「ジョン・レノン 失われた週末」

を観ました。

 

 

この映画は、

ジョン・レノンが妻のオノ・ヨーコと別居していた

“失われた週末”と呼ばれる

プライベートな日々の

真相を追ったドキュメンタリーです

 

※リラックスしてじゃれあっている

ジョンとメイ・パン

 

ビートルズが解散して3年後の1973年

ジョンはヨーコと別居して、

ふたりの個人秘書だった中国系アメリカ人「メイ・パン」と2年半の間暮らしています。

 

一般に、

ジョンにそれを進めたのはヨーコだったと言われています

つまりは「妻公認の不倫」という状態

 

 

この期間、ジョンは立て続けにアルバム制作をする一方で、

友人たちと「酒浸りの日々」を過ごしており

 

 

“失われた週末”という呼び名は、

アルコール依存症に陥った男を描いた

ビリー・ワイルダーの映画の題名に

由来しています。

 

※真ん中にいる髭男が、酔いどれ時代の

「主犯級の友人」ハリー・二ルソン

 

※この時期、彼らはこんなアルバムも出しています

 

 

これまで、ジョンの「失われた週末」の詳細は分かりませんでした

 

一般的には、破天荒な生活ぶりが喧伝され

ずっと完成されなかったアルバム

『ロックンロール』や

 

最終的にはすんなりとヨーコの元に帰ったという結末から

 

ジョンの「一時的な気の迷い」

息詰まったヨーコとの生活からの「息抜き」的なイメージだったと思います。

※『ロックンロール』はルーツミュージックのカバーアルバムであったため、

ジョンは作詞作曲の重圧から解放されて録音

しかしたくさんのゲストと酒を飲んでのお祭り騒ぎとなって収拾がつかず

さらに、プロデューサーであったフィルスペクターがマスターテープを持って失踪する

などのアクシデントを経て、2年後に完成した

 

 

今回の映画は、ジョンのお相手だった

「メイ・パン」が出演して

彼女のもつ豊富な写真や映像を提供

 

そして、ふたりの関係は

「妻公認の不倫」といった

世間に喧伝されているような

マイナスイメージのものではなくて

 

恋人同士であったふたりを中心とした

自然で、生き生きと充実したものであり

そして彼らが、周りの人たちをいかに幸せにしたかが語られます。

 

 

メイ・パンは中国系移民のひとり娘

若く、可愛く、無邪気な好奇心と実行力にあふれています

 

移民社会の中でも「中国系」はマイナー中のマイナーとのこと

 

父親の起こした家業は順調に伸びましたが、

中国では男性を重んじるため

のちに男性が養子として家に入って

家業を継ぎ

女性の彼女は家族から尊重されませんでした

 

大学時代にあこがれのアップル社に度胸ひとつで潜り込み

ヨーコに認められた彼女は、ジョンとヨーコの秘書となります

 

 

ヨーコは、ジョンの7歳上

 

旧財閥系に生まれた良家の子女

幼いころから日本とアメリカを行き来して育ちます

 

 

ニューヨークで学んでいたときに、

ジュリアード音楽学園にいた

前衛音楽家一柳彗と結婚

表現活動を開始した彼女は

現地の芸術仲間から高い評価を受けています

 

6年後に一柳彗と別れて一時帰国中に

彼女の支持者だった映像作家

アンソニー・コックスと再婚

そして「現代芸術協会」の招きで渡英

活動拠点をロンドンに移して

ジョンと出会います

 

一般に、ヨーコは

ビートルズ解散の要因の一つともいわれ

あまり良いイメージを

持たれていないと思います

 

けれどこの映画で再確認したのは、

彼女の美しさ

そして知性と創造の強い力に裏付けられた

ミステリアスな魅力でした

 

 

 

そのことはさておいて、

この映画を見おわって

いちばん強く印象に残ったのは

 

ジョンの前妻シンシアとの子どもである、「ジュリアン」の笑顔です

 

ヨーコは、ジュリアンからの電話があっても

秘書のメイ・パンに「不在」と嘘を言わせて

ジョンとつなごうとはしませんでした

 

ジョン自身も、

親の愛情を知らずに育ったため、

ジュリアンとの接し方が

わからなかったようです

 

メイ・パンは、

電話をつながなかったことへの

罪の意識もあって

ジョンを説得して

シンシアとジュリアンに会いにゆき

ひと夏のバカンスを過ごします

 

夏の日差しの中

アルコールの抜けた体を海に泳がせるジョン

自分を受け入れてくれる大人たちのなかで

まぶし気に笑うジュリアン

この映画で一番幸福なシーンです

 

 

 

ヨーコとメイ・パン

 

ヨーコという人は、

「切る」人なのだと思います

不要なものを切る、あやふやな関係を切る

そのことによって「個」の性格や力を際立たせようとする

 

世界の原理や動きを手探りし

変化は求めても、あと戻りは許さない

そんなやり方で真理を希求しようとする意志

ある種、男性的な原理です

 

一方メイ・パンは「繋ぐ」人です

ゆるし、くつろがせ、些末なことはこだわらず

現状維持や後戻りもゆるやかに受入れ

共通点を見いだして可能性を信じ、

生き生きとした解放へといざなう

女性的な原理

 

どちらが「正しい」というわけではないでしょう

 

ジョンはヨーコとの生活に疲れ、荒れていた

(別居の直接的な原因は、

ジョンがヨーコの見ている前で

別の女性と性的な交渉を持ったこと、

という説があります)

 

彼は、煮詰まった状況からとびだして

魅力的な若い娘と家を出て暮らした

別れた前妻や息子との再会し、

共にバケーションをすごし

旧友たちとの騒がしく自堕落な日々を満喫した

 

 

そして2年半後、

ジョンは、

楽曲制作を手伝ったエルトンジョンの

コンサートにゲスト出演し

その楽屋で久しぶりにヨーコと会います

(ジョンにヨーコが行くことを伝え

その「手引き」をしたのがポールだった

というのが少し意外でした)

 

そして、ジョンはヨーコの元に帰りました

長いバカンスは終わったのです

 

メイ・パンは

「ジョンはそれからも私に電話をくれたし

新しい家を借りる話もしていた

彼は、私のところに戻ってくるつもりだった」

と語ります

 

 

真相は藪の中

 

ジョンとメイ・パンとの生活は終わりを告げ

再び始まることはありませんでした

 

ジョンはヨーコとの家庭の

「ハウスハズバンド」となりました

 

 

この映画

スキャンダラスに喧伝されていたこの時期の

「意外な真相」というほどのことはなかったのですが

出来事の細部が画像や映像で見られたことで

全体として気持ちよく納得することができ

観てよかったなと思えました

 

 

映画の最後に

まるで親子のように親し気に話し合う

現在のメイ・パンとジュリアンの姿が

とてもほほえましかったです