秋のアンサンブル発表会か10月末に終わった。今年はR.ワーグナー「ワルキューレ3幕」抜粋である。"Du zeugtest ein edles Geschlecht"から終幕までをやった。3年連続発表会でワルキューレをやっている。1幕全部(フンディング)、2幕(ヴォータン、フンディング)と来て、いよいよ最後となる。

 

 1.歌の練習

 

3月のソロ発表会後に、ワルキューレの勉強を細々と始めた。(冬の旅を歌うという自分のテーマも別途あるため)実はかなり前からブリュンヒルデを眠らせるまでのところはやっている。初めてやるのは最後の部分だけなので、今回は楽だろうと思っていた。2幕のヴォータンとかなかなか大変だった。しかし、そのような気持ちでレッスンをしているせいか、なかなか歌が頭に入らない。一つは白丸が多い楽譜で、母音の印象しか残らないせいと気づいた。発表会3週間前でどうにか暗譜。暗譜で苦労したのは、ブリュンヒルデを眠らせてからの回想の部分。発表会当日まで毎日呟いていた。

 

 2.演出

ブリュンヒルデを眠らせてからの間奏をどうするか。ブリュンヒルデをやっている妻は最初カットすれば?とのことだったが、それではワーグナーではないのでは?ということで、ピアノの先生にお願いして、弾いてもらうことに。(いつもピアノの先生には難曲を長時間弾いてもらい本当に感謝)

その結果、かなりの時間を演出することが必要に。演出で参考にしたのはやはりバイロイト80年のシェローリング。やはり舞台が美しいのでどうにかあの炎を舞台で再現できないかを研究。100円ショップでLEDろうそくに赤いセロハンをつけると炎みたいになるとみて買ってみたものの、舞台が明るいので、ほとんどわからず。懐中電灯に赤いセロハンつけるのも、やはりいまいちだった。

 

結局、ハロウィンシーズンでもあり、赤いパーティモール(というらしい・・・)を2つ購入。眠らせたブリュンヒルデを円で囲むというもの。これなら、自分が2006年にバイロイトでみたタンクレッド・ドルスト風になりそう。先生にも動きなどつけてもらい、OKもらい決定。

 

 

 

 3.本番

 

ワーグナー歌っていて、初めて感動して歌えなくなりそうなところだった。暗譜してワルキューレ3幕をやるのは初めてだったが、やはりワーグナーのドラマの盛り上げ方は素晴らしい。やった場面は、自分の命令違反した娘であるブリュンヒルデに対して、怒りをぶつけ、罰として神性をとりゆきずりの男と結婚するように命じる場面。しかし、ブリュンヒルデの懇願にだんだん娘への愛で、火で囲み英雄だけが夫にできるというシーン。

 

音楽的に最初はやはり渋い。ぶつぶつ文句をいったり、怒りをあらわにしたりする。しかし、ブリュンヒルデに対して、Leb Wohl(さらば)というところで音楽が高鳴り、ヴォータンの怒りが寛解し、娘への愛情を爆発させる。このシーンが本当に歌っていて、自分がヴォータンになったような気分になり、舞台で泣きそうになってしまった。なんとか持ちこたえたが、少し歌がつまる感じになってしまった。ワーグナーは自分はハーゲンやフンディングなら暗譜でやっていたが、やはりそのような主役級で聴いている誰もが感動するところはやったことがなかった。

 

つい楽譜をみて歌ってしまうのだが、本来、暗譜するべきものなのだなと痛感してしまった。やはり楽譜の内容が身についていることで、さらに本来の役柄の心情や演技といったところまで頭が動くようになる。そのような境地にいたってオペラはできあがるべきものなのだなと思う。実際、来ていただいたお客さんからも評判がよかったのでうれしい。

 

ちなみに、ワルキューレ以外に教室のソプラノの方とアンサンブルをした。ペルゴレージの奥様女中の二重唱である。正直繰り返しばかりであまり好きな曲ではなかった。しかし、ストーリーはむちゃくちゃで、女中が貴族の旦那様と結婚するべく画策するという話。こうもりのロザリンデみたいなものか。さて、来年は何を歌うか。バリトンだとめぼしいものがだいたいやってしまった。また、考えないと。