非常に分かりにくくなった使い分けの変更です。
以前は、「復原」の項に「(理学)」と記載があり、用例は「船舶・航空機の復原力」とあって、これだけではいまいち何か分からないのですが、辞書を見ると、「復原(元)力」の項に「伸び縮みするばねなどの弾性変形を、もとの状態に戻すように働く力」「傾いた航空機や船舶を、正常の位置に戻すように働く力」(デジタル大辞泉)とありまして、まさにこれが用字用例辞典における「復原」であろうということで、通常は「復元」を用いるのだろうと理解していました。
それがこのたびの改訂でどうなったかといいますと、「復元」は、「失われてしまったものを元の姿に戻すよう新たにつくること」で用例は「古代住居を復元する」「復元図」、そして「復原」は、前用いていた「復原力」の場合にプラスして、「改造、変化している現状を元の姿に戻すこと」で用例は「東京駅の復原工事」というものが新たに含まれるようになっていました。
つまり、「元の姿に戻す」という意味のときの使い分けが必要になってしまったのです。ええーー。
「失われたものを新たにつくる」と「現状あるものを元の姿に戻す」という明らかな違いがありますけれども、それを実際「フクゲン」という言葉が出てきたときに思い出せるか、そして仮に思い出したとしても、どちらが「元」でどちらが「原」なのかまできちんと認識できる自信はありません。毎回用字用例辞典を開いて確認するしかないということです。
そこで何かヒントになりやしないかと文化庁の「言葉に関する問答集」を開いてみましたら、ありがたいことに項目として載っていました。引用してみます。
「「元」は、もと、人間のまるい頭を描いた象形文字で、転じて「はじめ」とか「もと」の意味を表す。「原」は、もと、岩の穴から水のわき出る泉の意で、転じて「物事のもと、起源」の意を表す」。それに「復」(もとにもどす)を加えた「フクゲン」は、「復元」と書いても「復原」と書いても、その表す意味に相違はないと考えられる」。
……………………全くヒントになりませんでした。
ヒントにならないどころかむしろ、この引用文の後には、学術用語の「フクゲンリョク」の場合のみ「復原」を用いるという、用字用例辞典の前のルールと同じ使い分けが新聞や放送界では用いられており、これが一般的であろうという旨が記載されています。
何で使い分けることにしたのかと、担当者を小一時間問い詰めたいです。