久しぶりの投稿です
週に2本くらいのペースで映画を観る生活なので
感想を書きたい作品の在庫が、どんどん溜まってしまう
あまり欲張らずに、簡単に感想を書かせてもらいます
まずは「HOW TO HAVE SEX」
昨年の第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを受賞した作品です
この作品、予告編で見たときに
反射的に「あ、観たい」と感じました
青春の入り口に立った女の子たちの「ひと夏のエピソード」
これまでスクリーンで繰り返し語られ、観てきた主題です
けれどこの作品の予告編からは
これまでの作り手がとらえきれなかった
現場の湿度や匂いまでわかってしまうような
生き生きとした「実感」が感じられたのでした
イギリスからギリシャのクレタ島にやっていた少女たち
彼女たちは中学を終えたばかりの16歳です
親の手を離れ、仲の良い友人3人だけの初めての旅行
新しい夏は始まったばかりです
到着した朝、海岸はまだ寒くて人もいない
けれど服を脱ぎ水着になって
海に入らずにいられない
冷たい水に身体を入れ「冷たい!!」と大声を出し
笑わずにはいられない
ホテルのフロントでは
思いつくままに嘘を並べて、プール側の部屋をせがむ
大人を相手にした初めて交渉に成功して満面の笑顔
部屋に入ると、落ち着く間もなく
それぞれがこの日のために買ってきた
ちょっと背伸びしたセクシーな水着に着替えて
三人転げるようにしてプールへ直行します
※16歳の服とは思えません
こうして三人女子のバカンスは始まります
プールの周囲は、夏の強烈な光にネジがはじけ飛んだような若い男女ばかり
彼女たちも遅れを取り戻すかように参戦します
「酒」と「たばこ」とが
この夏季限定祝祭に参加するためのパスポート
白昼の野外で繰り広げられる馬鹿げたノリのゲーム
そしてそこに飛び交う男女の思わせぶりな視線
※ノリの良い女であると見せつけます
主人公は、実は三人の中で唯一のバージン
そんなのがバレると男の子は相手にしてくれないよと
友人ふたりにアドバイスを受けています
※かわいいけれど、まだ幼さが残っている主人公
昼はプール、夜にはディスコミュージックが耳を弄するクラブへと
三人は臆することなく果敢に攻めこみ
朝方まで飲んで騒いで、それぞれに気になる相手を見つけて
あとで戦果を報告
この映画で、実に見事だと感じたのは
初めての冒険に踏み出し
つい、ためらったり、それを振り切るように飛び込んだり、といった
16歳女子のその現場その現場での心情が
こちらにダイレクトに伝わってくること
丁寧に描いているというのでなくて
主人公の心に湧き上がる瞬間瞬間の「震え」が
観る者の埋もれていた記憶を掘り返し
それに爪を立ててくる感じ
観客は軽い痛みとともに
「あ、それわかる!」とか
「いいよ、行っちゃえ行っちゃえ!」とか
自分のことのように主人公の行動に寄り添ってしまう
※なんかこの男子、いい感じ、観客もつい応援してしまう
主人公は、基本的に素直で好奇心が強い、とてもかわいい女の子です
けれど16歳の心の中は「イケイケの爆発力」と「繊細な怯え」とが
矛盾を丸抱えたしたままに暴れまわっている
そして彼女たちが相手にしているのは
これも勝手な思惑を抱えながら、この時間を楽しもうとしている
まだ若い男子
彼らは、カッコ良かったり、頼もしかったりはするものの
それと同時に
バカだったり、向こう見ずだったり
思いやりが欠けていたりする
当然ですね
※ 女子は女子、男子は男子、それぞれの思惑で、「何か」を交換しようとする
主人公は、ちょっとしたことで自分が抑えられなくなり
心にもない行動に出てしまう
誤解とすれ違いとが起こってしまうけれど、「違う」とは言えず
そのことでまた新しい傷を抱え込む
まあ、仕方がない
それが若いということなんだし
誰にでも覚えがあることです
※自分の傷を触りながら、それがなんだかよくわからない
それから、この作品の背景なのですが
イギリスでは、16歳までが義務教育
その先に「高校」という教育機関はありません
中学卒業の時点で「全国統一学力試験」を受けて
その結果によって大学に進学するための予備校的なスクールに進むか
それとも就職するのか、道が分かれます
ギリシャのまばゆい海に現れた16歳の彼女たちは
単純に中学卒業の解放感でいっぱいの3人組に見えるのですが
実は、それぞれに、将来を決定する統一試験の結果を心配する身でもあり
その容赦ない現実原則が、後の展開にも表れてきて
観ている大人の気持ちを、切なくさせます
この人が、モリー・マニング・ウォーカー
初監督だったこの作品で
カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを受賞しました
実にカッコ良い女性です
2019年に、「RAW 少女のめざめ」で
※少女が大人へと成長していく過程を、「人肉食」というメタファーを用いて描いた作品
こちらも初監督でカンヌ国際映画祭で批評家連盟賞を受賞した
ジュリア・デュクルノーを思い出します
彼女は、2作目「TITAN/チタン」で
2021年のカンヌ最高賞であるパルムドールを受賞しました
それぞれの物語で
十代の傷つく心を観客に見せてくれた、
主人公の女性たち
人生はまだ始まったばかりです
喫煙でオリンピック出場辞退となってしまった日本の19歳女子も
ヘコタレず、ガツンと生きて行ってもらいたいと
69歳ジジイは思いますね