翌日の夜から、ウルコのやばい仕事は始まった。

当分の間は、新宿歌舞伎町界隈でやれとの指示をトルオから受けている。

その日ごとに細かく場所を変えるが、それはトルオが指示することになっている。

初日なので、びくびくものだったが、練習のときのように、そしてトルオから言われた通りにやったら、トルオの言う通り難しいことはなかった。

初日から、短時間で3人をホテルに送り出し、6万円を稼いでから店に出てピアノを弾いた。

トルオが、まわりに気づかれないようにウインクを送ってきたので、ウルコも真似をする。


 家に戻って来たトルオに6万円を渡した。

「おお、ご苦労さん、な!簡単だったろ?」

「うん、難しくはなかった・・・馬鹿な男って、本当にいるのね」

その日、トルオは、いつもに増して、ウルコの身体を慈しんでくれ、ウルコは何度も蕩けそうになった。


 だんだん、” 一日3人くらい”が、”一日3人はノルマ”的になっていった。

6万では、当たり前のような顔で、トルオは受け取るようになっていく。

ご苦労様も、ありがとうでもない、ただ取り上げられるという風に変わっていった。

”今日も、3人だけか!”と言うようになり、その次には、”もう慣れただろ、4,5人やってこいよ”という言葉に変わっていった。

そして、寝る前の可愛がり方も、以前のように、髪を撫でてくれ、頬を撫でてくれ、やさしくキスしてくれて、包んでくれるような愛撫はなくなって、おざなりなものに変わっていく。


 ウルコは、やっと気がつく。

自分は、男の上位に立つべき女のつもりだったけれど、それが現実だったのは、高校卒業までのこと、それ以降は徐々に落ちていき、今は最低レベルまで落ちている自分を自覚し始めた。

それでも、今の自分では、トルオから離れられない。


 その頃の心の動きや出来事を綴ったものが、この「ウルコのシリーズ」のいちばん最初の項である”ウルコの心”だった。

それを、ここに転載してみよう。


 ウルコの心


  ウルコの商売は、

  自分の心を切売りすることだった。


  稼いだお金のほとんどを大好きなトルオに貢ぎ、

  自分は貧しい暮らしに甘んじていた。

 

  ウルコは、トルオに心を向けて欲しかった。

  切売りして減っていく心を元に戻して欲しかった。


  けれど、トルオは、しごく当たり前のように金を受け取るだけで、

  ウルコの心を満たすことなど眼中にない。


  それでも、ウルコはトルオを思い募っている。


  タスケは、ウルコが好きだった。


  ウルコを思うタスケは、トルオが憎くてたまらない。

  タスケは、トルオを徹底的に痛めつけ、ウルコから引き離そうとした。


  トルオは、タスケには敵わない。

  代わりに、ウルコを罵り、痛めつけた。


  お前のせいで、俺はこんなひどい目にあった・・

  トルオは、ウルコにつらく当り散らして責めた。


  ウルコは、それでもトルオから離れられない。

  小さくしぼんでいくばかりの心なのに復活の見込みはない。


  タスケはウルコから疎んじられ、

  傷ついて去っていった。

 

  ウルコの心がからっぽになったら、

  トルオもきっと去っていく。


  ---以上、転載終わり---



ウルコは、傷つき、結局はトルオに捨てられてしまう。

ウルコは、自分にも愛想を尽かし、何もかもが空っぽになってしまった。

とうとう、ウルコのシリーズは終わりにしなければなりません。



ここまで、読んでくれた方たちへ。


ウルコは、この15年間、交通事故に遭いっぱなしのような状態だったわけです。

でも、ウルコの本来の性格、よく御存じですよね・・・。

そんな交通事故に遭わなかったら、ウルコの現実は違っていたはず・・・。

ウルコは、今は最低です、どん底状態です。

でも、どん底よりも下はない・・・。

近日中に、「ウルコ復活のシリーズ」を始める予定ですので、よろしくお願い申し上げます。