昨日駆け込みで、東博の、
『前田育徳会創立百周年記念・特別展「百万石!加賀前田家」』
に行ってまいりました。ぽんぽんが大学でチケットをもらっていたので、なんと無料でした。最近は美術館も値上がりしてますから、ありがたかったです。博物館、美術館は今後ますます厳しくなっていくのでしょうかね。
母の出身が富山県なので、加賀藩はなんとなく身近に感じます。
私は父方が東京なので(でも曽祖父はやっぱり富山出身です)、私の七五三の着物を、江戸友禅「風」にするか加賀友禅「風」にするかで、父方の祖母と母が若干揉めた、という話を、母から聞いたことがありました。
本物の友禅ではありません。「風」です。
もちろん母は揉めることがめんどくさい人ですから、私の着物は、祖母が推したはっきりとした水色の江戸風の着物になりました。化繊の着物だと思いますが、それを眺めるのはとても好きでした。あれ、あの着物どこ行ったんだ?
母は、気持ちいいくらいこだわりのない人ですが、でもこの加賀「風」というのには若干のこだわりがあったようです。
江戸友禅の華やかな色合いより、曇天に似合う加賀友禅の燻んだ色。
ぽってりした土物より、九谷焼の透き通った深い翠。
小唄や都々逸より、能や謡。
遠慮のない物言いをよしとする江戸言葉より、少し含みを残した富山の言葉。
父との結婚で東京に住み、江戸っ子である新たな親類たちに囲まれて、「江戸っ子ではない」よそ者の立ち位置であった母からは、そういう加賀「風」の良さというものに対する矜持が、時々見え隠れしていたように思います。
そして、その感覚は私にも受け継がれていて、江戸っぽい粋なものに対する憧れと気後れ、そして、富山や金沢の文化圏に対するまた別の意味での憧れと、でもそこは私の「故郷」ではない感じと……何だよ、私は二重苦じゃないのさ笑
今回の展覧会で並んだのは加賀藩が作ったものではなく、収集したものですが、やっぱり加賀藩は文化に対するセンスがいいよねーなんて思って眺めておりました(何を生意気な)。
まず最初に、展示一押しの、前田利家の黄金の鎧兜を見て、
「あれ、ダサくない……」
と思うところから始まり(金の鎧兜なんてダサいだろうと思い込んでいた)、その横の陣羽織の美しさに、まじか、と思いました。前が菊、背が鍾馗の刺繍なんですが、とても繊細で優美な感じなんですよね。なんか戦国時代の陣羽織って、なんでもありな婆娑羅風で、
「これ、かっこいいのか?」
っていつも思ってたので、これは目から鱗でした。
そして今回は、甲冑や刀剣や名物茶器に並んで、たくさんの画や書も展示されており、その中で一番ほっこりさせてもらったのが、黙庵霊淵の『四睡図』でした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/四睡図#/media/ファイル:四睡図_黙庵霊淵.jpg
Wikiによると、
四睡図(しすいず)は、豊干、寒山及び拾得が虎と共に睡る姿が描かれた禅画、道釈画の画題である 。禅の真理、妙理、境地を示すとされる。
だそうです。
ねむねむの虎がとっても可愛いです。
そして、加賀藩出身の矜持を、多分本人も無自覚に胸に秘めてきた母ですが、2月の転倒骨折から入院、手術、リハビリ病院に転院、という過程を経て、6月末からは介護付き老人ホームへ入居、という選択をすることになりそうです。
もちろん母ではなく、私の選択です。
これがねえ、辛いところでねえ。
でももう母には現実的な判断はできないので、ここ一ヶ月、みんなにとって一番いいことが起こるように、と聖霊に聞き続けた結果として、娘として私が、そういう選択をしようと決めました。母を老人ホームに入れてしまえば、もちろん一番楽なのは私です。
罪悪感がないと言えば嘘になるし、かといって母を背負う覚悟もなく、露悪的に言えば「逃避的妥協」であることは間違いありません。でも、それはこの事態の見方の一側面であって、そのように言葉で自分を縛ることもないかなと思っています。
母に、
「お前に自由な時間を作ってあげられてよかった」
って言ってもらえるように、有意義に、でも気負わずに、過ごせるといいなと思っています。
母の老いと、自分の老いと、そして老人ホームの入居費と。
現実は淡々と積み上がっていきます。
虎と一緒にお昼寝できる境地に辿り着くのは、なかなか難儀なことです。
でも、
そこに行くのは私の力ではない。
そこに行きたいという思いが、私をそこに連れて行ってくれる
ということを覚えておこうと思います。
それはとてもありがたい希望です。
いいよね、大きな猫とお昼寝……(リアルに妄想)
