四五日目
前日の体温の推移は以下の通り。三途の河が見えた。昨夜のBGMは銀杏boyzの『漂流教室』。ほんとにくたばるのではないか。
16時:39.0度、39.4度
17時:39.8度
19時:39.2度
20時半:38.5度
22時:38.0度
23時:37.9度
24時:38.7度
4時頃に目覚め再度測定すると39.4度。寝付きも非常に悪い。朝8時頃再び測定。相変わらず39.4度。昨夜調べたところ持参していたカードの付帯保険がを適用し病院で診療できるとのこと。ただインドは診察料が安いので1000ルピー(1700円くらい?)もあれば治療を受けられるとの情報も。8時半頃、怠い体を起こしてゲストハウスの隣にある病院へ向かう。体は自分でもわかるくらい汗くさいが、そんなことは気にしていられない。
受付に行くと予約してないなら診察は受けられないとかなんとか言われる。ここで予約はできないのかと聞くも、何を言っているか全然聞き取れない。元々スピーディーな英語を聞き取る能力など皆無なのに体調不良とのコンボで何1つ理解できない。
仕方がないので1.5キロほど離れた政府系の病院へ向かう。普段ならこの距離を20分以内で歩ききれると思うが、牛歩も牛歩。全く進まない。40分くらいかかった。
受付に行くと「インド人しか診察は受けられない」とのこと。途方に暮れ、泣きそうになりながらゲストハウスに帰る。すでにふらふらの状態で3キロ以上歩いて意識は朦朧としている。
ゲストハウスに戻りスタッフのお姉さんに泣きつく。「病院2つも回ったのにたらい回しにされたよぉ😭どうやったら予約できるんだろう😭僕もう死んじゃうよ😭」。見かねたお姉さんが隣の病院の予約をしてくれた。すぐに診察を受けられるとのこと。ほんとうにありがとう..
10時頃再び病院へ。インド人の大半が多分そうなのだが、まず行動がとろい。そしてインド人を優先する。そして手続きが煩雑。
問診票を書いて渡してカルテができるまでに30分。そのあと体温を測られベッドに座らせられたまま謎に流れる時間およそ30分(この間カーテンを隔ててペチャクチャ医者はしゃべっている)。体温を測定するだけで30分かかった。
11時頃血液検査のため血を抜かれる、そのあとお尻に解熱剤を注射される。その支払いのため隣接されている薬局に行かねばならない。三人薬剤師がいたのだが、とろとろとろとろ動いている。払い込みが済むまでに30分。1時間半を経過して、まだ診察1つ受けていない。あとから来たインド人が続々と診察室に入っていく。どういうこっちゃ。しびれを切らして部屋に入ろうとすると助手みたいなやつに「順番が来たら呼ぶから」と。
それで一時間待っても呼ばれない。待合室には誰もいなくなった。なんだこいつら。余計に体調が悪くなりそうだ。12時半頃、助手みたいなやつが部屋から出てきたので「早よ、診ておくれ」と声をかける。向こうから呼ぶと言っていたのに、こちらから声をかけてやっと診察室に潜入。またベッドに座らされ体温を測られる。少しだけ熱は下がった模様。血圧は間違いなく上がっているはずだが。
カーテンを仕切って、髭の医者が看護師どもとへらへら会話している。やっと出てきたかと思うと「あと5分10分待ってね」とのこと。それから30分経過..。日が暮れるのではないかとイライラしていると髭がやっと出てきた。
「血液検査の結果、感染症とかではなかったですね。夏風邪ですね。3~10日は症状が続くので安静にしておいてね。今から処方箋書くから」
風邪の診断にどんだけ時間かかんねん!で、処方箋を書くのに再び約20分。適当な紙に3行ほど処方された薬が書かれている。
それを薬局に持って行き薬をもらうのだが、まあとろい。目の前に袋に入れられた薬があるのに、この状態で10分待たされる

結局、全て終了したのが14時頃。およそ四時間もかかった。逆に体調が悪くなった気がしなくもない。というか精神衛生上は確実に悪化した。
部屋に戻り再度体温を測定。38.0度まで引いている。処方された薬をかまし横になる。17時半頃までうとうとしていた。例のごとく体温を測ると、36.6度まで下がっている。この頃は有能だと思っていました。インド人を。
動くのが辛いほどではなくなったので外に出てみる。近くにドミノ・ピザがあったので。

しょぼめの不衛生な店で腹壊したくないという感情から。特に今は免疫が落ちているので。260ルピー。大きさとしてはゴールデンスナックというパンがあると思うのだけれど、それ2枚分くらい。もともとそこまで食べる方ではないが、出国時には多分ペロリと食べられていた量だと思う。しかし、半分くらい食べた時点でお腹一杯になった。無理やり食わなきゃ治らんぞと言い聞かせ完食。結局この日は朝にアイスをかましたのと、このピザのみだ。ほんとに食欲が落ちている。
部屋に戻り体温測定。35.8度まで下がっている。上の血圧が100いかないレベルのやや低血圧なのも関係しているのか、平熱は36度を割る。要するに元に戻った。有能かよ髭。
四六日目
深夜1時頃、寝ていると嫌な気配を感じる。恐る恐る目を開くと、暗闇の中で俺のベッドを見つめている男がいた。この男は同じ部屋のおっさんだ(インド人)。だが、明らかに様子がおかしい。そもそも何で俺のベッドの前に立っているのか、そしてなんか暗闇の中でもわかるのだが虚ろな感じがする。
変だなあと思いながら細心の注意を払い見ていると、チョロチョロ音が響き始めた。驚くべきことにこの親父、俺のベッドの前でションベンをぶっかけ始めたのだ。俺が何をしたって言うんだ..
小便をかましたあと、なぜかトイレへ向かった。どういうことやねん。トイレに入ったのを見計らい、ベッドの下を除くとビショビショ。crocsが甚大な被害を受けていたが、洗えるからまだ良い。バックパックにやられなかったことが不幸中の幸いだ。
怒りより、驚きが先行した。だってわけがわからない。どういうことなんだ。夕方には「俺はグッドガイだから困ったことがあれば何でも言ってくれ」なんて調子の良いことをぬかしていたが、自分のことを良いやつだと紹介してきた時点でヤバい奴だと見抜くべきだった。
トイレから出てくると窓の外を眺めカーテンを開けたり閉めたり。椅子の位置を動かしたり。そして再びトイレのドアを開けたり閉めたり、窓の外を見てカーテンを開けたり閉めたり、椅子の位置を動かしたりというルーティーンを繰り返し部屋のなかをうろうろ。たまに俺のベッドの前に立つというのが間に挟まれる。酔っているのか、病気なのか、何か変なもんでもやっているのかわからないが、高熱と恐怖と悪寒で震えが止まらなかった。とりあえず正気ではないことはわかる。おっさんの気が済む深夜2時までこのルーチンは10回ほど続けられた。これが終わると部屋の外へ出ていった。数分後、ゲストハウスのスタッフを連れてきて何やら文句をブーブー垂れている。何のクレームかは不明。スタッフは呆れているようで軽く受け流していた。おっさんの呂律は回っていない。
しばらくして症状が落ち着いたのか、じじいはベッドに戻った。何なんだほんとに。殺されなかっただけ良かった。絶対に話さないようにしよう。目も合わせないようにしよう。

また上がっている。どうしたものか。あれだけ診察に時間がかかったのにヤブ医者なのか。それとも昨夜のじじいの脅威で悪化したのか。
完治までに3~10日かかると言われたが、処方されたのは三日分の薬のみ。昨日の時点では12日の夜行バスでムンバイに行けるかもと、ぼんやり考えていたがどうやらこの調子では無理そうだ。というか頭を過るのは一時帰国の四文字だ。
この熱が一向に引かない分にはここを動けないが、インドでくたばりたくはない。母には早く帰ってきなさいとお怒りの連絡をいただいている。しかし、今帰ってしまうと二度と海外には行かない気がする。今回の旅行でわかったのは根本的に海外があまり好きではないということだ。もちろん好きな部分もあるが、よっぽど日本にいる方が楽だ、生まれた国だから当たり前だけれど。そもそもの目的は寅さんになるための修行だから楽しくなくても良いのだがこの体調不良とインドというクソな環境から一刻も早く抜け出さなければ未来に光は射さない。
お医者にも同じ部屋のインド人にも恐怖を植え付けられるし、いい加減にしていただきたい。ほんとにほんとにほんとにインドが嫌いだ。なんなんだこの国は。
薬を飲んで9時頃再度測定すると36.9度まで下がっている。結局付け焼き刃というか一時的な対処にしかなっていないのかこれは。
睡眠中もりもり汗をかくようにしていたが、これはどうやら間違った知識だったらしい。発汗した汗が蒸発せず身体を冷やし逆効果になるという。ある程度熱が引いた時点で寒くならない程度にしておけば、汗をかくくらいに布団はかぶらなくて良いとのこと。あと夏風邪にはバナナが効くという。
二日間同じ服を着てもりもり汗をかき、同じく二日間風呂に入っていなかったので洗濯とシャワーを手早く済ませた。7時半頃に活動を開始し現在15時過ぎだが、この8時間に成したこととといえばただそれだけだ。変に動いて体調が悪化してしまうのも嫌だから外出することに億劫になってしまう。かと言って食わずにいるのもまずい。どっこい、昨夜19時に晩飯を食って以来何も口にしていないが腹はあまり減っていない。免疫低下の著しい要因の一つだ。サクッと飯を食ってバナナとコーラを手に入れるために外へ出てみよう。今から。小便爺はなおも夢の中。
続く



