今年初となる釣行は、東京湾でシーバスジギングだ。「年の初めは釣果が見込めるもので」と置きにいくスタイルの私と釣友ナベさんは、いそいそと川崎の船宿に集合する。
潮は大潮、だがしかし全国的な寒波に見舞われ関東は強い北風、船長によると「海は悪い」という。むむむ……小春日和の東京湾で穏やかな釣行を思い描いていたのだが、早くも雲行きが怪しい。
出港して少し走ると、まだ湾奥の運河のようなエリアにいるというのに、強風白波で船が揺れ始める。しぶきをあげながらやや慎重に進む船。「近場から探っていきます」と船長のアナウンス。ポイントを選びながら思うように移動することはできない、ということだ。
とりあえず近いところから順番に、ストラクチャー周りなどを探っていく。もう、とにかく寒い。気温も低いが、強い北風がさらに体感温度を押し下げる。それでも魚が釣れれば気も紛れるのだが、どこへ行ってもごく稀に船中の誰かに1匹2匹かかる程度で、続かない。たまに釣れると船長も思わず「あ、釣れた」などと口に出てしまうほどだ。
そしてまた移動する船。少しスピードを上げて走り出すと、トモ近くに座っていた我々は途端にしぶきを浴び始める。たまらず船室へ駆け込むナベさん。私は釣り船の狭くて居心地の良くない船室があまり好きではないので、「まあ防寒ウェアは防水だしどうにかなるだろ……」と、フードをかぶってしぶきに背を向けて外に座っていた。
しばらくすると、なにやら尻のあたりが冷たくなってきた。嫌な予感がする。……浸水? いやでも防水ウェアのはずだが……濡れた椅子が極度に冷えているだけか? いやその割には嫌な感じで尻から股方面にかけて冷たいエリアが広がっていくではないか。これはやはり何らかの理由で浸水しているのだ。
何なのだまったく。楽しく穏やかな釣り初めのはずが、寒いわ釣れないわ、おまけに尻までびしょ濡れで、なんでこんな惨めな思いをせねばならぬのだ。そもそもシーバス釣行なんて、手堅いから選んだはずなのに、この悲劇的な状況は何なのだ……。
そう思っていると、船は何の構造物もない、開けた浅場に停まった。近くには鳥山も見える。ここでしばらく、鳥山に向かって船を流すという。ナブラこそ見えないものの、海中の生体反応を示唆する鳥山にやや期待感が高まる。
ほどなくして、乗船している全員に満遍なく当たりが出始める。騒がしくなるほどの釣れ方ではないが、20人の誰かしら1人は魚を掛けているような状況だ。
私もここで何本かシーバスをゲット。結局この日は最後の最後でやってきたこのポイントで、ほとんどの人が大方の釣果を得たようだった。いやはや、身も心も寒々しい結果に終わらなくてよかった。なかなかに厳しい釣り初めなのであった。