檸檬とオリーブ 

檸檬とオリーブ 

アラカンの備忘録

土曜日は第256回朝日名人会に出かけた。

 

お目当ては三遊亭白鳥師匠と五街道雲助師匠。二人のトリである。

 

まずは白いトリ、白鳥師匠は「富Q」という古典落語「富久」を下敷きにしたオリジナル新作落語である。

朝日名人会というと、古典落語が中心で重鎮ばかりが出演するというイメージが強いが、白鳥師匠が

仲入り前に出演すると、場の雰囲気が引き締まった(感じが)した。

いつもの空気感が違うのである。

 

ここでは池袋の安アパートに住む真打ちながら全く寄席からはお声がかからず、貧乏暮らしをしている

金銀亭Q蔵という売れない落語家が思いがけず、富くじ(宝くじ)を買ったところ・・・という話が

展開する。

 

この落語家は人情噺が得意で、落語ってえのは笑いが全てではねえ、とか肩で風きっているような噺家なのだが、実際は真打ち昇進時に揃えた黒紋付の羽織を売ろうかどうかを真剣に悩んでしまうほど困窮していた。

 

この落語家の名前って、金原亭一門を何か思わせるネーミングでは?

確かにこの一門は正統派の優等生が多いから、きっと白いとりさんに白羽の矢を当てられてしまったのだろうか。

なお、毎月行く二つ目さんの会はこの一門の会なのである(思いはフクザツ)。

 

仲入り後、入船亭扇辰師匠の後、いよいよ人間国宝、五街道雲助師匠の登場。

 

「鰍沢」をたっぷり(40分くらい?)熱演された。

 

日蓮宗の本山、身延山久遠寺にお参りに出かけた江戸の商人が、帰り道に大雪に遭い、鰍沢近くで道に

迷ってしまい、南無妙法蓮華経とお題目を唱えながら、進むとあかりの灯る一軒家を見つけた。

 

そこで一晩泊めてもらおうと頼もうと声をかけ、家から出てきた女を見ると、どこかで見たような美しい顔立ちをしていた。

そうだ、吉原の遊女だったお熊だ。

 

あまり気乗りはしないが、仕方がないので一夜の宿として商人を家に入れるものの、自分の過去(足抜けして逃げてきたこと)を知られて気まずい雰囲気になってきた。

そこで、商人は命の恩人だからとお礼に持っていた財布から銭を渡す。

 

それを凝視しながら、お熊は卵酒を商人にすすめ、一口つけただけで酒がまわった男は奥座敷で寝てしまった。

 

そこへ亭主の猟師が帰ってきて、残りの卵酒を飲んで気分が悪くなってしまう。

それもそのはず、妻が毒を入れていたからだ(夫はその後毒が回って死んでしまうのだろう)。

 

つまり、商人を殺して金を奪う算段だったというわけ。

酔いのすっかりさめた商人はそろりと裏口から出ようとするが、こちらも毒が回ってきて動けない。

そこで、久遠寺でもらった御符を口に入れると、スーッと身体が動くようになった。

 

しかし、逃げるところをお熊に見つかってしまった。

吹雪の中でお題目を唱えながら必死で逃げる男と鬼の形相で執拗に追う女の修羅場は、恐ろしかった。

 

過って谷底に落ちた男めがけて女が猟銃を放ったまさにそのとき・・・。

 

 手に汗握るとは、このことだろう。

あと、師匠の語りの恐ろしいこと、恐ろしいこと。

夏に怪談話とともに涼を求めて演じられるそうだが、真冬に聞く、鰍沢の恐ろしいこと。

一気に北極に行ってしまった。

それにこのスリルとサスペンスある話の展開が凄まじい。

 

三遊亭圓朝作の三題噺の一つとして有名だが(三題噺とは三つのお題から話を即興で創ること

から発している)、当時の人たちにとってもこのストーリーは想像を絶していたに違いない。

 

それにしても最後のトリは人間国宝。

それがよーく分かった名人会だった。