先日公開したWEBサイト 「想力戦研究所」という名称について、
これは戦前の日本に実在した研究機関「総力戦研究所」をもじっただけなのである。
この「総力戦研究所」、一般的にはあまり知られていないが、実はかなり興味深い組織なのだ。
日本政府のバックアップで立ち上げられ、1941年の4月から活動をスタート。
省庁、軍、銀行、民間企業から選りすぐりの人材を集めた、まさに日本のエリート集団。年齢層も30代の若手が中心だ。
そして、最も気になる研究内容は何かというと、
「もしも日本とアメリカが戦争になったらどうなるか?」 である。
そのテーマに対して、彼らは「模擬内閣」という仮想現実の大本営・政府を作り出して緻密なシミュレーションを行う。参考に使うデータや資料はそれぞれの機関から持ち寄られた本物なので、やっている事は現実世界と変わらない。ある意味超ハイレベルなワークショップだ。
そして1941年8月。このシミュレーションは終了し、結果が報告されている。
その結果をざっくり言うと、
「日本は絶対に負ける」である。
もう少しかみくだくと、
→ 緒戦は成功し、アジアの石油資源を手に入れる。
→ 海上輸送船への攻撃が激しくなり、シーレーンが断たれる。
→ 資源が不足し、戦争どころか国民の生活すら危うくなる。
→ 中立条約を破ってソ連が参戦してくる。
→開戦から3〜4年で日本は降伏する。
結論、絶対にアメリカと戦争をしてはいけない。
… お気づきだろうか、真珠湾攻撃と原子爆弾の投下以外、全てが現実通りになっている。(事実上、この2件は予測不可能)。
日本の若きエリート達が出した答えの中では、始まる前からすでに戦争の決着がついていたのである。
この研究結果は国家の中枢である大本営・政府の人間の前で報告されている。が、ご存知の通り数ヶ月後の12月、日本はアメリカを攻撃する。
じゃあ数ヶ月の間いったい何が起きていたんだ… というのはすごく重要な事なので、また改めて。
ちなみ元東京都知事の猪瀬直樹氏による代表作『昭和16年夏の敗戦』。
この本の中で総力戦研究所が描かれているので、まだ未読の方はぜひ。
余談だが、話題の映画「シン・ゴジラ」に登場する、主人公率いるゴジラ対策チーム。
このチームのモデルはまさに「総力戦研究所」ではないだろうか?
映画のテーマとしても辻褄が合うんだが、庵野さん、何かでコメント出さないかな…。
〈想力戦研究所 URL〉
http://souryokusen.jimdo.com