チームラボが参加することで話題の二期会トゥーランドットに。演出なども面白かったのだが、なんといってもベリオ版のトゥーランドットを知り、聴けたことが一番の収穫。トゥーランドットはプッチーニの最後の作品。リューの死まででプッチーニが他界し、最後は未完の作品。リコルディ社がアルファーノという作曲家に依頼して作品を補筆したものが現在主流の公演。しかし、トゥーランドットが急に心変わりしてカラフとの愛に目覚め大円団という、とってつけた感じがどうにもしっくりしない作品だった。トスカニーニは一度、オケを止めて、演奏したという話も伝わるほど、過去から疑問を持たれながら、上演され続けている。過去に一度、バーリの来日公演のときに、リューの死で終わるものを聴いたことがある。それはそれで悲劇らしくてよいのだが、やはりトゥーランドットとカラフの終わりを知りたくなる。

 

 

 ベリオ版について

 

今回の二期会はチームラボ出るから行ってみるかという感じで行ったのだが、初めてベリオ版なるものを知る。ベリオは一度「レンダリング」という作品を聴いたことがあり、シューベルトの未完成作品を使いながら見事に作品を仕立てていた。20世紀の作曲家であるベリオが補筆してくれるので、最後が特に楽しみになった。そして、それは期待通りのものだった。ベリオのオーケストレーションにより、カラフとトゥーランドットの二人の深層心理もしくは夢の中に落ちたような音楽に。場面的にジークフリート3幕のジークフリートとブリュヒルデの二重唱のような場面になった。最後の合唱で盛り上がるところはなくなったが、二人が死んで夢の中にいったようにも見えるし、作品としてうまく決着をつけたように思える。プッチーニは、トリスタンのようにと楽譜にかいていたらしいが、このベリオ版のトゥーランドットは決定稿なのではないかと思うぐらい、感動させられた。

 

 

 演出とチームラボ

本プロダクションはジュネーブとの共同のもの。演出はENOのダニエル・クレーマーとのこと。プログラムのインタビューが面白い。カラフは徹底的に恋に狂った人とのこと。たしかに舞台でナイフを父やリューの前で振り回し、求婚するというあたりは狂気そのもの。カラフは何故、斬首しているトゥーランドットに惚れたのかわからなかったのだが、彼女の神々しさに狂ったとのこと。なるほど。それなら納得。そして、トゥーランドット。要は男性不信であり、過去の虐げられたきた女性の代弁者として男性に仕返しをするのが使命だという。そのためか王子は斬首でなく、去勢させられる。ピンポンパンも去勢した宦官。今回は、チームラボのライティングのせいか、どうにも舞台が暗いのとスモークがたかれている。そのせいか、このような演技がしっかりつけているにもかかわらず、誰が何をしているいかがわかりにくかったのが残念。もう少し人間劇にクローズアップしてくれたほうが面白かったと思う。

 

話題のチームラボはプロジェクションマッピングで背景を描くところは効果的だと思ったが、レーザーで空間をキャンバスにするのは正直、邪魔なことも。オケだけのシーンとかであれば、効果的なんだと思うが、演技を色々やっているときに、その前にレーザー光線が出てくるので、何を見るべきかが分散。ついチームラボの空間演出をみていたりすると演技が見れなくなるど発生。こった演出なだけにぶつかりあったように思う。ただ、それをさしおいても全般的に色使いなど美しい舞台であり、観ていて楽しかった。オペラが他のジャンルとクロスオーバーして、新しいものにチャレンジしたということは素晴らしい!二期会もこういうプロダクションを提供してくれるのはありがたい。ちなみに舞台は回転しながら場面を変える舞台。それと宙吊りになる歌手が大変そうだった。

 

 

 音楽

指揮者のディエゴ・マテウスがよかった。トゥーランドットの迫力ある音楽を新日本フィルからならしていた。ベネズエラのシステマ出身の指揮者らしい。また、歌手陣も健闘。トゥーランドットなどは堂々たるもので、オケの上からきれいな美声を響かせていた。そして、カラフ。福井敬さんをやや小ぶりにした感じではあったが、期待していたよりはるかによかった。

 

ちなみに、初日のせいとチームラボの話題のせいか、二期会にしては珍しく相当座席が埋まっていた。たしかに、このトゥーランドットは面白いプロダクションだった。今季は平和の日やドン・カルロなど意欲的な作品も多いので、二期会も通うことになりそう。ちなみに、初日のせいかカーテンコールでは演出、チームラボのメンバーも。拍手喝采だった。