ジョジョ・ラビット
他者への優しさこそが未来への扉を開く鍵
監督:タイカ・ワイティティさん
出演:ローマン・グリフィン・デイビスさん、スカーレット・ヨハンソンさん、他
タイカ・ワイティティ監督の新作「ジョジョ・ラビット」を観てきました。オスカーでも色々とノミネートされてたし評判も良かったし楽しみにしてましたが、これがむちゃくちゃ素晴らしい映画で超大好きな1本になりました…!!
評判がいいのは聞いてたけど、まさかこんなにもいい映画だとは…!アカデミー賞取れなくても俺がオスカーをあげるよ!!今年まだはじまったばかりですし、今のところ傑作だらけですが、この「ジョジョ・ラビット」は頭ひとつ抜けてダントツで大好きです。
ナチス政権下のドイツに暮らし、ナチス教育にどっぷり浸かりしかもイマジナリーフレンドがヒトラーという少年が主人公なんだけど、彼の母親が実はかくまっていたユダヤ人の女の子と出会い心を通わせていき…という話ですが。
とにかくですね最もグッときたのは、戦争中という他者への優しさや対話が無意味な残酷な世界であっても、それでも希望への扉を切り開くのは誰かへの優しさである、っていうところだったりしました。ナチスに憧れる少年とユダヤ人女性というわかりやすい構図ではあるけど、これはものすごく普遍的なことで、対話することやコミュニケーションを取ることの可能性を諦めちゃいけないしそここそが人間の持つ希望性なんじゃないのか!という素晴らしい映画だったんですよね。一見嫌なやつに見えたサム・ロックウェルやオスカーノミニーも納得のお母さんスカーレット・ヨハンソンやそして何より少年の心の変化。残酷で死体だらけの地獄の中でも、それでも色んな人の優しさが繋がれていく姿にめちゃくちゃグッときましたし、ちょっとどうかと思うくらい泣いたなぁ。
全体的には子供目線で見る戦争ブラックコメディなんですが、タイカ・ワイティティの作家性とめちゃくちゃあってて笑いながらも物凄い皮肉が効いてたり、または笑うようなテンションで演じられてるけど実はものすごく残酷なことが行われてたり、笑いと残酷性、リアルとファンタジーの描き分けのバランスがまじ見事。
そしてうまいのは小道具の使い方と反復で、前半描かれたショットが、後半で意味合いが反転して描かれる演出がほんとにうまくて、特に靴と靴紐には死ぬほど泣かされたなぁ。スカーレット・ヨハンソンの言葉や行動や表情、またはスカーレット・ヨハンソンを捉えるカメラワークはほんとに目が離せないし、全てが映画的に繋がってくるんですよねぇ。中盤は辛すぎてどうかなるかと思いました。どこか危うげというか、前半からどこかそこが知れない感じがあって、スカヨハの演技はほんと絶妙だし、忘れられないセリフがめちゃくちゃ多いです。サム・ロックウェルにも泣かされたなぁ〜。彼とゲームオブスローンズ のシオンのやりとりが毎度おもしろく、あとは彼らが同性愛関係にあるのでは…ということを匂わせる感じもうまかったです。あと主人公の親友の眼鏡の男の子も最高でした。
ラストはめちゃくちゃ悲しいけどめちゃくちゃ感動的で、抑圧という抑圧を乗り越え生き残った彼らが、靴紐を結び、扉を開け、ある曲に合わせてダンスを踊る。全ての行動にスカヨハとの会話がフラッシュバックするのがほんとに切ないわけだけど、やっと解放され暗闇の中から微かな希望の扉を開いた彼らが踊るダンスはとてつもなくキュートで切なくも美しく尊い。
ラブストーリーとしても、ブラックコメディとしても、戦争映画としても、少年の成長譚としても、親子ものとしても、あらゆる方向からグッときたし、なにより映画全体に通ってるキチッとした倫理観というかなんていうんだろうね物語が示す姿勢というかさ、すごい良かったし、でも確かにあるキュートで優しいタイカ・ワイティティの作家性にもうほんとに脱帽。気が早いですが、まぁ今年ベスト級の1本です。本当に素晴らしい映画でした。