「早く、急いで。」
赤いランドセルを私に渡しながら、先生の顔は強張っていた。
私は事態が飲み込めぬまま、言われるがままに帰り支度を急いだ。
「お母さんの容態が急変したそうよ。すぐ帰りなさい。」
この言葉がことの発端だった。
私には、うまく状況が飲み込めていない。
お母さんに何があったんだろう?状況を理解するには、まだ幼すぎた。
廊下に出ると兄が向こうから走ってやってきた。
「早く、帰るぞ!」
小学6年生の兄と小学1年生の私。
小雨の中、まだ大きなランドセルを背負って、必死で兄を追いかけた。
「気をつけて帰るのよ!気をつけるのよ!」
後ろから、兄の担任の先生の声がした。
2人の先生が兄弟を後ろから見守っていた。