二期会のタンホイザーに。2021年の再演。前回もアクセル・コーバーの指揮が予定されていたが、コロナ禍の入国制限により、たまたま日本にいたヴァイグレが代役で好評だった公演。今回は二期会であるにもかかわらず、タイトルロールがサイモン・オニールというのに驚き。満を持してのアクセル・コーバーの指揮で再演。

 

アクセル・コーバーは2014年のバイロイトでタンホイザーを聴いている。スター性はないのかもしれないが、カペルマイスターという感じで素晴らしい音楽を聴かせてくれたので、安心。加えて、オニールということで、かなり期待していた公演。(しかし、二期会で外国人歌手を呼ぶのは画期的。いろいろ不満があり二期会をやめている歌手がいたが、なにか運営が変わったのかもしれない)

 

初日に聴いた人はいろいろと傷があったようだが、自分がいった日は、素晴らしいタンホイザーだった。オニールを生で聴くのは初めてだと思うが、予想より美しい声と豊かな響きの持ち主であり、1幕、2幕、3幕と見事に歌いきっていた。最後のローマ語りなど本当によかった。

 

そして、アクセル・コーバー。かなりテンポは速めに演奏。この作品がワーグナー作品において軽めの作品であり、バイロイトでは「オペレッタ」なんて言われるのを思い出させてくれた。どことなくイタリア・オペラっぽくもある。しかし、それが本来のタンホイザーなのかもしれないと思わせるぐらい作品にあっていた。

 

しかし、一本調子ではなく、例えば、二幕の歌合戦でヴォルフラムの歌は退屈であることを示すように、テンポを落として、あえて退屈な音楽にしていたように感じた。ちなみにこのときの演出も対比されていた。ヴォルフラムは奥の舞台で歌わせるが、タンホイザーは前で歌わせる。ヴォルフラムが良い歌手だと結構聴いてしまうところだが、ワーグナーの真意はこういうところなのかもしれないと感じた。そして、合唱もよかった。タンホイザーの巡礼の合唱は聴くたびに感動させられる。一度、自分でも歌ってみたいものだ。

 

演出について。タンホイザーって今風に言うと「異世界転生」ものであろう。キース・ウォーナーの演出は絵画が異世界との出入り口という感じの演出。歌手が絵画のポーズをして見ていると動き出して、絵から出てくる感じ。ただ、異世界は現実世界では当たり前にも思える。異教徒など異文化の生活というのは、その世界を知らない人からみると異世界になる。そのため、ヴェーヌスも二幕の歌合戦を観客としてみていたり、タンホイザーがヴェーヌス讃歌を歌うと喜んでいたりする。ヴェーヌスベルクのような異世界は近くにあるというところが面白い。

 

この公演は再演であったが、すごく感動。やはりこういう公演があるから劇場通いはやめられない。二期会はもともと指揮者と演出には力をいれていた。歌手のタイトルロールがはまるだけで、ここまでよくなるのかとも思ったのも事実。日本の歌手育成を担ってきた二期会なので難しい判断があった気がするが、自分はこの方向性も応援したいと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

最近、勧めている推し活グッズ。アニメと違い売らないのね・・・

 

 

 

はねた後は神田のキュル・ド・サックに。