぷりには感動しました。

この立ち位置の女の子の映画ってなかなかなかったから、ほんとに新鮮だったし、フレッシュなシーンもあり、笑えて泣けてえぐられて、とても楽しみました。

まだまだ映画館行けないけど、徐々に家で映画を観ることに慣れていきたいと思います…。観なきゃいけないものは溜まってるんですが、中々ねぇ…。