ヤックは獣医学科に通う学生だ。あと卒業試験を残すだけという時になり、両親が交通事故で突然亡くなる。田舎の町で獣医所をしていたヤックの父は、人の良さ故に貯蓄は少なく、その少ない貯蓄も銀行が倒産したため失っていた。そして今彼の死によって、別の銀行のローン返済の代価として家もろとも差し押さえられてしまう。


絶望のどん底にいたヤックは卒業試験を途中でぬけだし、目の前を走りぬける列車に飛び乗る。サーカス一座の列車だった。そこで下働きをしながら、無骨な一座の集団の中で汗まみれの生活を送る。団長から獣医の仕事を命じられたヤックは、一座の動物の管理を一手に担うサーカス団の幹部オーギュストのもとで働く。オーギュストは快活にヤックに仕事を教え、彼の妻マリエンナと共にヤックを温かくもてなす。


ある日、オーナーが大金をはたいて、他のサーカス団からボナという名前の象を手に入れる。オーギュストとマリエンナにボナの芸仕込みを任せる。しかし、ボナはなんの芸もできなかった。怒り狂うオーギュスト。彼は、ボナを鞭打ち、他の動物をも恐怖に追い込み始める。オーギュストは快活さと陰湿さを併せ持つ、突出した二重人格者であった。そんなオーギュストをボナは悲しく見つめる。しかし、ボナは芸ができないわけではなかった。ポーランド育ちのボナは、英語を理解しないだけだった。そのことに気づいたヤックは、オーギュストとマリエンナにポーランド語を教え始める。サーカス団の運命も好転したように見えた。


ボナを通じて、ヤックとマリエンナの距離は急速に近くなる。そんな二人の様子をマリエンナの旦那オーギュストは快く思わない。ある誤解がきっかけで、ボナとヤックの目の前で、オーギュストはマリエンナに暴力をふるう。オーギュストとヤックの取っ組み合いの喧嘩。その様子をボナはただひたすら見ている。マリエンナは、オーギュストのもとを去る。次の日オーギュストが懇願するも、もう手遅れだった。そしてオーギュストとマリエンナの負傷により、象の芸も延期となり、客足も遠のく。


サーカス団の経営は苦しく、倒産間近のある日、長年働いてきたサーカス団の役者と労働者が「赤信号」に遭う。つまり、オーナーの命令で、走るサーカス列車から彼らは突き落とされた。ヤックの友人2人は死に、残りの何人かは、オーナーに復讐をはらそうと列車を追いかける。


「赤信号」のあった次の日、アクシデントが起きる。馬も草食獣も肉食獣も動物たちがみな脱走した。放し飼いになった動物たちが一座の中を走り回る。混乱した状況の中、ボナがオーギュストを蹴り殺す。そして数日後、テントの下から動物に押しつぶされたオーナーの死体が発見される。


93歳になったヤックが当時を振り返るというスタイルで書かれる。若い時のヤックがとてもハンサムで正義感あるれる魅力的な人間なのに対して、年老いたヤックは皮肉屋で気難しく一筋縄ではいかない人間となっている。そのギャップも、一人の人間が長年生きてきた結果の変化としてとれて、面白い。また、老人ホームの孤独な生活と、サーカス団でのロマンと正義感にあるれる日々が対照的だ。老人になってもサーカス団に魅了されている様子や、老人ホームを抜け出してサーカス団の切符売りになってしまう最後のくだりも良い。


とにかく登場人物の描写が生き生きしてて素晴らしい。ちょっとした動作や仕草もその人物に味をだしている。