少し前に依頼を受けていたビクターのラジカセRC-707です。
ご指摘の症状としては
①ラジオの各バンドの目盛ズレ
②テープ走行不安定
早送り巻き戻しできず
③スイッチの接触不良
その他、キャビネット左側面に一部ひび割れあり
といったところが主な項目です。
背面の様子です。シリアル番号は14117218。ACケーブル、DCジャックからの給電、乾電池に対応しています。乾電池の場合、単一乾電池を6本(9V)使うのでアルカリ電池を装填すると結構重くなります。
内部をみたところです。
この写真を見て、あっ、これは後期のモデルやね、そやけど、シリアル番号は若い(初期モデル)ように思われるかたもおられるでしょう(そんなこと気づく人おらんやろう?)。
ぱっと見たところ、テープ速度を調整するためのサーボ基板(モーター速度調整用基板)が見当たりません。
以前修理したRC-707の該当部分にはこのような子基板が付いており、半固定抵抗で速度が調節できたのです。
そこに使われていたモーターはどのようなものが使われていたかというと、下記のようなモーターでした。
三協精機製作所のモーターがつかわれており、回転速度は別の子基板で制御していました。
このラジカセのシリアル番号は17020850でしたので今回修理するラジカセよりも番号が大きい、つまり後から作られているということになります。
今回修理するラジカセにはどのようなモーターが付いているのでしょう。
早速カセットとアンプのブロックを取り出してみました。
上の写真のように松下製のモーターが使われていました。モーター側面に制御用のパワートランジスタが付いており、制御回路一体型のモーターになっていました。松下側で回転速度は調整済み、ビクターの製造ラインでは速度調整にかける工数が不要になるというわけですね。
年代的にはこちらの方が新しいように思いませんか。
まあ、とにかくベルトを交換しようとメカデッキの裏側を見てみました。
ベルトが伸びているのが確認できました。
それと
カセットメカには何か所か製造年月日のスタンプが押されているのが目に留まりました。
今回のカセットメカのフライホイールは昭和51年(1976年)7月15日に生産され7月20日にアッセンブルされたようです。
スピーカーが付いているフロントパネルの内側を見てみると、やはり製造年月日のスタンプが押してありました。
ならば、以前修理した707は、、、
年月日が写っている写真があまりないのですが、カセットメカ部に下の写真のようなスタンプが見えました。
やはり今回修理したラジカセのほうが(シリアルは若いけど)後から造られたようですね。
横道にそれましたが、下記が取り外したベルトです。
ラジオのダイアルメモリがズレているので調整のためラジオのブロックを取り外しました。
ラジオの基板を止めているボスが1か所折れていました。
本機はケースの左側面にクラックが入っているので、以前の持ち主が側面落下させたのではないかと思います。その際、基板を止めているボスが折れたのでしょう。ひょっとしたら、その際、リアパネルも破損したため、古いRC-707のリアパネルと交換したのかもしれません。
折れていたボスはプラスチック(ABS)接着用の接着剤で接着しておきました。
ダイアル目盛のズレはずいぶん改善されました。
スイッチの接触不良も改善しましたが、バランスボリュームに少し接触不良があり、左MAXにした時に右からも音が聞こえることがあります。
カセットは早送り、巻き戻し、オートシャットオフ機構が働くようになりました。録再OKです。テープスピードが2~3パーセントほど速いですが、ゴムベルトがなじんでくると速度は少し遅くなるようにも思うのでこのままとしています(民生用ラジカセだと3%程度は許容範囲ではないかと思います)。その他気づいた点として、モノラル再生時には左右のレベルメーターがほぼ同じように振れますが、ステレオにすると左側がほんの少し振れが弱くなります。本機のサービスマニュアルがないため、適当にボリュームをいじるのはやめて現状のままとしています。
様子を見て、問題ないようであれば明日トーンアームと一緒に発送いたします。