以下、槇原敬之コンサートツアー2017“Believer”についての感想を記載しています。
 
曲目・曲順などにも触れていますので、これから見に行く方、見るまで内容を知りたくない方は閲覧にご注意ください。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
今日は、ツアー6日目。
 
長野はホクト文化ホールだ。
 
さて、初日の振り返りを続けよう。
 
5曲目。
 
「運命の人」
 
今回のツアーで一番、楽しみに待っていた曲。
 
僕は、今、誰かに片想いをしているワケではないけれど、たちまち、その歌の世界の主人公になれる。
 
その主人公に完全に感情移入して、悲劇のヒーローになれる。
 
槇原楽曲が90年代にもっていた魔法が、21世紀の今、再び、炸裂している。
 
そんな楽曲だ、「運命の人」は。
 
そうした感情移入させてくれる魔法の秘密は、モチロン、まずは歌詞、そしてメロディーなんだろうけど、僕は、最大は、歌い回しにあると思っている。
 
いや、歌い回しというと、アレンジのように聞こえてしまうが、それ以前の段階の“譜割り”というか“歌詞割り”の妙だ。
 
とにかく、僕が、この曲の愛している部分は
 
〝気持ち痛いほどわかる〟
 
の所と
 
〝いきなり嫌いになれるはずもなく〟
 
の所と
 
〝こういう時どう思うの?〟
 
の所と
 
〝君の恋が上手く行けば〟
 
の部分である。
 
お分かり頂けるだろうか、これらの箇所の共通点。
 
“キリ”である。
 
文面で伝えるのは、なかなか難しいが、例えば、最初の、
 
〝気持ち痛いほど分かる     〟
 
この〝分かる〟のあとの空白に、主人公の強い秘められた思いが、ジンジン伝わる。
 
言いたいことがある。
 
伝えたいことがある。
 
でも。
 
言えない。
 
言ってはいけない。
 
〝君の恋が上手く行けば   〟
 
〝   いいとも思う僕もいるから〟
 
この思い、主人公に、嘘はないと思う。
 
けれども、それだけじゃないよね。
 
流行の言葉でいうと、オーディエンスは、主人公の気持ちを、この空白部で“忖度”する。
 
ますます、感情移入が深まる。
 
ここである。
 
この「運命の人」の最大の聴き所は。
 
だから、最後の
 
〝君だったらいいのに〟
 
が、ものすごく響くのである。
 
これまで、空白にしていた部分を埋めるように、本当の気持ちが、ここに入る。
 
主人公は、“恋”とか、“片想い”とか“運命”とかを、長い年月で捉えたり、まるで神さまに近いような高さから俯瞰したように見ている感じもあるのだが、最後に、生身の人間として、本音を漏らす。
 
それが、〝君だったらいいのに〟。
 
すごく、人間らしくて、僕は大好きである。
 
今回、ライブでは、音響的なことなのか、エコーが効いているせいなのだろうが、“キリ”が、今ひとつだった。
 
ぜひ、そこ、調整して貰えたら、、、などと贅沢なことを思ったり。
 
いやいや、そんなこと思う以前に、僕は、横山さんのピアノの弾き始めから弾き終わりの最後の一音まで、ずっと泣きっぱなしだったけど。
 
次に見に行くときも、まず間違いなく一番、楽しみにしている「運命の人」である。
 
セレブがまたあったら、そこでもオーケストラアレンジで聴きたい。