珍婚式(その5)
■お色直しは桃色のバカ想い■
今日一日で何度、自分の左腕をあげただろうか。
もう15分は経ったかと思うと、まだ5分しか経過していない。
最初は、髪を掻き揚げる振りをして遠慮がちに見ていた腕時計も、既に遠慮なく振り上げ→僅かの時間の経過に溜息の往復である。
司会者「それでは、新婦のお色直しです!伯父の●●さんにエスコートされ、新婦の退場です!」
そのまま二度と戻らねばいいのに・・・。
と思いながら再び溜息をすると、左脇からグチャグチャ咀嚼音を立てながら美弥子の母が
「おじちゃんはね子供がいないから、美弥子がバージンロードの代わりをしてあげているの。」
ほおー。それで高みにたった気か!?
そのおじさんの奥さんの様子見ると、音楽に合わせて手拍子はするものの、その顔は決して笑ってはいない。
しばらくすると、爆音と共に美弥子が再登場。
って・・・・!!!!!
なななななんだーーー!
デザインが悪いのか、モデルが悪いのか、
眼孔の枠に収まりきらない規格外サイズの紅の豚がリングの前に・・・いやドアの前に。
東京ドーム肉弾戦の実況中継。
師走の寒さもヘッチャラな顎肉はで国産豚肉100パーセントの天然ファーマフラー。
痩せたグラマーしか許されないチューブトップからは、マフィンの頭みたいに脇肉が飛び出して、胴体ははち切れんばかりに今にも鬱血しそう。
「より美しく魅せて」とばかりに塗りこんだラメは、艶出しのつもりが脂汗に見えてます。
後方から見ると、「可愛い中にもセクシー」をテーマに、大胆に背中がカッティングされ、立派に成長を遂げた筋骨隆々の肩甲骨とそれをコーティングした贅肉は、新婦の図太さを如術に表現され、まさに世に憚る不死鳥のよう。
花びらをあしらったウエストからのフリルは、精肉工場で卸された出荷直前のビーフストロガノフを彷彿とさせるデザイン。
対照的に細面の幸薄顔の新郎が、不幸を背負っているのかと思いきやビールサーバーを背中に担ぎ各席に注ぎに回る。
それに追随する美弥子は、列席者に写真を撮られ、「可愛いー」の褒め言葉に、得意満面肉満開の下品な大口笑いをしている。
「お姫様みたいね?」
と周囲に同意を求める美弥子の母。
え?
南瓜の馬車のほうかと思いましたが。
勿論、無言。
と美弥子の良さ(になってないけど)を説明して回ってる。
珍婚式(その4)
■千葉県産アイドルの一発花火■
司会者が、「子供服のカリスマ店員の○○さんの歌披露です。」と今時珍しい、素人の歌披露。カリスマって私知りませんけど・・・って思いながら会場の端に視線を投げると、設営スタッフらしき人たちがカラオケ機材を運んできた。
何の歌か失念したが、「新婦の好きな歌」(司会者談)によるバラードを披露・・・とするとなんと美弥子もマイクを手に取り歌い出すではないかーー!!!
自身の体型を全く無視した肥満を増長させるバブルの遺失物みたいなデザインの衣装で、気分はまるで80年代後半のレコード大賞新人賞。
さぁ、スポットライトよ!全て私を照らしてみなさいよ!と言わんばかりにリズムに体を揺らし、涙で目を潤ませながら歌う。
目を瞑って聞けば、デパートの屋上で営業巡業する立派なローカルアイドルです。
今日は便利屋のバイトです・・・と伏せ目にして時間潰していると、今度は新郎まで参加!
元来音痴なんだろうね、サビの前から既に音程は完全に外し、サビに至っては喘ぎ声に近い・・・。さすがの親戚の円卓からも「彼、音痴だね」と失笑気味。
この不気味なユニットによるバラードはこの後も続く。
この間における鼓膜の振動、
コレ、無駄なエネルギー。
珍婚式(その3)
■シベリア超特急を超越する世紀の駄作■
新郎新婦の生立ちビデオの上映。
余程、太った時代の醜い写真は彼氏に見せたくないのか、小学生からいきなり大人に飛んでいる。一応、「高校時代はチアリーディングやってました。」って写真はあるけど、何十人もの部員が雑然と並んでいるから、本人が分からない。相撲部ですっ言うぐらいみんな立派な太腿だわ。
そうだよね、巨漢のあの写真は見せられないよね~。って、昔、美弥子んちで見た思春期の写真を思い出しながらほくそ笑む。
もう社会人後の写真だ・・・もう終わるかな・・・と胸を撫で下ろした瞬間・・・・!
ミスチルのバラードの最後に、美弥子の胎内エコー画像写真で締めくくっている・・・・・!!!そのテロップに
生まれてくる未来のために・・・。
(ジジャ~ン♪)
ぎゃー・・・。
食事中に子宮内写真が・・・!
彼女、産婦人科で「エコー写真、披露宴でみんなに見せるからプリントアウトしてくださーい」とか言ったのかしら?
ブライダルコーディネーターに「この写真つかってくださーい」ってお願いしたんだろうか?
有り得ない・・・私なら出来ないなと陳腐な力作に想像を膨らませながら、必死に高カロリーの料理と格闘する。
その隣の円卓で美弥子の母がステーキを平らげた跡のプレートに残ったタレを勿体無いわとばかりにズルズル啜り出し、目の前の遠縁の親戚がスプーンで掬うのが明らかに面倒臭くなったのだろうスープごと抱えズルズル飲み干し満足顔。この珍獣たちめ・・・!
肉料理が臓器を彷彿とさせ嗚咽を呼び起こす。
だっ、駄目だ・・・。
もう、帰りたい・・・。
上映後、新郎の顎に力の入っていない声でマイクで
「皆さんにお知らせがありまーす。新しい命が宿りました。順調に行けば、5月に生まれまーす。一生懸けて大切にしまーす」
って、この男、1週間後に浮気してます・・・。(2度目)