もう高齢者なんですが、小さいころからテレビや映画の出演者は、すぐに覚えてしまうタチです。

「あっ、この人、あの映画に出てた」ってやつ。

主役は当たり前として、端役もなんだか頭に残ってしまう。

 

そんな自分なのですが、先日思いがけないことが起こりました。

 

雨降りだったので、NHKBSで録画しておいた、フィリップ・K・ディック原作の『マイノリティ・リポート』(2002)を観たのですが、そこに出てくる捜査官に強烈な覚えがある。

「絶対知ってる」信号が頭に鳴り響くのに、どこで見たのかが思い出せない。

それがコリン・ファレルだったんです。

 

私がこのひとを最初に見たのは『ロブスター』(2015)でした。

先日公開された『哀れなるものたち』のヨルゴス・ランティモス監督の作品。

ある年齢になっても結婚しない人間は「反社会的」とみなされて、国家に「中年独身者お見合い施設」に一定期間隔離される。

そこでもカップル成立しないと、動物に変えられてしまうというディストピアの話。

彼は国家施設から脱走して、「独身者が最高」という主義の反政府組織に参加。

さらにそこからも、女性を連れて逃亡してしまうという役柄。

 

 

左2番目の坊ちゃんみたいなひげ男が彼。

(ちなみにその上におわす美女は、反政府組織のリーダーを演じたレア・セドゥ様でございます)

 

次に見たのは、同じ監督の『聖なる鹿殺し』(2017)

酔って手術をして患者を死なせてしまった医師。

やましさのために、正体を明かさずに死んだ患者の息子を援助している。

するとしだいにその少年が自分の家族に入り込んでくる。

自分の家族に近づけまいとすると、彼の子供たちは呪いのような病に侵されていくという話。

 

 

濃い髪濃いひげの脂っこい医師がコリン・ファレル

 

次に見たのは『イニシェリン島の精霊』(2022)

アイルランドのおそろしく何もない孤島。

牛飼いの仕事を終えると、夕方からパブで酒を飲むこと以外にやることがない。

10年1日のごとく、同じ友人相手に酒を飲んできたが、ある日その友人から、「俺はお前のために何10年も人生を無駄にしてきた。お前のような退屈な人間とは以後絶縁する。もし今度俺に声を掛けてきたら、その度に俺は自分の指を1本ずつ切り落とす」と宣告される。

悪意はないが牛の話以外に話題もない、困った眉毛の退屈な中年独身男の役。

 

 

そして今回TVで観たのが『マイノリティ・リポート』(2002)

予知能力を持った超能力者3人を使った「殺人予知システム」が、社会から殺人を駆逐した未来。

その「犯罪予防局」のリーダー刑事が殺人を犯すことを、システムが予告する。

リーダー刑事を予防局から追い出し、さらに追い詰めて、新しいリーダーとなろうとする若い刑事の役。

 

 

これです!この顔をひとめ見て、

「あ、すっごく、すっごく、絶対見たことある!」

警報がわんわんと鳴り響きました。

それまでの3本で、なぜ気づかなかったのか。

思いがけない落とし穴。

不思議なことに名前さえ覚えていませんでした。

 

役者さんは、たくさんの作品に出ると、「メジャー臭」のようなものが付く気がします。

『ロブスター』のレア・セドゥは、今や大変な売れっ子になりました。

『デューン砂の惑星part2』にも出ていましたが、役柄以前に、あまりに女優レア・セドゥを感じてしまい、以前ほどトキメキかなくなってしまいました。

 

コリン・ファレルにはその臭いがない。

その映画その映画で、役にはまり込んでしまう。

むしろ、22年前の『マイノリティ・リポート』の時のほうが、

強く「メジャー臭」を放っているように感じました。

だから私もすぐに気づいたのでしょうね。

 

不思議な役者さんだと思います。