週末の日曜日。久しぶりに10人以上の来客がありました。主人フレディの友達たちで全員男性、近所に住む幼馴染ばかりです。

  今でも続いているマサイの伝統の中に、エイジグループというものがあります。人生の青年期、長老期といった各段階ごとにグループがあり、地域でのこのグループ内のメンバーのつながりが強いのです。フレディ達は長老の一歩手前の中年期?グループに属しています。

  今年から、この中年期グループに属する特に仲の良い10数名で毎月1度のミーティングをすることになったそうで、毎月違うメンバーの自宅で集まるということ、今月はうちの番です。このミーティングは、各メンバーから毎月お金を集めて貯金をし、不測の事態で急にお金が必要になったメンバー(例えば急なお葬式や病気など)がここからお金を使えるという、いわば銀行のような役割を目的としているそうです。このシステムはアフリカでは一般的で、私がケニアに住んでいた時も、勤めていたホテルのスタッフ達がこのようなグループをつくって毎月お金を出し合っていました。

  10人もの来客ということで、準備もそれなりに大変です。当日のメニューは、マカンデと呼ばれるトウモロコシと豆を茹でたもの、そしてメインはヤギのバーべキュー。朝から近所の若いマサイの青年が呼ばれ、ヤギの解体作業にとりかかります。うちの7歳の息子と11歳の甥っ子も駆り出されヤギの手伝い。メ~メ~と切ないヤギの鳴き声が外から聞こえてきます。マカンデも、この青年が外で木炭を使って大きな鍋で茹でてくれました。私はキッチンで、サイドディッシュのサラダやフライドポテト、そして揚げバナナを作りました。

  午後3時頃から客がやってきました。娘たちが窓から外を見て「ね~みんなお腹出てる~!」そう、全員立派なビール腹。ジムに行っている人なんていません。こちらでは立派な体格=お金持ちなんです。

  庭にテーブルとイスを並べて、青空バーべキュー。全員マサイ、肉大好き。骨までしゃぶってます。娘たちからまた「フライドポテトがもうなくなったよ~!」とレポートがありました。息子と甥っ子は皿や食べ物を運んで大忙し。大量にできたマカンデはみんなあまり興味がないようで、サラダとポテト、揚げバナナがあっという間になくなりました。もちろんお酒なしの会合なんてあるわけありません。用意していたコニャギというタンザニアの蒸留酒が、どんどん空いていきました。

  その後、ラップトップを持ち出してなにやら真面目なミーティングが始まりました。今月分のお金の回収のようです。日も暮れだした頃、フレディが「家族みんな外に来て挨拶して」と言うのでみんなで挨拶に行きました。メンバーのひとりピーターが「ママサヤリ、今日は我々を招いてくれてありがとう。この会は毎月1回やっていて、お金を集め合って銀行のようなシステムをつくっているんですよ。それからメンバーお互いの家族を知ることも大事です。アフリカでは子供たちの世話は、コミュニティーみんなの責任です。ママサヤリの家族を紹介して下さい」と言いました。そこで子供たちがそれぞれ自己紹介をしました。ピーターは子供たちに向かって「ここにいる僕たちはババサヤリ(サヤリのお父さんという呼び方=フレディのこと)の親友です。もしババサヤリがいない時に何か困ったことがあれば僕たちがババサヤリの代わりになるので、僕たちのことをよく覚えておいてね。」私はそこでみんなに「女性たちの会っていうのはあるんですか?私、外国人だから何でも平等にしたくなっちゃうんですけど」と言ってみました。男性陣から笑いがおこり、そのうちの一人から「今のところ12月くらいに、家族みんなで集まろうという企画があるので、実現するといいですね」とのこと。女性たちの会は、私が始めるしかないか・・。

  その後、日が暮れて暗くなってからも街灯をつけて彼らは外でミーティングを続けていました。そのうちだんだんと彼らの声が大きくなり、ミーティングというよりは宴に?・・。夜8時頃になると、また娘たちからレポートが入りました。「ねえ、踊ってるよー!」やっぱりね、私の予想通り。絶対踊り始めると思ってた。楽しそうです。

ところが宴もたけなわ、夜9時近くになって、なんと停電。なんて運が悪いんだろう。それでも携帯の明かりをつけて負けずに宴は続いていましたが、やはり限界がきたのか、みんな車何台かに分乗して会場を後にしたのでした。ババサヤリも彼らと一緒に車で出発。そっか、場所を変えて2次会ね。

  タンザニアの相互援助のカルチャーは素晴らしいと思うのだけど、このミーティング、毎月のホスト側の費用、そして2次会でそれぞれが出費する酒代を考えると果たして意味があるのか・・・私にはちょっと疑問が残りました。

  いやいや、そんなつまらないことよりも、定期的に気の知れた仲間たちと楽しい時間が過ごせることに乾杯!それがタンザニアなんだろうな。