私にとって中田監督と古藤選手の師弟関係は非常に興味深いものである。
古藤選手は長年チャレンジリーグのPFUで活躍し、2008/09年のチャレンジリーグではキャプテンとしてチーム初優勝に貢献し、自身もチャレンジリーグのMVPに輝いた。
そこを評価されたか詳しい経緯は実はよく知らないが、2009年より久光に移籍し、今シーズはご存じのように主将としてチーム3冠(国体と日韓戦を含めると5冠)に貢献した。
今年の久光の躍進は何と言っても中田監督あってのものであることは異論はないと思われるが、チーム層の厚さも当然のことながら目を見張るものがあった。
基本的にはスタメンで出場する選手はもちろん、控えの選手も含めてほとんど全て全日本メンバー。
そんな中、唯一主力選手の中で現在に至るまで全日本の経験がないのがキャプテンであり、チーム最年長でセッターである古藤選手である。
今月号の月バレでもそれがコンプレックスだったと語っている。
自分の周りにいる年下の連中が皆全日本で主力として世界と戦った経験を持ち、その人達をキャプテンとして引っ張っていき、セッターとしてゲームを作らなければならない。
古藤選手の立場になってみるとこれは相当きつい環境である。
しかも狩野選手がセッターとして入ってきたこともあり、もちろん実力と経験では現時点では当然古藤選手が負ける訳がないのだが、世間の注目や周囲の期待などの声も耳に入る訳であり、並の選手なら到底耐えられる状況ではないように思う。
前から言っているように、バレーボールの世界ではセッターで負けるというのが通説となっている。
これだけの戦力を整えながら試合に勝てなければ、戦犯扱いされやすいのは当然古藤選手となる。
ましてや中田監督の初陣であり、世間の注目が嫌でも高くなる。
キャプテンとして、そしてセッターとしてこれほどプレッシャーのかかる境遇はない。
中田監督は本当にその辺をよく理解している。
もちろん、中田監督が一番目に入るポジションはセッターであり、さらにキャプテン。
一番みんなの前で怒られるのが多かったのは当然のこと。
しかし、私はなぜ中田監督が古藤選手をこれだけかわいがっているかがよく分かった。
古藤選手は本当に中田監督のことを慕っているし、中田監督としても本当に指導しがいがあるものと思う。
そして、苦しい状況というのもお互いよく分かっているように思う。
古藤選手が年齢のことを気にしていることを中田監督に話した時、古藤選手には経験という武器があるということを話した。
先ほど述べたコンプレックスのことについても中田監督とよく話し合ったのであろう。
そして今年、チームの大舞台に常にゲームを引っ張っていき結果を出した。
チームのキャプテンとしてスポットライトも浴びた。リーグのベスト6にも選ばれた。
あいにく全日本には選ばれなかったがそれは当然今回の選出が若手育成を主眼に置いたものであることは言うまでもないので、それとは別に今年一年で確実に日本を代表とする選手に成長したと言ってよいと思う。
まさにシンデレラストーリーといっていいのではないでしょうか。
来シーズンはどうなるか。
そろそろ狩野選手も育成させないといけないわけだが、おそらく中田監督は日本のために古藤選手を犠牲にして狩野選手を育てるのではなく、実力で古藤選手から正セッターの座を奪うように狩野選手に仕向けさせることでしょう。
狩野選手のためにもまだまだ古藤選手は現役を続けていき、お互い刺激し合いながら成長していくのが望ましいでしょう。
おそらくここまでのストーリーは中田監督と古藤選手の師弟関係がなければ為し得ないことである。
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