プログラムBの2回目。サントリーホールの座席が1回目の隣というまさかの座席だった。(今回できるだけ安い席を買うために座席は選ばず購入)初回の感想は完全に熱病にやられたかのように、興奮の渦にまきこまれた。2回目なのでもう少し落ち着いて聴けた。
2回目も驚異的なことに1回目の名演が再現されていた。よく考えると今回のベルリン・フィルの日本滞在は2週間ぐらいいたようだ。関西方面で1週間演奏旅行をして、最後に東京に来るという流れ。SNSでみていたときから、評判はよかったのは知っていた。つまり、名演が再現できるという再現芸術の理想に達しているようにも思える。
ちなみに、2プログラムだけで日本全国回っていたので、こんなにチケット売れるのかな?とは思っていた。ペトレンコはほとんどCDとかも出していないし、マスコミも登場しない。ある意味スター性は低いように思っていたが、蓋をあけてみれ全国ほぼ完売だったようである。ちなみに、東京公演の週は新国シモン・ボッカネグラ、ヘンツェ「午後の曳航」という対抗馬があって、クラシックファンは分散しそうではあったが、完売だった。
Bプログラムはマックス・レーガーとR.シュトラウス「英雄の生涯」という組み合わせ。このプログラムはベルリンでの今シーズンの開幕と同じもの。アジア用に有名曲集にするパターンも多い中、レーガーを組み込んでくれるのがありがたい。ペトレンコの記者会見を読むと、英雄の生涯はベルリン・フィルの演奏者の良さを引き出してくれるからとのこと。そして、レーガーは同時代人でR>シュトラウスうのライバルだった人。その人のモーツァルトの主題による変奏曲とフーガ。で後期ロマン的なシュトラウスとの対比でプログラムしたらしい。
レーガーは初めて聴いた作曲家であったが、DCHのコンサートで同一プログラムで予習。モーツァルトをベースしにしながら、音楽はやはり20世紀の音楽で面白い。しかし、DCHで聴いていたよりベルリン・フィルの生演奏体験は格別のものだった。自分の家のスピーカーでは再現できていないようだ。
冒頭のオーボエソロ、弦楽器の美しさ。そこから、とにかくペトレンコの指揮にベルリン・フィルのプレイヤーの至芸が感じられる。とにかく美しく、端正でありながらいきいきとした音楽が奏でられる。ちなみにコンサートマスターは樫本さん。変奏曲からフーガに移るが、徐々にレーガーらしい20世紀的な音が入ってくる。ベルリン・フィルの力を十分に引き出した演奏。
後半はR.シュトラウス「英雄の生涯」。ワーグナー好きな自分ではあるが、実はR.シュトラウスはそこまで好きでなかったりする。その印象が払拭された名演。英雄の生涯という作品の魅力を余すことなく伝えてくれた。英雄の生涯はR.シュトラウス自身を交響詩にしたと言われている。
英雄の生涯はペトレンコ、ベルリン・フィルの魅力を伝えるのに十分な曲だった。英雄の生涯というだけあって、英雄が生まれ、敵にやりこまれるが、生涯の伴侶を見つけ、戦争を挑み、業績をあげ、そこで隠遁する。これらのストーリーをオーケストラ作品にしただけあり、多彩な音楽表現の宝庫である。それをベルリン・フィルのスーパーオーケストラ集団が、演奏していく。2回聴いたがどちらも本当に素晴らしかった。ベルリン・フィルの木管、金管のソリストたちの素晴らしさ。そしてコンサートマスター樫本さんのソロ。これらソロが本当に見事。そして、それぞれのアンサンブルの見事さ。こんな理想的な英雄の生涯を聞かされたら、今後他の演奏をきけなくなってしまうと思ってしまった。
実際、SNSではこの曲を卒業するというのがよく投稿されていたが、正しくその通りだった。
自分は卒業はできないが・・・。とにかくすごい名演だったことは間違いない。