皆さんはお財布を盗まれたことがありますか?僕はありません、昨日までは。そういう被害に遭った人たちをバカだとか無能だとかと罵る立場でした、昨日までは。自分がその無能だということをすっかり失念していました。思うに無能というのは無能であることすら認識できていないから無能なのです。
10時22分、レシートにはそう記載されています。僕はバーガーキングでビッグキングのコンボセットを購入し、店内でモリモリ食べていました。チリなのに600円もするし高いなぁと思いながらもWi-Fiが飛んでいるので背に腹は変えられません。味も大したことはありません。なんで客の名前を聞いてオーダーを通すんだろう、番号でやれば良いのにという南米あるあるを感じながらの食事は久しぶり。アルゼンチンのコルドバ以来の高層ビルが乱立する大都会も久しぶりでテンションが少し上がっていました。普段と違うことをするというのもダメですね。いつもはバッグと財布を頑丈なゴムで結んでいるのに、今日はポケットに入れていました。それも200ドルも入れて。と言うのも、前日に滞在したアタカマで「サンティアゴの方がドルの交換レートはよっぽどいいぜ」とツアー会社の親切な兄ちゃんに念を押されていたので、「まぁ着いたらすぐ両替するやろ」との考えの下でした。
食べ始めてすぐに新たなお客さんが入店してきました。白人と混血だった気がするな。その二人組は僕の後ろの席に座りました。で、しばらくすると自分の後ろの席の兄ちゃんがガサゴソし始めて座ってる椅子を僕の椅子にガチャガチャぶつけてきます。このときは席が狭いのかな、バカかな、無能かなくらいにしか思いませんでした。その出来事と同時か直後くらいにもう一人の兄ちゃんが、僕の後頭部辺りにある電源を求めて携帯とライトニングケーブルを手に背後にやって来ました。忙しい奴らだなくらいにしか思っていませんでした。
10分もすると彼らは退散。自分は13時前まで今後の予定をどうするか考えながら調べものをしていました。野球が大好きだから、未来のメジャーリーガーを発掘しに中米にウインターリーグでも観に行こうか。あるいは南をせめてパタゴニアの絶景でも見に行くか。はたまたブラジルに戻ってアマゾンを感じるか。どれも片道6万円くらいするので一時の妄想に終わりますが、まぁこのときは幸せな時間でした。
店をあとにしようと立ち上がりポッケに手を入れると、ないんですねー。これが。お財布が。あーあのときやと気づいたときにはもう遅い。僕は無能だったんです。
でも、意外なことに焦りとかはあまりなかったです。ウユニで大衆の面前でうんちを漏らしてしまった僕は、そのときとどうしても比べてしまいます。あのときに比べれば雑魚やなと。これも無能たるゆえんかもしれません。今起きた事象に勝る衝撃を受けた過去の事象に目が向き反省していないからです。ああ無能。お金が足りなければ空港で寝泊まりすれば良いし、それよりも親に借りたお金を浪費しているという事実に目が向く。トルコでは約8万円、そしてチリでは約2万円。合計10万円。これさえあれば、倍ほど良い宿に泊まることができたんですね、今まで。
後悔しても仕方がないので、店の外に出てお巡りさんを探します。バーキンを出るとすぐに発見、サンティアゴのお巡りさんは馬に乗っています。風情があるな、カッコいい。なんてドヤ顔で写メを撮ってブログに載せる余裕もなく、盗難に気づいた直後にダウンロードしたGoogle翻訳を駆使してスペイン語で会話します。どうやら6ブロック先に交番があるのでそこに行けとのこと。
南米ではバーキンでクレカを使うとき、数百円使用するときですら暗証番号を求められます。だから、クレカの不正利用なんてことはないと思うし財布が戻ってくる可能性も限りなく0に近いので不安も期待もありませんが、一応盗難証明書は発行すべきなのかなという義務感で、警察署に向かいます。これは旅行保険の対象外らしいのでほんとに形式的なもの。
交番には着いたのですが、営業中じゃないみたいで。お花に水をやっている警官っぽい人に聞いてみるとここでは受付してないよって。いや、交番やのに受付してないってどういうことやねん。なんだか、人に聞いてもたどり着けそうにないので、地図アプリを使って自力で行くことにしました。
盗難から約3時間半後の14時頃、二つ目の交番に到着。ここは受付をしてくれるそうです。待ち合いで待たされること30分ほど。話題のカルロス=ゴーン、あるいはMr.ビーンの若い頃みたいな見た目の兄ちゃんが対応してくれます。英語は全くできないので、お互いGoogle翻訳を活用します。ずーっと貧乏揺すりでプレッシャーを与えてくるのが怖かったです。外国では母親の旧姓まで聞かれます。ブラジルでバス予約したときもそうだったなと少し懐かしさを感じます。盗難された場所、盗難されたもの、氏名、パスポートナンバー、あとはチリの住所などを聞かれ終わりかなと思ったら、今度は書いた調書をパソコンに入力。二度手間じゃないですか?調書作成に一時間、タイピングがやたら遅くて30分。解放されたのは盗難から五時間半ほど経った16時頃でした。最後にピンサロの名刺みたいなものだけ渡されたので、盗難証明書は?って聞くと食い気味にお前の手にあるやつだと言われました。ご迷惑おかけしました。お兄ちゃんは今日の仕事これだけなのかな、お互い不思議な体験をしましたね。一日の仕事の大半がGoogle翻訳で極東人と会話ってそんな日があっても良いじゃない。
交番を出て宿に向かう。歴史的建造物が多く立ち並ぶサンティアゴの街並みはたしかに美しい、が全く入ってこないし写真に撮る余裕もない。明日以降どうしようか。手持ちの現金は残り270ドル、ポーランドズロチとかベトムドンもちょっとあるけど、こんなものは使えない。予備のクレカは日本ですら使用していないので使えるか不明。ホステルですら一泊10ドルはくだらないので、使えるお金は残り150ドルってとこか。観光さえしなければ、全然余裕。せっかくサンティアゴに来たけど、残り二週間弱は引きこもり生活になりそう。
宿に向かう途中、両替屋を発見。60ドルほど交換。1ドル676というアタカマでは考えられないレート。向こうでは640とか660とか。今、公定レートを調べたけど671。高くなってる!ドルってやっぱり強い!皮肉なもんだよ。
宿はとりあえずクレカ使えないとこ。しぶしぶ現金で払う。到着したのは18時とかだったかな。だらだらしていると今の22時半という時間になった。さっきあまりにも喉が乾いたので水を買いに行こうと思ったけど、外に出るのもだるかったので宿で購入。「あんたビールはいらないの?」なんて宿のスタッフの黒人姉ちゃんに煽られたもんだから、そりゃ買いますよ。ショート缶に手を伸ばすと「そんなん、足りないわよ」と半ば強制的にロング缶に変更させられる。ええい、どうにでもなれと料金を聞くと3300ペソ。バーキンのセットが3900なのに水1.5リットルとビール470mlで590円って。。。イカれた国だな。
朝から丸の読売移籍でアンニュイになっていたというのに、今日は踏んだり蹴ったりの一日だった。明日はいいことありますように、、、
【以下盗まれたもの】
記
・100円ショップのお財布
・クレカ
・国際学生証
・約200ドル
・約20ドル分の現地通貨
・やる気と明るい未来
以上
続く