思い出に浸りたくなって、原宿の駅から青山通りまで続く舗道を歩いてた。

思い出だらけの表参道。

人それぞれに、自由に綺麗に着飾った人がたくさん通り過ぎていく。

建設時は超モダンと言われ、昔の匂いを残していた同潤会アパートは取り壊され新しい建物に変わったのだってもうずっとずっと前のこと。

 

 

道路の反対側にある店、レンガに縁どられ、色とりどりに鏤められたネオンがちかちかと輝くガラス窓、

半地下にある有名なブティック、ここだったかなあ・・・昔のあの店はここだったかなあ。

 

 

祐子に言ったんだ。

欲しいもの、何でも買ってあげるよって。

彼女は、びっくりして言ったっけ。

 

  えぇ!ほんとに?

ほんとだよ。

  何でもって、なに?

何でもだよ、欲しいものすべて。

  えぇーうそぉ。

ほんとだってば、きみに買ってあげたい。

 

僕は、初めてのボーナスで驚くほどの額をもらっていた。

祐子とは、その年の春前まで短期間だけつきあっていたのだけど、ある理由から親の逆鱗に触れ、交際をやめざるを得なかった人。

高校2年の幼い彼女を、僕は、“僕の天使”と呼んでいた。

 

もしかしたらと思い、以前、バイトしていた所へ行ったら予想的中、3年生になった祐子がいた。

彼女は原宿なんかで買物をしたことなどない。

僕は、とにかく“僕の天使”だった人に、プレゼントしたかったのだよ。

 

これ、いい?これもいいの?と祐子は僕に聞いてきた。

白いセーターと赤いチェックのミニスカートと茶色いスェードのブーツを買ってあげた。

僕は、祐子が大喜びする顔を見たかっただけなんだ。

 

店内にブランコがあるカフェがあって、ふたりで乗ったこともあったな・・・

 

落ち葉がさらさらと、下る舗道を流れていく。

街路樹の隙間から落ちる秋の夕陽が僕をまだらに染めている。

まだらの僕やまだらの綺麗な人たちが、風と時間とともに通り過ぎていく。

 

思い出多い表参道、ずうっと続いて欲しいのに、もうすぐ喧噪の青山通りに着いてしまうよ。