誓って言う、怠け心ではないの続きです。




大学3年生になる頃には、商店街での仕事も覚え、お祭りの手順も自信が出た。


祭りを取材にきたテレビにちゃっかり映ったりしていた。


インタビューに答えるためコメントを暗記した。足は震えていたが、カメラに向かって一生懸命コメントをしていると、カメラを担いだディレクターが「うんうん」と頷いている。私は安心してコメントした。


私は祭りの度に、地元商店、農協、テレビ局、観光協会、商工会議所、スポンサーのビール会社、食品会社、いろいろな人との出会いがあった。ひきこもっていた8年を取り戻している感覚さえあった。



それなのに、商店街はある事で揺れていた。

今ある手狭な市営駐車場から別の場所に新しい大きな市営駐車場を設置する計画が持ち上がったのだ。

へー便利になっていいじゃん!と私は軽く考えたのだがこれは大問題だった。

市営駐車場が別の場所に移ったら、人の流れが変わる。

それは商店主にとって死活問題。確かに客足が遠のく店もあるだろう。それを企業努力で何とかしようとするには店主は歳を取り過ぎていた。

ところが、駅前商店街は一枚岩ではなかった。通りごとに4つの商店街組合がいがみ合っていた。それぞれの組合の中でもトラブルは日常にだった。

だから祭りをするのもバラバラ、

市役所による市営駐車場建設説明会は紛糾した。

私は議事録を取るためにそこにいたのだが、説明会は怒号の中、強制終了した。

私はこれからのことを考えていた。私の働く商店街組合も賛成派と反対派で揉めている。商店街組合は解散するかもしれない。祭りはどうなるんだろう。

祭りの開催が危ぶまれていた時、私は市役所との打ち合わせの後

「ちょっといい?」

と呼び出された。




応接室セットに座ると市役所の偉いさんと若手職員が座った。

商店街組合事務所で働いていて気がついた事。それは実際に祭りをコントロールしていたのは市役所と観光協会だった。

「駐車場の事で揉めてるのは知ってると思うけど、実行委員が腹立てて辞めちゃってね、このままだと祭りができなくなるから、商店街から第三セクターの駅前ビル開発に祭りを外注するという形を取って祭りを継続しようと思ってる。」

市役所の偉いさんが言った。

「それでね、高田さんを駅前ビル開発で採用したいんだけどどうかな?祭りを継続するには知ってる人がいないとね。組合の方はたぶん別の組合と合併することになるから。」

駅前ビル開発はその名の通り、駅前再開発を目的として駅ビルを所有してテナントを集め、イベントを企画している市の第三セクターだ。

「やることは今までと同じ。その他の条件も同じ。雇い主が変わるだけなんだけどね。正社員も募集してるから、高田さんの希望があれば大学卒業したらおいおいね。」

私は潰れそうな商店街組合で働くより、駅前ビル開発に行った方が将来安泰だよね、頑張って働いたら社員にしてもらえるかもしれないなどと、楽観的にぼんやり考えていた。

「一応、形だけなんだけど履歴書持って面接が必要になるけど向こうもわかってるし。本当に形だけ。高田さんは大学3回生だっけ?21歳?」

現実に引き戻されて、背筋がヒヤリとした。

いつも私は歳を聞かれると〇〇大学の3年ですと答えていた。相手はそれで納得したし、それ以上は聞かれなかった。商店街組合に採用された時は履歴書を出していないので年齢がバレることはなかった。老けた大学生なんてたくさんいる。8年もひきこもった私は27歳になっていた。彼らはそれを知らない。

商店街組合に入って3年目、嘘をついたことは無い。でも正直に話してこなかった小さい罪は、せっかくの大チャンスを逃してしまうかもしれなかった。

つらい日もいっぱいあった。どうしても休むことがあったけど、頭を下げて何とかこのバイトに食らいついてきた。最近は休みも減ってきたし。せっかくのチャンスなのに、私の過去はまた私を表舞台から引きずり降ろそうとする。

どうしよう。
どうすればいいんだろう。

続く。