一〇一日目


 2時頃に就寝、7時頃にルームメイトのゴリラのごときいびきで起床。部屋もなぜか動物園みたいな臭いがする。同じ部屋には無限に寝ているハゲ散らかしたおっさんがいる、彼はなんなんだろう。たまぁにそういう人がいるけど、どういうつもりなんだ。周りが20代やらの若者ばかりでも虚しくならず、気にせずのさばれる強心臓には軽い憧れすら抱く。パワプロで無限に右端の精神練習コマンド選択してるようなもんか、監督評価とスカウト評価だけ爆上がりしそう。


 朝飯をかましてだらだらしながら10時半過ぎに外へ出る。リオにはその名前にだけ惹かれて来た。ビーチは世界的にも有名で先日出会ったドイツ人にもすすめられたが、そんなブルジョアな遊びは貧乏大学生には似合わないしあまり興味もない。かの有名な両手を広げたキリスト像のあるコルコバードの丘だけは抑えておきたい。明日は一日ホステルでだらだらと休養日にするのも乙なものだ。にしてもリオの街はやっぱり昼間歩く分にも怖い。他の南米の街とは全く異なる雰囲気で鬱屈としている。ファベーラと呼ばれるスラムが多くあり、オリンピックが二年前に開かれたところとはまるで思えない。昔魔女宅でお馴染みの角野栄子著『ナーダという名の少女』というリオかサンパウロのファベーラが舞台の小説を読んだが、現実には似ても似つかない絵本のように穏やかで美しい話だった。現実は小説よりも奇なりとは言うけれど、あれは嘘だとはっきりわかる。あんな街ではない。


 リオでは銃撃戦マップなるものもアプリでリリースされている。


これで銃撃戦情報は丸わかり。パワプロの容量が重くてダウンロードできないのが悔しい。

最新の乱射戦情報をリアルタイムで確認できるので、安心だ..いやグラセフかよ、思わず笑ってしまった。俄然外に出るのが億劫になる。次に行くのがブラジル最大の都市、サンパウロ。ここを抜けたらまぁリオとあわせてヤバい地域は多分ない。リオの物価はやっぱり東京よりやや安くらいだけど、クレカが使えるのが強い。サンパウロは日本人街あり、すき家ありの街。チーズ牛丼がとても楽しみだ。ちなみに、サンパウロはドイツ人になんもあれへんから行く意味ないでと言われたが、すき家があるじゃないか!


11時過ぎに昼飯。ブラジルに入って五日目だが、初めてちゃんとした店で食べた。500円くらいだから、やっぱり自炊が財布に優しいと思う。晩飯は自分でつくろう。味はいまいち、鶏肉がパサパサ。うんこみたいなのが塩で煮たお豆さん。付け合わせの豆って南米では多いけど、なんで東洋では廃れた文化なんだろう。豆なんて居酒屋かお正月くらいにしか食わへんし。期待通りにまずいとやっぱりまずい!となり、予想に反するうまさならやるじゃねぇかとなり、予想通りうまいならおうあっぱれ!となる。大誤算のまずさでなければ大体許せるから人よりも食うことが好きなのかも。幸いなことにこの旅行で腹は壊してないし。気づいていなかもだけど。インドの牛肉は当てたのかもしれない。

どこがソイソースやねん。タバスコから辛味を抜いたみたいな味。店員さんは中国人か日本人のような見た目だけど、ポルトガル語オンリー。ブラジルは他の南米よりも日系人がウヨウヨいる。

 12時前に駅に着くと、すぐにコルコバードの丘行きのロープウェイに乗ることができた。登山も可能らしいが、二時間半ほどスラムを通ることになることでびびってショートカット。65レアル、約2000円。ひえーな料金。車内は進行方向に対して右側が後ろ向きの座席、左側が前の謎使用、なんでやろ。

このキリスト様が

リオを見下ろす

こんなとこにもサムスン、強い!

 平日にもかかわらずしかもオンシーズンではないにもかかわらず、何百人も観光客がいた。リオのカーニバルは二月だか三月だか、時期も時期だから街中には観光客はあんまりいない。ここに一挙に集結している感じがする。

街中の公園にあった謎のトレーニングマシーン、なんやねんこれ。ブラジルの女性はほんとにお尻が大きい。他の南米諸国と比べても圧倒的に、しかもだらしなくなくてキュッと締まっている。生活に余裕が出てくると、次は美とか健康にお金をかけるから体型とかも気にし始めるのか。他のとこだとタンクみたいな人が多かった気がするけど、ブラジルは少ない気がする。

 部屋に戻ってだらだらしていたら、ルームメイト同士の喧嘩が始まった。ポルトガル語か何語かわからんけど、今にも取っ組み合いが始まりそうでとっても怖い。しばらくすると二人して出ていったので、その隙にマスをかいた。



帰りしなに買ったトマトピーマン玉ねぎカップヌードル、牛肉260グラム。200グラムちょうだいって言ってるのに、二キロくらい買わされそうになった。BBQよろしくシュラスコをフレンドとやるような陽キャにでも見えたのだろうか?どう見ても陰気臭い東洋人なのに。量りも杜撰で結局300グラム近く購入させられた。お茶目なおっちゃんだ。南米の量り売りにも慣れてきた。

焼きカップヌードルEXブラジリアンスペシャル。カップヌードルが150円くらい、100円くらいのコーラも買って合計500円。蛇足も蛇足。牛肉が100グラム60円くらいなのに。

あり得ないほど固くて、1/6くらいは筋だった。多分煮込み料理に使うやつだ、これ。気をつけて買わないと分厚くて火が通らない。中身は真っ赤だけど、まぁ大丈夫。カップヌードルはやめよう、高い。多分パスタかパンを買うのがベスト。あとはお野菜と肉を煮込めば一食200円程度で済む。キッチンはあるけど、調味料やら油やらないぞこの宿。どうしようか、明日は。


 部屋に戻ると充電器を勝手に使用されていた。おそらくさっきの喧嘩は充電器を壊したの壊してないののバトルだったのだろう。仲良くしようぜ!このルームメイト理由は不明だがしきりに外を気にする。部屋にいても、喫煙所にいても何かに怯えるように窓の外を見つめる。部屋には出たり入ったり、おいおい勘弁してくれ、ここで銃撃戦なんて起こさないでくれよマジで。レイプも勘弁だ、ここはひとつ冷静になりましょうや。


 7月に日本を出てからあっちゅうまに11月。無事に旅行が進めば来月には日本に帰る。ほんとに光陰矢のごとしとはよくいったもので、あっちゅうま。びっくりするくらい早い。その間に、得たものと言えばニキビくらいだというのが非常に悲しい。残り期間でこいつを治して多少なりとも外国語のスキルと外国人に勝るとも劣らぬ図々しさを身につけて帰国したいと思っています。


 帰国するまで髭を剃らないと決めていたが、小学六年男児の陰毛並みにしか伸びないのでしびれを切らし剃ってみた。アクネ菌の温床かもしれない。これでニキビも治り、髭も抵抗でにょきにょきと生えてきたら一石二鳥だ。


 そしてついさっき高校から愛用していたパナソニックの鼻毛カッターを紛失した。歯ブラシはあるのでどこかに歩いていったかあるいは..洗面所に置いていたのだが、気づいたら消えていた。2000円もしない代物だし錆び錆びでほとんど機能しなくなっていたが、最後に鼻毛を処理させてくれてありがとな。


続く