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午前中の授業も終わり、帰宅部一行は屋上にレジャーシートを敷き詰め、昼食を共にしていた。
「ったく!アンタは紳士性がないのよ!一生バームクーヘンに埋もれてればよかったのに!!」
「いてて!だからゴメンってば芹花!」
集合して早々、芹花が緋立の頬を引っ張り始めた。意外とよく伸びる。
「ハァ……食事くらい静かに摂らせろよ……」
「あ、あはは……」
それを見て、煉は呆れ顔、風陽は苦笑いだ。
それに加えて周りの生徒からの痛い視線に気付いたのか、二人は揉める(緋立が一方的にボコられる)のをやめて、改めるように箸を握った。皆がそれぞれの食事を口に運ぶ。
「あっ、それでね、朝の勧誘の結果なんだけど……」
風陽が芹花と顔を見合わせながら、嬉しそうに言葉を紡ぐ。
「男の子がね、一人入部してくれそうなの!」
「ほ、本当か!?」
「うんっ」
煉と緋立は思わず身を乗り出した。創部には人数が最低限五人必要であり、今朝の男子生徒が入部すれば帰宅部は完成する。丁度良いことに、今週は仮入部期間。となれば、やることはただ一つ。
「ということだから、今日の放課後はその男子が帰宅部部室に来るはず。やっと得た部員候補なんだから、絶対に逃がさないわ。そのためにはあまりふざけた態度で接しないこと。いいわね?」
芹花の生き生きとした表情に力強く頷く三人だったが、そこでふと、煉が何かに気が付いたように「ん?」と首を傾げた。
「どうした?煉」
「あ、いや、今言っていいのかどうか分からないんだけどさ」
それぞれ疑問符を浮かべながら、煉の次の言葉を待つ。
「その男子が入りたいのって、帰宅部じゃなくて天文部じゃないのか?」
「「…………」」
既に慣れたであろう沈黙が訪れる。
「え?どういうことだ?そいつってビラを受け取ったんだろ?じゃあ、帰宅部に入部したいですってことじゃねーのか??」
しかし、決して頭の回転が速いわけではない緋立が疑問符を浮かべたままで、その沈黙をぶち破った。
それを見兼ねた芹花が、引きつった顔で説明をする。
「……いや、あのね、全国の天文部には申し訳ないんだけど、私達の肩書って『天文部』でしょ?ほぼお遊び部みたいな『帰宅部』っていうのを隠すための。だからビラにも天文部の活動内容を適当に調べ上げて書いたわけ……。うあああぁああぁぁぁぁぁんッ!私って馬鹿だぁあああぁぁぁぁああ!!」
芹花の叫びに、風陽が「わぁっ!?」と跳ね上がる。緋立は少し考える素振りを見せた後。
「あぁ!なるほどな!」
「嬉しそうに納得するなよ!」
煉にチョップを食らった。
「と、とにかく芹花は落ち着け!今日の放課後、その男子はあくまで天文部に入部する為に部室に来るんだろ?ここは完全に天文部員になりきって、入部した後で仲良くなって自然に歩き回ったりすればいいんだ……!」
煉の作戦に、一行は何かを決心したように、唾をを飲み込んだ。
((((我ら天文部……故に我らあり……!))))
決戦は、放課後。
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