新国の名プロダクションのひとつジョナサン・ミラーの「ファルスタッフ」。ヴェルディの作品の中で好きな作品のひとつであることもあり、公演されるたびに行ってしまっている気がする。今回はファルスタッフがアライモということもあり、楽しみにしていた。

 

そして、評判通りアライモのファルスタッフが素晴らしい。演技も板についており、まさにファルスタッフそのもの。街のごろつき、騎士、ペテン師、色男、やられ役、ひらきなおり、傲慢などさまざまなな表現が要求されるが本当に見事。悪役であるが憎めず、集団リンチを受けても逆にバカにするたくましさが、舞台から伝わる。3幕では川に落とされたあと、水を吐き出しながら笑いをさそう場面も。歌もその場面にあわせた歌声で素晴らしい。声もよく響く。マエストリの後継者として君臨してくれそう。グールドみたいに日本好きになって度々、出演してほしいものだ。

 

ファルスタッフはアンサンブルオペラなので、脇も重要。この公演は女性陣、男性陣ともに見事なアンサンブル。1幕序盤の、3パートに分かれるところなど、素晴らしかった。そして、指揮者がまたよい。イタリア人指揮者らしく、カンタービレ。とにかくレガート。イタリアの劇場にいるかのように思ってしまった。昨日、タンホイザー、翌日、ファルスタッフという過酷な東響であるが、指揮者につられて、素晴らしい音色。東響はもっとピット入ってほしい。

 

そして、3幕最後のファルスタッフをこらしめてから、大人組三人が笑われ、人生そのものを笑いとばすフーガがやはりヴェルディの白鳥の歌。人生は冗談。最後に笑ったものが勝ち。自分が年を取ったらこそ、なおさらしみる。ヴェルディ晩年の本当に凄い作品。やはり上演あれば逃してはいけない。見終わった後の多幸感がよい。

 

12日と千秋楽の公演を鑑賞。充実した時間となった。