まずは、現憲法の前文の一部を以下に抜粋してみました。

現憲法・前文の一部

政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、
ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、
その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。


自民党 改正草案・前文の一部

日本国民は、
国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
 我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
 日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。

基本的人権を尊重するのは国ではなく「日本国民」になっています。

国民が国を守ること、和を尊ぶこと、規律を重んじること、国家を継承することなどが新たに掲げられており、また、国民の憲法尊重義務(102条1項)が新たに設けられたため、これらは国民が守らなければならない事項となりますよね。


第102条(憲法尊重擁護義務)
1 全て国民は、この憲法を尊重しなければならない。
2 国会議員、国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を負う。

憲法全体を尊重することが国民の義務になっていると考えられますよね?


現在の憲法の主な役割は、
前文にあるように、国民が遵守するものではなく国家が遵守するものであると考えられますよね?

国家が守るべきが憲法であり、
国民が守るべき義務があるのは、法律ですよね?

したがって、改正草案では、国民を主語に使う前文からして、現憲法の前文を無視した憲法違反であり、
また新設の102条1項も、同じく現憲法に違反していると思いませんか。