「地獄でなぜ悪い」を観た。 | そーす太郎の映画感想文

そーす太郎の映画感想文

しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

 

 

 


「地獄でなぜ悪い」は、園子温版「風立ちぬ」

僕は園子温作品では「愛のむきだし」がとにかくめちゃくちゃ好き。その後の「冷たい熱帯魚」「恋の罪」「ヒミズ」はおもしろいとは思うけどそれぞれ文句もあったり、「希望の国」は正直嫌い。と、こんな感じです。

というわけで、地獄でなぜ悪い観てきました。

話は①國村隼および堤真一のヤクザ抗争、②ヤクザの娘二階堂ふみと偶然巻き込まれた星野源、③長谷川博己率いるボンクラ映画自主制作軍団ファックボンバーズ。この3つが同時進行で描かれ、ラストに向けて集約していくという感じの構成。

この映画、ここ最近の日本映画ではあんまりみないくらいガッツリコメディなので、前半このテンションに乗れなかったら相当きついかなぁと思いますw 
個人的にですが、前半おもしろいところもいくつかありましたが、正直テンポ感がおそいというかイマイチ乗り切れなかった感はありました。まぁおもしろいんですが。正直だるかったかも。

まぁなんやかんやありまして、後半、ふたつのヤクザの抗争を映画にするとなるこの場面。正直、いままでの文句をすっとばしたくなるくらいよかったと思います。

まず良かったのがなんといっても二階堂ふみのおっぱい。100点!

 



スライディングもかっこよかった。あと堤真一と國村隼のたたずまい。これめちゃくちゃかっこいい。特に國村隼のタテはほんと鳥肌立った。 あと星野源の怪演。これもよかった。コカインの件とかバカだな~と(笑)

とにかく、ツッコミどころは無数にあるし、前半テンポ悪いし、滑ってるギャグもいくつもある。
だけどこの後半のこの大殺戮祭り、そして ラストの長谷川博己が最高の魅力だと思います。

僕はこの長谷川博己のキャラクターが、まったくキャラの方向性は逆ですが、風立ちぬの二郎が重なりました。 何を犠牲にしても、どんなことがおころうとも、俺は作りたいものを作るんだ!という物づくりをする者の狂気性みたいなものを集約しているのが長谷川博己のキャラクター。そしてついに俺の作りたいもの(撮りたいもの)が撮れた、犠牲も伴ったがそんなものは関係ない、俺はやったんだ!と全力疾走で翔けて行くあのラストのなんとも清々しいこと。あのカタルシス。走りながらどんどんと膨らんでいく妄想(ほんとは妄想と言いたくないのだけど)、これがクリエイターというものなのだろうか。だからこそ悲しく、そして清々しく、なんとも感動的なのです。そこからのもうひと段階のオチ、「カット!!」と響く声、これは園子温自身の話だったのだ。宮崎駿の風立ちぬがそうであったように。

あぁなりたくてもなれないやつがたくさんいるなか、それをやりとげてそのまま映画にして、おれはやったぞーというあのラスト“カット”はやっぱ園子温はすごいとおもう。長谷川博己になりたいしそうならなくてはというじぶんもいるがでもそれを斜に構えて見ちゃってる自分もいて。なんていえばいいんだろうなぁ。やっぱ自分なんか冷めちゃってるのかともおもうし。それもいやだ。だけど実際そうだったりするし。地獄でなぜ悪いはすげぇんだけど、なんかツラい。いろんな感情が湧き出てくる映画だった。正しい、まっとうなカオスだ。


おわり。