海を感じる時
9月18日(木) 18:40~ テアトル新宿
好き度: ★★★☆☆ 3/5点
海は広い、と感じる時
『海を感じる時』、『blue』の安藤監督作、市川由衣主演。公開前にけっこう良い評判が流れていたのと、市川由衣がすごいがんばってんぞーと聞いていたので若干のゲスの気持ちも込みでテアトル新宿に行ってきましたー。市川由衣ちゃん最高でした(・∀・)
この原作、78年に現役女子高生が書いた小説で映画も当時の時代設定。 ある日、授業をさぼり新聞部の部室で暇つぶしをしていた女子高生の市川由衣は、3年生の先輩・池松くんから突然キスを迫られまして。池松くんは「ただ女の人の体に興味があっただけ」と言い放ち、相手は誰でもよかったというが、父親を亡くし、厳格な母に育てられて愛を知らずにいた市川ちゃんは、それでも池松君を求めちゃって~。やがて池松君は進学のため上京し、市川ちゃんもその後を追って東京の花屋に就職するが……。みたいな感じのお話。構造は市川由衣が池松くんとセックスをはじめる女子高生パートと上京してからの二人の半同棲生活を追う東京パートをいったり来たりして描くブルーバレンタインスタイルでした。
いきなり2人の全裸からスタートします。池松君最近すげぇ脱ぐね~
市川由衣ちゃんがとにかく良かった!正直この女ほんっと何考えてんのか全然わかんないんですよね。これをいっちゃぁおしまいだけど市川由衣の考えてることが理解できないというか納得ができないことばっかりで、そこがおもしろかったです。女性脳の映画なんだと思いました。その辺はやはり『blue』の安藤監督はある意味ピッタリなのかなぁと。
女性脳映画の秀作。あの春日太一さんも大好きとのこと!
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市川由衣の観察映画として秀逸で、微細で、複雑で、、めんどくさい、市川由衣演じる恵美子は今何を考えているんだろう?と、そう考え続けた2時間ちょっとでした。
高校生パートはひょんなことから性に目覚め、そこにズブズブとはまっていく様が、切実でありまた滑稽でもあり、そしてとてもエロかったですよ。今でいういわゆるセフレですよ。今ならそんな問題じゃないことですがやはり数十年前の日本ということ、そして市川由衣は、父親がなくなっていてけっこう厳格なマインドの母親に育てられたこともあって、うちの娘がセックスしまくってるらしいと知ると、もう超ヒステリーになって娘を泣きながら叩きまくってついには鬱っぽくなっちゃうというのが、まぁ誇張されてるだろうとは思いつつ、ちょっと前の日本ならこうなっちゃうのかもとか、これが時代なのか…と感じたり。あと、池松君に死んだ父親をなんとなく重ねているようなファザコン的な要素もみられました。
ここで印象的だったのがフード描写。ある日市川由衣が家に帰ると、セックスしまくってることを知った母親に「セックスなんか!けがらわしい!」と怒られまくられ由衣ちゃんも負けじと「あんたもやったから私がここにいるんじゃん」とかもう大ゲンカ。「もういい。ご飯にしよう。おなかペコペコ」と由衣ちゃんが言うと「セックスしておなかが減ったなんてけがらわしい!」とご飯を取り上げられる。怒った由衣ちゃんは、戸棚にあったおかきを取出しひたすらボリボリと食べる。食べてるところを母親が叩きまくる!しかし、黙々とおかきを食べ続ける。・・・・・というこのシーン。ほんと印象的でした!ここ最近ではとてもいや~なフード描写でした。また、黙々と食べ続ける市川由衣の食欲と、もう止まらなくなった性欲がかぶって見えてくるとても嫌なシーンでした(最高の意)
フードといえば居酒屋も印象的に何度も出てきます。うまそう!
市川由衣は後半の東京パートになるとますます心情が読めなくなってきて、その長ーいトンネルに入っちゃった感がおもしろかったです。情緒不安定というか、今でいうちょっとメンヘラっぽいんですよね。性に目覚め性に溺れる、そのブクブクと溺れちゃってて上がってこれないドン詰まり感というか、ふたりで東京で半同棲していて幸せなはずなのにとても暗~く、なんだか悪い意味でのドメスティックな感じが見えてくるんですよね~。
そして市川由衣が言葉にできない複雑な感情を持て余らせて、モヤモヤモヤモヤしているこの鬱々とした感じがほんと苦しかった。2人で久しぶりにご飯を食べていると「お腹空いてないでちゅ」と超唐突に赤ちゃん言葉になって甘えようとするけど、池松君は放置みたいなシーンがとても印象的でした。自分の気持ちをどう処理すればいいのかもうわかんない!というモヤモヤ感、とてもよかった。超怖いけど。
東京パートはショートカット。
そんな中、ひょんなことからお持ち帰りしたサラリーマンとセックス、しかも手を縛られ目隠しされてのセックスをやっちゃって…それがきっかけで池松君との関係がおわっちゃうのです…。
モンモンを抑えられない由衣ちゃん。自ら男を連れ込んじゃう!
そんなとてもドメスティックで暗い、鬱々とした画面から、一気に青々とした海へ。素晴らしい対比でもあり、市川由衣のモヤモヤがどこかスッととれたようなラストにも見えました。親も自分のもとから離れ、そして愛していた彼も失い、すべてを失って、やっと「自分がとても小っちゃい世界の中にいたんだ。」「自分が『世界』と思っていたものはホントの『世界』の一部でしかなかったんだ」と最後の最後にすべてを失い気づくという、ちゃんとした成長の物語になっていると思いました。
とにかく余白が多い映画なので、いろいろととりかたがありそうです。
あと最後にこれは言わせて、ということをひとつ。市川由衣ちゃん、もちろんガッツリ脱いでいておっぱいもしっかり出しています。が、市川由衣ちゃん、なにより素晴らしかったのは、『お尻』なのです!一人で銭湯に入るというシーンがあるんですが、その時の後ろ姿、もうね素晴らしいお尻だったんですよ。……どう?観たくなった?
おわり
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スタッフ
監督
安藤尋
製作
藤本款
重村博文
小西啓介
プロデューサー
成田尚哉
尾西要一郎
アソシエイトプロデューサー
山口幸彦
松岡剛
キャスティングディレクター
杉野剛
原作
中沢けい
脚本
荒井晴彦
撮影
鈴木一博
照明
中西克之
音響
菊池信之
美術
井上心平
小坂健太郎
編集
蛭田智子
助監督
石井晋一
制作担当
熊谷悠
キャスト
市川由衣 恵美子
池松壮 亮洋
阪井まどか
高尾祥子
三浦誠己
中村久美
作品データ
製作年 2014年
製作国 日本
配給 ファントム・フィルム
上映時間 118分
映倫区分 R15+