「舞妓はレディ」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。







舞妓はレディ
9月22日(月) 15:15~ TOHOシネマズ渋谷




好き度: ★★★★☆ /5点



いつも心に「おおきに」「すんまへん」「おたのもうします」



「舞妓はレディ」、周防監督の新作ということでけっこう楽しみにしてましたし、タマフルで課題映画になったということで観てきました~!これが想像以上に素晴らしかった(´∀`)!大好きな映画でしたよ~。

まずお仕事映画として、すごくよかったです。まずその仕事へのリスペクトはもちろん、その仕事のトリビア的なことが知れる楽しさや、一般の僕らにも通じてくる普遍的な教訓とか、あと重要なのはちゃんと厳しさを描くということ。今年は吉田監督の「銀の匙」、矢口監督の「WOOD JOB!」、そしてこの周防監督の「舞妓はレディ」は今年のお仕事青春映画3部作と言いたいくらい、素晴らしいお仕事映画が豊富な年だったように思います。

あとですね、この映画「マイ・フェア・レディ」のほとんど日本版リメイクじゃないか!というところで、これはビックリしました。というのもですね、僕、「マイ・フェア・レディ」って観たことなかったんですよ。この映画きっかけで観たんですが、お話の構造や設定、セットやカメラ使いまで、いたるところでマイ・フェア・レディしててビックリしました。


オードリー・ヘップバーンめちゃくちゃ可愛かったです(´∀`)

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はじめて観た、「マイ・フェア・レディ」ですがこれがとってもおもしろかった!題名は聴いたことあるけどどんな内容かなんて1ミリも知らなかったのですっげぇ新鮮な気持ちで観ました。もっとこういういわゆる名作ってやつを観てくれば良かったんですが…エルム街の悪夢を全部見たり悪魔のいけにえを全部見たりしているティーンだったので…。

ま、そんなわけで、ほぼ「マイ・フェア・レディ」の日本版リメイクじゃん!と、とってもビックリしました。教授と方言をなおすという本筋とかそもそもミュージカルであるとか、しかもそこに舞妓という日本ならではの設定をうまく落とし込んだなぁとホント思いました。

「マイ・フェア・レディ」とかその他、他国の言葉の方言とかナマリって日本人でしかも英語能力のない僕なんかはわからないというのが一番歯がゆいところなんですよね。最近だと「アメリカンハッスル」とかがそうでした…。で、この方言問題を日本人だからこそ楽しめるエンターテイメントにちゃんとしてくれてしかもそれが「マイ・フェア・レディ」同様ちゃんと物語の軸になるというがとても楽しかったです。


教授は長谷川さん。




あと細かいところですが、方言の矯正シーンのミュージカルの歌詞が微妙にマイフェアレディとところどころリンクしていたりして楽しかったですね。「京都の雨は盆地に降る」という歌詞はマイフェアレディの「スペインの雨は平地に降る」という歌詞への目配せだったり、甘いお菓子のギャグがあったり、この辺もさすがだなぁと思いました。「マイフェアレディ」を観た直後なのでもう一回見に行きたいなぁ。ぜったいまだまだオマージュシーンがあるはず!


そして大事なところで方言が出て…というのもマイフェアレディですな




そしてミュージカルとしての魅力、それを歌う登場人物の魅力。これがとても気持ちよくマッチしていてもう観ていてニコニコが止まりませんでしたよ~。

まずやはり主演の上白石さん。ほんっとに素晴らしい!!なんなんだこの新人は!!はじめの芋っぽい少女から徐々に洗練された少女へと成長していく過程が素晴らしかった。しかも、ビックリしたのが歌うまっ!ということ。半端なく歌がうまいですな、オーディションの様子をテレビでやってたんですがもうバケモノ感があるくらいのうまさでビックリしました。しかも方言を3つ操らなければならないというハードルに加え、舞妓に必要な舞や声楽など数えきれないほどのハードルがあったと思うのですが、それをしっかりこなした上白石さんは素晴らしいし、そしてやはり周防監督はさすがです。もうさ、親でもないのに嫌でも親心が芽生えてしまうタイプの女の子ですよねこの子は。だからこそラスト、舞妓になり、一回り成長した彼女を見ると、やっぱどうしても涙が…。親から見る子供ってこんな感じなのかな…と親心を先取りしました。


この子は確かに存在する!存在していてほしい!…と思えるくらい素晴らしいキャラクター




そして脇も素晴らしかった。なによりあのお茶屋の女性陣の素晴らしさ、まずはやっぱり富司純子はほんとに素晴らしかった。なんなんでしょうかあの気品は。厳しさもありつつ、ピンチの時にだす犯罪的な癒しオーラ(´∀`)声が出なくなった主人公を励ますあのシーンは特に素晴らしかったなぁ。

あと田畑智子と草刈民代も素晴らしかった。あとここはノイズの部分なんですが、周防監督の草刈さんへの愛があふれすぎてて、中盤のミュージカルはやや場面として浮いてたというか、そこいる?っていうくら尺が長くて、その夫婦愛にちょっと笑っちゃいましたw 田畑さんも素晴らしかったです。この2人の背中を観てちゃんと成長していく過程がしっかり描かれていてよかったんですよね。田畑さんが実は一人で着々と芸妓の練習していたというのをしっかり主人公に見せるとか、厳しいなぁと思っていた草刈さんも、実は主人公の愛情ゆえの厳しさだったんだなぁっていうのがわかったり、俺もこういう上司というか大人にならなければ…と切に思いました。。あと、竹中直人はみなさんどうでした?俺は正直、特にミュージカルシーンなんかはちょっとノイズでしたw

あとこれは個人的にですが、舞妓の姿から、ぱっと私服姿に変わった草刈民代さんにかなりグッときちゃいました(´∀`)ステキ


富司純子の犯罪的な母性




ほんと優しい人ばかり!




ミュージカルは正直もっと盛り上がってもいいかなぁと思ったりもしましたが、このこじんまりとした手作り感も味なのかなぁと。でもしっかりとアガル感動ポイントがあって、やっぱ初めで出てきた曲を成長した彼女がもういっかいやってみせる。するとまったく違うものに聴こえるという、ミュージカルの一番アガル曲の使い方をしっかり押さえてくれていて、ラスト周辺の回収というか、前半の曲をもういちど…というのを3連発くらいする流れはほんと凄まじい多幸感でした(´∀`)


やっぱちゃんとしたミュージカルは楽しいなぁ



あとやっぱり改めて学ばされたのが、「おおきに」「すんまへん」「おたのもうします」というこの3つの言葉の精神ですよね。ものすごく基本的な言葉ですが、その当たり前ができない大人が多い。これは僕含めて。舞妓という特殊な仕事ではありますが、ものすごく大切で普遍的なメッセージがあって、改めて、そういう基本的なことを大事にしなきゃなぁと思いましたね~。


この精神。忘れてはいけませんね。




あと、どうしても気になったのはほんとラストのラスト、最後あのセリフで終わるっていうのはちょっと気になりましたね。ちょっとずれてないかなぁ?と。

あと、母親問題について。もっとうまく使えばドラマチックにいくらでもできただとうなぁとは思いましたが…。でも、知ってたけど言わなかったんだよっていうこの使い方もなんか品があっていいかなぁと今は思っております。あと主人公の動機の部分がちょっと弱いかなぁと…。

あとイップス。僕はああいう形で「あっ、出た」っていうのはけっこうありかなぁと思っております。まぁここに母親のエピソードを入れ込んだりしてうま~く成長のハードルとしてひとつ設定することもできたなぁとは思いますよね…。まぁでも、ちゃんと舞妓と向かい合ったというところで治ったというのもまぁギリありなバランスかなぁと。この映画の魅力のひとつはギリギリのところまでウェットな感情を抑えてるところだとも思います。主人公が耐えて耐えて、一気に感情が爆発というこのバランスはとても好きです。泣くのこの一か所ですからね。あ、あの踊りの先生の絶妙さ、素晴らしいですよね~。ちゃんと実った努力を誉めてくれる大人が子供の成長には必要なんだなぁと思いましたね~


というわけで、舞妓はレディ。僕はとっても好きな映画でした。というかとてつもなく愛おしい映画といいますか。ところどころノイズはありますが、決して嫌いになれない!!好きです!



おわり



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スタッフ


監督

    周防正行 

脚本

    周防正行

製作

    石原隆

    市川南

    宮前周次

    石川豊

    柴田嘉章

    細井俊介

    小形雄二

エグゼクティブプロデューサー

    桝井省志

プロデューサー

    土屋健

    土本貴生

    堀川慎太郎

撮影

    寺田緑郎

照明

    長田達也

美術

    磯田典宏

装飾

    松本良二

録音

    郡弘道

編集

    菊池純一

助監督

    片島章三

キャスティング

    吉川威史

    南谷夢

振付

    パパイヤ鈴木

日本舞踊振付・指導

    花柳達真

音楽プロデューサー

    和田亨

製作担当

    島根淳

プロダクションマネージャー

    前村祐子

音楽

    周防義和

主題歌

    上白石萌音


キャスト


    上白石萌音 西郷春子

    長谷川博己 京野法嗣

    富司純子 小島千春

    田畑智子 百春

    草刈民代 里春

    渡辺えり 豆春

    竹中直人 青木富夫

    高嶋政宏 高井良雄

    濱田岳 西野秋平

    中村久美 原田千代美

    岩本多代 鶴一

    高橋長英 西郷田助

    草村礼子 西郷梅

    岸部一徳 北野織吉

    小日向文世 市川勘八郎

    妻夫木聡 赤木裕一郎

    松井珠理奈 福名

    武藤十夢 福葉

    大原櫻子 小島千春(少女時代)

    徳井優 三味線の師匠

    田口浩正 長唄の師匠

    彦摩呂 鳴り物の師匠

    津川雅彦 「万寿楽」の馴染みの客

    パンツェッタ・ジローラモ

    瀬戸朝香

    加瀬亮



作品データ

製作年 2014年

製作国 日本

配給 東宝

上映時間 135分

映倫区分 G