F-1や競馬の勝負を左右するのは、

そのほとんどが、車(マシン)の性能や馬の能力で、

勝負に占めるレーサーや騎手の実力は、全体の半分にも満たない、という。

(競馬だと、馬: 騎手= 7: 3。 F1に至っては、マシン: レーサー= 9: 1と言われるようだ)。


つまり、どんなに実力のあるレーサーや騎手であっても、車や馬がダメであれば、その時点で勝負は決まってしまうということだ。


私はこれは、救命できるかギリギリの緊急オペ(下部消化管穿孔等)にも当てはまると思っている。


即ち、どんなに名医であっも

患者さんの容態が悪ければ、救命は不可能で、

外科医側のファクターは、おおよその感覚ではあるが、全体の3〜4割程度(患者さん側が6-7割)、と考えている。


外科医駆け出しの頃は、ブラックジャックやドラマ等の影響もあり、

外科医側が大半のファクターを占めていると考えていた。またそう信じたい気持ちもあった。

しかし、経験を積めば積むほど、外科医側のファクターは少ない(患者さん側のファクターが大きい)と考えるに至った。


緊急オペの適応を考える際にも、

この考え方は有用である。


仮に患者さん要因が6割、外科医側が4割とする。

例えば、全体の60点を、救命できるギリギリのラインとしたとき、

若くて元気な方の、軽症アッペであれば、患者さんの持ち点が満点に近い(初めからほぼ60点ある)ので、よほどの事がなければ、救命出来ないことはない。


重症急性腹症の患者さんを診るときは、

この60点の持ち点のうち、おおよそ何点程度、患者さんが持っているかを

判断するのが重要と考えている。


患者さんの持ち点が20点あれば、

残り外科医ファクター40点で満点を取ることで、

何とか60点に届く(救命できる)。

この時は、完璧なオペと周術期管理が求められ、少しのミスも許されない、ハイリスク手術になる。


患者さんの持ち点が10点以下の場合には、

オペ適応自体がない可能性もあり、

慎重な判断が求められる

(それでも家族とのIC結果で、わずかな救命の可能性にかけて、オペに行く事もある)