超名演。ヤノフスキが特に素晴らしい。ヤノフスキらしくテンポが早いのに、軽くならない。むしろ重厚に感じる。N響の音色はとにかく美しい。ヴァイオリンなど弦楽器については、音の粒がまわりに包まれる感じ。コンマスがキュッヒルの影響もあるかもしれない。一方、低音もしっかりなっている。そして、オーケストレーションでこんな音があるのかと改めて気付かされる。

 

歌手陣も素晴らしい。ザックスのエギルス・シリンスは楽譜に釘付けではあったものの、持ち前の太くて大きな渋い声を響かせていた。3幕の迷妄のモノローグはすごい感動。ザックスに年齢が近くなり、共感することか多くなったせいもある。人間の愚かさについて、一緒に考えてしまった。

 

そして、ベックメッサーのアドリアン・エレート。もはや至芸。1人暗譜で歌い、演技をする。歌はもちろんよいが、演技、顔芸など細かいところも目が離せない。マイスタージンガーは喜劇なのか忘れてしまう重厚さだが、ベックメッサーが道化としてやられる姿が喜劇であることを思いだす。とにかく、ベックメッサーがよいと、観ていてにやりとしてしまう。

 

ヴァルターもよかった。かーんと抜ける声ではなく、なかなか声がでるのに時間がかかる感じなのだが、あの分厚いオケでもしっかり聞こえていた。なかなかイケメン。エヴァも素晴らしく、なかなか見た目ともども釣り合っているカップルだった。

 

ダービット、ポーグナーなど脇も素晴らしい。これだけよい歌手を集めたのはさすが春祭。合唱もオペラジンガーだったので、素晴らしかった。

 

とにかく素晴らしい公演で、聴いていて感動してしまうところがいくつも。マイスタージンガーの音楽の美しさに、ワーグナー作品の偉大さを改めて再認識した。こういう公演があるから劇場通いがやめられない。

 

最後はブラボーが。日常が戻ってきた。ちなみに両日参加。この名演を2回聴けて満足。さて、来年の春祭はついにトリスタン。シャーガーでなくなってしまったのは残念であるが、来年も楽しみ。