一一二日目
9時頃に宿を出た。フェリーの出発は10時半の予定だ。バスもあるらしいが、船の方が早く着いて安くつくらしい。海で国境を超えるのは初めて。たった一時間ほどの航海ではあるが、テンションも少し上がる。ウルグアイにはもう少しいたい、特にここコロニアには。どっこい長居できるような物価じゃない。酒もタバコもろくにできやしないし、とっととトンズラこくのが吉と判断。残り四週間ほどをアルゼンチンとチリに割きたい。
出国審査と入国審査はともにウルグアイ側の乗り場で行われた。おそらく向こうから来る人はアルゼンチン側の乗り場で終えてやってくるのだろう。9時半頃にガバガバの手荷物検査とチェックインを終える。「Bording」の看板の前にはすでに数百メートルの大行列ができている。ここに一時間ほど並ぶ。ブエノスアイレス-コロニア間は日帰りでも人気の観光地、外国という感覚がここらの人には薄いのかもしれない。日本と韓国くらいの感覚じゃないかな。見た限りウルグアイ人あるいはアルゼンチン人とおぼしき白人がほとんど。自分以外のアジア系は見当たらない。まぁそれは良いのだけれど出発五分前になってもゲートが開かないので並ぶ場所がほんとに合っているのか不安になる。案の定、出発まで残り三分くらいのところで「コロニアエクスプレス~」と叫んでいる従業員らしき人がいたので駆け寄ると、あんた待ちでしたよみたいな感じでヘラヘラされる。この間を結ぶフェリー会社は自分が利用するコロニアニエクスプレスの他に二社ある。どうやら後者の別会社のゲートで無限に待機していたよう。失敬失敬。
フェリーは11時頃に出発。船は高速バスくらいのスピードを出して海上を走る。デッキ上には灰皿もあるし中々に快適だ。船内には空港のように免税店もあるが、全く安くない。ほんとに免税なのか?と疑うくらい。椅子に座って目を閉じて開けたら、もうアルゼンチンに着いていた。時刻は12時。入国審査はウルグアイで終えているのでこちらでスタンプを押捺してもらう必要はなく簡単な手荷物検査を終えて乗り場を出る。そこはもうビュンビュン車が走り回るブエノスアイレスの国道。海も見えないし情緒もクソもない。海は海でどうせ茶色い海なんだろうが。朝飯を食っていないので死ぬほど腹が減っている。スーパーで買い物かまして宿で昼飯でもつくろう。
スーパーでは値段をよく見ないで、タコ(500グラムくらい)と玉ねぎトマト×4ニンジンとビール(473ml)とチョコビスケットを購入。500円くらいでおさまるかと思ったら、800円近くした。ビールが150円くらい、ビスケットも100円もしない。野菜が全部でおそらく100円ちょい。タコそんなに高い?100グラム50円って見た気がするのだけど。見間違いなのか取りすぎなのかはたまたレジ打ちのミスなのかよくわからんけど、いやに高かった。クレカで払おうとすると身分証明書の提示を求められる、南米では初めてかも。パスポートで本人確認をするのにピンコードは入力しないで良いという詰めの甘さ。
宿には13時半頃にチェックイン。一日しか予約していなかったので延長を申請するが、よくわからん理由で断られる。だいぶ広めの宿だからいくらでも空き部屋はありそうだが、なんか感じ悪い。
切り替えて昼飯をクックしようとするのだが、キッチンが混み合っていて使えない。家庭科室の一区画ほどの大きさがあるキッチンだが、そこに7人くらい居座ってる。料理してへんやつも混ざってるし、いやせんのやったらどけよと。30分くらい待ってやっと空いて調理開始。するのだが、さっきの奴らがプレッシャーをかけてくる。俺の調理開始と同時に包丁捌きやら鍋の料理やらをめちゃめちゃチェックしてくる。いや料理人見習いちゃうぞ。ほんでなんでお前らは師匠よろしく俺の料理を見てくるんや。そんなに気になるけ?大したもんつくってへんしめちゃめちゃ恥ずかしいやん。そんな大きな重圧の中でも手早く調理を終え、タコとトマトのパスタEXブエノスアイレススペシャルを完成させた。料理スキルが着実に上がっている。とてもおいしい。写真も撮ったのだが、Googleフォトがお釈迦になって昨日の分だけクラウド上に残っていないのが残念。晩飯も同じものをつくった。夜は使おうとしたフライパンからニョキっとでかめのGが出てきた。そのままそのフライパンは使ったけど、これはここに長居してはならないというお告げだろう。ブエノスアイレスには二、三泊する予定だったが、今日だけで良いや。次行こう次。にしても南米ではよくGに出会う。ここ10日くらいで三匹目くらいだ。昨日のコロニアの宿の便所でも赤ちゃんGを見かけたし。ブラジルでもウルグアイでもアルゼンチンでもクリスマス商戦が早くも始まっているのに、そんな時期にGさんとこんにちはするのは南米人からすると普通かもしれないが、日本人としてはとても新鮮な感覚だ。
昼飯かまして観光。写真は全部消えた。クレカでほとんどどうにかなると思うけど、ちょびっとは現金も持っていた方が良いと思うので両替屋を探す。正規の銀行やら両替屋もあるが、それよりも道端に立っている非正規のおっさん両替の方がレートが良いと聞いた。USドルだと相当良いレート、公定レートより高く交換してくれるとこもあるとかないとか。街の中心部に行くと「カンビオカンビオ」と叫んでいるおっさんがそこら中にいる。カンビオって両替です。その一人に声をかけてみると1ドル34.5ペソで交換してくれると言うが、現在のレートは1ドル37ペソほど。あれ?聞いていたんとちゃうぞ。二人目に聞いても34.2。さっきよりもヘボいやん。どうやらアルゼンチン経済は持ち直してきたようで公定レートよりも良いレートで両替できるということはないよう。どのおっさんに聞いても34とか35くらいのレートと判断。銀行のレートは見ていないけど、まぁそれよりはましやろということでおっさんと交換することにする。二人目のおっさんに一人目は34.5だったけどな、って言ったら34.5で交換してくれることになった。
交渉が成立するとおっさんが俺についてこいと言う。連れて行かれた先は路地裏の雑居ビル。表は厳重にロックされている、なんか怖いな。受付には屈強な男。エレベーターに乗せられて上がった先はウシジマくんで見たことあるような事務所。あーこれほんとにグレーゾーンでやってるんやな。マフィアの資金源とかになっとんのかな、それは考えすぎか。あんま好ましいことではないんやろと思いながらももう遅い、逃げられない。逃げる逃げないというほど怖いもんではないが。というのも自分の前方にも交換に来てる観光客とおぼしき人がいるし、後方からも続々と新規さんがやって来るから。キリが良いので100ドルを3450ペソに交換。余していた40ウルグアイペソも交換しようとするのだが、提示されたのは半分以下のレート。ポン引きのおっさんはゲラゲラ笑いながら「ウルグアイペソはどこでもこんなもんやで」と。ウルグアイに行く人なんてあんまいないと思うけどいたら誰かにあげよう。
現金を手に入れたので早速経済を回す。小さな商店でヤニとビールを購入。ラッキーストライクが80ペソ、250円ほど。いけるやん!アルゼンチン銘柄のキルメスの黒ビール473ml缶が49ペソ、150円ほど。いけるやんいけるやん!味は黒糖ジュースとコーラ混ぜたみたいな甘さ。ビール飲めへん人もいけそうな味。酒とヤニが安いのはありがたいです。
一一三日目
10時半頃にチェックアウト。今朝オンラインで次の目的地コルドバ行きの切符を購入。3000円ちょっとで出発は22時。10時間ほど暇。

関係ない話。外国人に日本のどこに住んでんのか聞かれたら東京って答えるのだが、そのとき頭の中では「Tokyo」の文字が浮かぶ。英語はほとんどしゃべれないのに、ここだけは無駄にグローバライズされてる。それくらいしかここ数ヵ月で変化したものはないかも。外国人と話すときは適当に相槌しか打たないからそこが英語にしてもスペイン語にしても上達しない最たる理由だろう。わかんなくても「あー、なるほどねー」と普通に日本語で言ってしまう、もうダメだ。

ターミナルに行くまで欅坂46の曲をかけていた、イヤホンもつけずに。中学でドルオタになり高2の頃には脱却していたのだが、なぜか最近再び火がつき始めた。外国に行ってから自分の国が懐かしくなって、その行き着く先がアイドルということなのだろうか。これぞアンビバレント。昨日も夕方から夜中の三時まで無限にけやき坂46の動画を観ていた。秋元にこれ以上貢ぐのは心底ごめんなのだが、逃れられぬ運命なのかもしれない。推しは同郷奈良県出身の東村さんとポンコツの井口さん。帰ったら7年ぶりに握手会にでも行きたいものだ。
バスターミナルには19時半頃到着。100を越えるバス会社が群雄割拠している。自分のバス会社の窓口を発見するのは容易だったが、プラットフォームがどこにあるのかわからない。チケットを見ても「10a25」と書いている。窓口の兄ちゃんに聞いても「10a25やから~」みたいな感じで嘲笑される。10に25通りもあるはずはないからおそらく10~25までの乗り場のどっかですよ、ってことなんやろ。ガバい。アナウンスは随時流れているが、スペイン語なので一ミリもわからない。とにかくアンテナ張って10~25の間をうろうろする外ない。
にしても花粉がヤバい。目と鼻、あとは口が痒すぎる。鼻なんかはもぎたくなるくらい痒い。見取り図の漫才のつかみで「こんなベイブ連れてきてすいませんね」というのがあるが、ボケの人そんなに鼻上向いてへんで、俺の方が上向いとる。花粉症で鼻掻きむしって余計鼻が上を向きそう。そんなわけで見取り図の漫才はつかみの時点で侮辱されているようで笑えない。自意識過剰か。
ターミナルにはWi-Fiがありますと、例のごとくクソの役にも立たないブログで書かれていたが一ミリも飛んでいない。少なくともRetiroターミナルでは。イライラしながら何か面白いことなかったかを思い出す。そういえば、パラグアイのアスンシオンで泊まったホステルのオーナーのジョークが面白かった。韓国人と自分が話しているところにちょっかいをかけてきて「俺たちはみんなフレンドだ。誰でもこのホステルは歓迎だぜ。ただしノースコリアだけはお断りだけどな」というやつ。パラグアイだけど、なんというか自分の頭の中にあったステレオタイプな「アメリカンジョーク」という感じで時間差でゲラゲラ笑った記憶がある。
面白い話とは別だが、立ちくらみが大好きだ。元々貧血気味の低体温低血圧なのだが、一分もしゃがんで立ち上がるとクラクラになり、立っているのも息をするのも困難な状態に陥る。脳ミソの全血管がきゅうっと収縮したあとにブワッと血が吹き出す感じ。その瞬間脳内が真っ白になって、ここは天国なのかという状態に入る。この一時的な人生からのログアウト後に、ちゃんとした映像が目の前に広がり再ログインが徐々に始まると生きているなぁという実感が湧く。酔っているとそれが顕著なので座ったり立ったりするのを繰り返すだけで暇潰しになる。野球やってたときにキャッチャーやってたら、大変だったなと今更ながら思う。肩も弱いしキャプテンシーもないからそれはないと思うけど。
イヤホンがお釈迦になった。三本持参したが、二本紛失。最後の一本は巻き取り式だったのだが、締まりが悪いのでイヤホンを左右から引っ張っていたらちぎれた。100均で購入したどうでも良いやつだし、Amazonミュージックもセールのときに契約して今月にはその契約も切れるのでそれほど痛くないのはないのだが、マスかくときだけはちょっとないと厳しいなというのはある。やはり声があった方が良い。
プラットフォームを22時までうろうろしていた。出発3分前くらいにバスがようやくスタンバイ完了。乗り込んですぐに出発。コルドバにはたった今、6時半頃着いた。車内では無限に寝ていたが、起きた瞬間鼻と目が痒すぎて起きたことを後悔するレベル。辛すぎるわこれ。
続く









