一一六日目


 コルドバではタクシードライバーもチーノ、街を行き交う人もチーノ、浮浪者もチーノと煽ってくる。こいつらは人と会話したことがないのか。なんだか、治安もあまりよろしくなさそうだった。


ほら

廃線の哀愁

 出発の二時間前にはターミナルに到着。今日は休肝日にした。腹の調子がいかんせん芳しくない。このあとのバスが些か心配だ。


 便所は一昨日行ったとき無料だったので安心していたが、大便用のトイレは全て外から施錠されている。門番に確認すると20ペソ必要だと言う。後から来たアルゼンチン人っぽい民はトレペを無料でもらって無料で脱糞所の方向へ消えて行ったのだが。どうやら門番のさじ加減で無料になったりならなかったりするよう。お金を支払ってもトレペはもらえないし散々だ。漏らさなかっただけ、マシではあるが。ちなみにこのあとやたら尿が出るので三回ほど厠を利用したが、そのときは無料だった。何回来んねんって感じの表情でニチャニチャされたけど。


 バッグに入っている赤ちゃんのケツ拭きを取り出そうとしたとき、ポロっと正露丸の瓶を落としてしまう。おむすびころりんよろしくコロコロ転がって隣の便所へ。手を伸ばせば取れる距離ではあったが、足が見えているのでそこも利用中のよう。隣人の用が終わってから取ればいいしなんなら渡してくれるかもと思ったのだが、このうんこ隣人は自分の用を終えると正露丸を拾い上げてそそくさと便所を後にした。要は正露丸をパクられてしまった。まずいな、この流れ。ウユニ以降バックパックの奥深くに眠っていた正露丸を思い出しサブバックに移動させ常に重宝してきた代物。若干パニックになる。ビオフェルミンもあるが、速効性の下痢にはやはりあいつが効く。この先向かうウマウアカは標高3000メートル、なんかウユニのときみたく大変嫌な流れではあるが、残り三週ほどなんとか耐え難きを耐え漏糞だけは避けたいところ。俺の成長が試される。


バスに乗り込むとすぐ晩飯が配布された。は?このお菓子が晩飯、マジか。まぁしゃあないかと思いながらも、袋開けたら配って来たおっさんが戻って来て30ペソだ!ってドヤ顔で言ってくる。なんじゃそりゃ。詐欺まがいやろこの手口。「どうぞ」って言われたから受け取ったのに食おうとしたら「金払え」って。よう見たらバス会社の社員はスーツだけどおっさんは私服やったからただの売り子なんやろ。確認不足の俺にも非がある。しかし、30ペソ渡しても微動だにしない。今度はなんやねんと顔を挙げると手を差し出してきた。握手に応じると車内に響くくらいのビッグボイスで「アミーゴ」と。何がアミーゴや。しばくぞ。当然だが、バスが出発する頃にはおっさんは車内から姿を消していた。

 定刻を30分過ぎた18時半頃にバスは出発。晩飯という概念も休憩という概念もこのバスには存在しなかった。一番後ろの座席だったのだが、人がいなかったのでゴロンと寝転がることができた。



一一七日目

 サンサルバドール=デ=フフイには8時半に到着。脱糞もギリギリ間に合った。アルゼンチンで利用したどのターミナルよりも清潔感はあるが、Wi-Fiは飛んでいない。宿までは7キロ。二、三時間暇潰ししつつ、宿まで歩くことにする。

朝飯。75ペソで購入。まぁまずい。

 ターミナルにはウマウアカ行きの表示がある窓口がたくさん。フフイに二泊するが、明後日宿を出たあとにチケットを買いに来ても十分間に合いそう。ここから一時間半もあればウマウアカには行くことができる。

 ダラダラと7キロの道のりを二時間ほどかけて宿まで歩行。歩いていて感じるこの街の違和感、何だろう。そうだ、白人がいない!ウルグアイ辺りから白人ばかりの、まるでヨーロッパのごとき街を旅行してきたけど、ここは先住民系?なのか白人が全然いない。もちろん東洋人らしき顔立ちも。高層ビルもなくて、久しぶりに南米に戻って来た感を味わう。

朝からお熱くて、大変羨ましかった

ボリビア辺りでは毎日見たお祭り。ドンチャンドンチャンやっとるのでフェスがあるっちゅうことは田舎やななんて思ってたけど、おそらくデモ。数百メートルにも及ぶ行進。

 11時半頃に宿着弾。チェックイン二時間前だが、快く入れてくれた。ネットでサンサルバドールデフフイで調べても大した観光名所はないらしい。やはりウマウアカまでの経由地のよう。うーん、ウマウアカ渓谷まで体力温存してだらだらしよう。

 ホステルのスタッフがアニオタだった。「お前日本人!?『ドラゴンボール』は『ワンピース』は?『進撃の巨人』は?」みたいな感じ。すまん、全部読んどらん。これから海外に行って外国人と親しくなりたい人はひたすら漫画とアニメを勉強した方が良いと思う。こういうの一回目じゃないし。少なくともドラゴンボール、ワンピース、ナルト、最近だと進撃の巨人辺りはマジで教養レベル。奴らにとって日本人とはアニメ漫画オタクあるいはTOYOTAを初めとする車生産業者でしかないからだ。好きな漫画を問われたので『るろうに剣心』と答えるとキョトンとされる。必死になって「頬にバッテンの傷があるんや!」って言ったら「『SamuraiX』のことか?」と。そうだ、るろ剣はこっちではサムライXなんだった。ちなみに少年ジャンプもコミックもこっちでは『Syonen』らしくジャンプでは一ミリも通じない。好きなSyonenはなんだ?って聞かれたから。この人は『デスノート』も『未来日記』も知ってる名門オタクだった。未来日記とか俺が中二くらいの頃のやつやん..トークは弾まないが、共通項が見つかるだけでも嬉しい。なんとかアイドル文化を布教できんかな。けやきやらAKBやら。それが無理でも『けいおん』とかザオタクもん。ジャンプで自分が外人オタクと張り合える作品なんてるろ剣とハンターハンターくらいしかない。あとはミスフルだが、アルゼンチン人が野球なんて知るはずない。進撃と同じ月刊マガジン?の『惡の華』も語れるが、あんなドロドロしてその割に大して中身もない作品を外国人は読まないだろう。知っててボードレールの方だろう。ちなみに、そのスタッフには「ボーイ」って呼ばれた。そろそろ大人に見られたいが、髭を生やしたところで元々の中学男児感と肌荒れのコンボで少年にしか見えないよう。悔しい。

 近くのスーパーで買い物。牛肉が1キロ300円なので四食分を想定し700グラム購入。スパークリングワインもボトルで100円もしない。この辺はアルゼンチン有能ですね。田舎の方が物価も安い。野菜に関しては腐ったみたいなやつしかなかった。都会の方が生鮮食品の質は高いようだ。

同じもんばっかでも飽きない。栄養と睡眠しか肌荒れには対抗できん。夜も同じもん食って、無限にけやき坂の動画を観て就寝。



一一八日目

 朝から買い物へ。外が無駄に晴れているのでピクニック気分で酒をかましたい。

マグナムちゃん。150円ほど。


 昨日のスパークリングワインのセールは終了していた、残念。別のボトルワインとルービーを購入。腹が痛いのが少し心配だ。うんこ漏らしそうになりながら公園探し。


荒川の河川敷みたいなとこを発見。ちょうど良い。上裸になって酒をしばきまわす。

酒を飲んだ分と同じ量だけお水を飲みなさいとママから教育を受けてきました。

スパークリングワインはポシュッとなるタイプで手でも開けられたが、こいつはワイン開け専用の釘みたいなやつがないと開けられないタイプ。その辺に落ちてる木の棒でこじ開けたらいつの間にかめり込んでいた。

昼間からフラワーカンパニーズの『深夜高速』を爆音で流して感慨に耽った。この四ヶ月色々あったな。最初のベトナムでは初日にへべれけとなって迷惑をかけ、カンボジアでは延々とトゥクトゥクにぶちギレていた。タイでは暇を弄びながら他の日本人観光客どもに羨望の眼差しを向けた。東南アジアはもういい、行くなら金持ちになってからのシンガポールとマレーシアくらい。ミャンマーは少し興味がある。それからネパールではカトマンズ到着早々、この旅行で唯一利用したタクシーにいきなりうさんくさい旅行代理店に連れていかれ、怯んだりチトワンではやたら高いホテルに泊まらされたり..ぼったくられた回数としては一番多いかも。インドでは終始ムカつき、挙げ句40度近い高熱を出して死にかけた。トルコは全体を通してオアシスだった。どっこいインドを抜けて気が緩んでいたのもあるが、初日に八万円ぼられたのがここまで響いている。そのあとのギリシャで初めてEUに初めて触れて直後のポーランドにはめちゃくちゃ惚れた。絶対にもう一回行きたい。後半戦スタートのペルーはなんと言ってもマチュピチュ、スケールに驚かされた。チルカの魔法の泥は全く肌荒れに効かない。ボリビアではうんこ漏らして恥をかき、それでもラパスは最高だった。まずいまずいと評判のボリビア料理もまずいが、うまくて僕の口にとても適合した。一瞬で抜けたパラグアイはホステルのオーナーが良い奴だった、物価も安いし移住にはもってこい。ブラジルは常に何かの恐怖に怯えていた、銃撃戦マップってなんやねん。それでもイグアスは良かった。ウルグアイはすぐに抜けたけど、コロニアはこの世の天国と思うくらい穏やかな街、物価を差し引けば永遠にあそこにいたい。そして今いるアルゼンチン。ブエノスもコルドバも大都会。白人しかいないしなんじゃこりゃとなったが、フフイは南米そのもの。物価も安いし、観光名所が何一つないからすることと言えば酒飲んでタバコ吸ってアイドルの動画観るくらい、最高。次に行くウマウアカも楽しみだし、最後のチリのアタカマ砂漠もわくわく。残り三週ほどだが、思い切り楽しみたい。

 そんなことはどうでも良い。今流れているAKB48の『言い訳Maybe』名曲過ぎひんか。推しメンの佐藤亜美菜が選抜総選挙であの柏木由紀を抑えて8位にランクインし、見事初選抜入りした曲でありこの曲以降着実に人気を得ていったAKB。佐藤亜美菜は結局総選挙以外で選抜入りすることができず卒業してしまったが、今は声優として押しも押されぬ人気を獲得した。アイドルマスターは詳しくないけど、それの主要キャラに抜擢されてキャラソンがオリコンチャートで週間トップテン入りするほど。AKB時代はストレスから激太りし「亜美錦」と揶揄されたり、アイマスの声優に抜擢されたときもアニオタからアイドルあがりだと糞味噌に叩かれたり何かと炎上しがちだが、AKB卒業後一番活躍していると言っても過言ではない。このサクセスストーリーを思い出しながら、異国の地で泣いているオタクがいることを佐藤亜美菜さんにも知ってもらえればこれ以上喜ばしいことはない。オタクというのはどこまでいってもやはりオタクでしかなくオタクに過ぎないのだ。言い訳を名曲と言ったが、AKBで最も名曲なのは『オネストマン』、異論はないだろう。あれほどアイドルらしく秋豚の「こういうのが好きなんだろ?お前らは」感が全面に表出され、オタク心を鷲掴みにした曲は後にも先にもこの曲のみだろう。

 けやき坂にハマり始めて、アイドル熱が高まっている。同郷の東村さんさえいなければこんなことにはならなかった、悔しい。東京だとか神奈川だとか大都会出身の芸能人はごまんといるが、奈良は稀有だ。思いつくのは明石家さんまくらいのもの。この辺境の地からアイドルが出るとなると県民総出で応援するもの、じゃなくてもオタク感情からすればその共通項一点のみでやはり応援してしまうものだ。東村さんの前はNMBの渡辺美優紀さんを応援していた。みるきーに関しては東村さん以上の思い入れがある。 忘れもしない、2011年1月。僕は中学三年生。県内公立三番手のK高校を受験するか、四番手のH高校を受験するか悩みに悩んだ。決め手となったのがみるきー、なんとあのNMBに在籍している渡辺美優紀が平城高校に在学しているというのだ。それを知った途端、H高以外の選択肢は目に入らなかった。無事合格を果たしたが、入学前に芸能活動を優先できる大阪の私立高校に転入したと聞いた日にはショックで立ち直れなかったね。ちなみに母校は最近廃校が確定した。在学中はクソだなしか言ってなかった気がするけど、いざなくなるとなると少し寂しい気もする。

 最近よく考えるのがそろそろヘビースモーカーアイドルが出てきてもいいんじゃないかという。ヤニを吸っている女性が好みというのは度々申し上げてきたが、喫煙アイドルなんて現れたら唯一無二じゃないか。陰でコソコソ吸ってほしくない。表で堂々と「喫煙者ですけど、何か?」みたいな面して吸ってほしい。ふわふわしていてがな推しの収録中にMCのオードリーに振られても、まともに答えられず泣き出してしまう東村さんがそうなってくれることをひたすら祈る。

 ↑フラワーカンパニーズの件からここまでは酔っぱらいのチラ裏。チラ裏はいつもだけど。


 ベロベロになりながらお昼過ぎにホステルへ帰還。スタッフには昼間からどうしたらそんなになるんだ、と怪訝そうな顔をされる。すまない。


ワインが1/3ほど余ったので、そいつで煮込んだ。ほぼワインの味しかしなかった。キツい。オードリーのラジオを聞きながら今の今まで寝ていた。頭も痛いし筋肉痛もひどい。一人酒でこんなに楽しめるのは病気か才能か。

酔っぱらったあとのアイスがうまいのは自明だが、こいつに関しては例外だった。くそまずい。劣化版王将アイスみたいな味。25ペソで店のアイスコーナーで一番安かったが、安かろうまずかろうとはこのこと。他のは平気で200円近くする。インドとかでも思ったけど、意外にアイスってどこでも高い。相対的にアイスの値段だけで言うとぼちぼち日本は安い方だと思う。それで言うとコカ・コーラやらモンスターやらもどこでも値段は変わらないので物価が高い国で買う方が割安感がある。

ウルグアイ総括
四日しかいなかったのにこのザマ。完敗である。パラグアイ同様少ししかいなかったので何も言えることはないけど、とにかくコロニアは素敵だった。あそこは天国、また行きたい。

 上裸で外にいたせいで背中がヒリヒリする。南米の紫外線をなめていた。現在時刻は21時。ホステルの向かいには謎の音楽施設がありボヘミアンラプソディーのオーケストラバージョンが爆音で聞こえてくる。夜風に乗ってくる音色が耳に心地良い。宿の隣はカジノというカオスっぷり。ネパールで痛い目を見たのでもうカジノはごめんだ。明日はウマウアカへ移動。体力温存のつもりだったのにやたら消費してしまったので早めに寝て回復させたいと思います。

続く