正解探しと呪い
不登校の親が自分を責めてしまう理由

 

 

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*販売している資料不登校対応の基本FAQ『第10章 昼夜逆転について(親の会アンケートと支援から見えた新しい視点)』を加筆しました。

目次/なぜ昼夜逆転が起こるのか?・不登校期別に見る昼夜逆転の特徴・ 小学生の昼夜逆転・親のサポートの基本方針・(1)混乱期は「睡眠より心の安定」・(2)親の心構えとNG対応・私自身の経験・眠剤について・1. よく名前が挙がる処方薬・漢方・2. 効果の実感とタイミング・3. 結論

 

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正解探しと呪い

不登校になると、多くの親御さんが「何をすればいいのか」を探し始めます。今すぐやるべきことは何なのか、これ以上間違えないためにはどうすればいいのか。そう考えてしまいます。

 

その背景には、「子どもが不登校になるのは、親に何か原因があるのではないか」という、根強い思い込みがあります。親が親自身にかけている呪いでもあります。

 

けれど、ここで一度立ち止まって考えてみてほしいと思います。不登校は、親の関わりが直接の原因になって起きるものではありません。もう何度言っても信じてもらえないのですが、不登校は防ぎようのない、偶発的な現象です。どんな家庭にも、どんな子にも起こります。

 

不登校の原因とは

もちろん、ストレスが少なければ不登校にはなりませんから、ストレスを減らすという視点そのものはとても大切です。ですが、だからといって「何もしないで家にいることが正解だ」とも思いません。交通事故に遭いたくないから一生家に閉じこもる、という発想と同じで、それもまた現実的ではないです。

 

生きていれば、必ず何かが起こります。何かを目指せば、必ずストレスはかかります。他人と関われば関わるほど傷つく可能性は上がります。勉強を頑張るにしても、スポーツに打ち込むにしても、私たちはリスクを引き受けながら生きています。リスクゼロでは生きていけません。大切なのは、ストレスを完全になくすことではなく、そのストレスが限界に達していないかを、ちゃんと見ることだと思っています。

 

一方で、私は「将来のため」という言葉のもとで、今の状態や今のしんどさが軽く扱われてしまうことにも、強い違和感を持っています。

「この高校に合格すれば次はこの大学」と、人生が偏差値と進学率で管理されていく場面を、私は何度も見てきました。受験戦争という言葉さながら、順位や合否が、その子の努力や価値を測る物差しのように扱われていきます。
その過程で、本人の適性や限界、今感じているストレスは置き去りにされ、「今を耐えれば将来が開ける」という言葉だけが前に出る。その考え方自体が、子どもを静かに追い詰めていることも少なくありません。

 

私は、ストレスを避けるために何もしない生き方にも、将来の数字のために今を壊す生き方にも、どちらにも賛成できません。今の負荷を軽視したまま進むことこそが、後になって一番大きな代償を生むと感じているからです。

 

ストレスの限界を見極めることができるのか

ここで、誤解してほしくないことがあります

私たちは子どもたちに過度なストレスがかからないように注視する必要がありますが、心が壊れるほどのストレスに至るかどうかは、事前に正確に予測できるものではありません。その時点では「これくらいは普通」「みんな通ってきた道」と思われていたことが、後から振り返って初めて、限界を超えていたと分かることも多いのです。

 

つまり、ストレスがかかりすぎないように努力はするけれど、完全に防ぎ切ることは不可能。
不登校になったからといって、「親が見誤った」「判断を誤った」と単純に言えるものではありません。結果から原因を探すと、どうしてもそう見えてしまいますが、現場はもっと偶然性が高く、もっと予測不可能です。

 

 

過去と今、今と未来。

不登校の相談で、親御さんの口からよく聞く言葉があります。

一度約束を破ったら、この子は一生約束を守れない人になるのではないか。

一度荒れたら、この先もずっと暴力的なままなのではないか。

今日は起きられなかった、食べられなかった、何もしなかった。そうなると、このまま一生動けないのではないか、将来社会に出られないのではないか、と不安が膨らんでいきます。

 

ここで起きているのは、「今日の出来事」が、いつのまにか「一生の評価」にすり替わってしまうことです。親としては将来を案じているだけなのに、今日の失敗が、その子の人生全体を決めてしまう材料のように扱われてしまう。この視点に入ると、関わりはどうしても重くなります。今ここで正さなければならない、今頑張らせなければ手遅れになる。そう思えば思うほど、言葉は強くなり、家の中の空気は張りつめていきます。

 

結局、これも親にかけられた呪いです。

道を外れた我が子を未来に向かって正しい道に戻さなければならないという思い込みです。

 

 

結局、回復を支えるのは

過去でもなく未来でもなく、「今」です。

大反省会ではなく、今日を楽しめたか。

 

不登校の子は、ひきこもり状態の大人とは違います。成長期にある子どもは、基本的に、何をしなくても成長します。外から見れば止まっているように見えても、体も脳も感情も、内側では確実に動いています。そして、傷ついた心は、安全な環境で安静にしていれば、基本的には自動的に修復されていきます。

 

実際に回復していった親子を見ていると、特別なことをしていないケースがほとんどです。誰かが劇的に変わったわけでも、画期的な方法を取り入れたわけでもありません。ただ共通していたのは、回復の邪魔をしなかった、という点でした。今日できなかったことを将来の問題に結びつけなかった。毎日の状態を評価し断罪しなかった。できないことを今すぐ正そうとしなかった。それだけで、子どもは自分の力で立て直していきます。

 

そして、実際の支援の場で一番効いていると感じるのは、雑談です。

深い話をしなくていい。

解決しようとしなくていい。

傷ついた子たちは、もうすでに、過去の話も未来の話もするだけの元気がないのです。

 

でも、

今のことなら話せます。

YES /NOなら話せます。

お昼はパスタとうどんどっちがいい?

今日は寒いよー!

 

天気の話、食べ物の話、テレビの話。少しコンビニに行く、小さく出かける。そんな意味のないように見える時間が、結果として一番、回復を支えています。雑談が戻ると、生活も自然に動き出します。洗濯物を取り込んでくれたり、宅配便を受け取ってくれたり、片づけを手伝ってくれたりする。無理に「させた」わけではありません。

 

とても会話できない時期もあります。そのときは、無理に話しかけなくていい。混乱期には、何をどうしても落ちていく時期があります。ただ、実際の支援の場では、混乱がずっと続くケースはそう多くありません。回復を邪魔しなければ、混乱期はやがて抜けていきます。

今日の出来事を、一生の話にしないこと。今のストレスを軽く扱わないこと。正解を当てにいかず、回復の邪魔をしないこと。私は、長く不登校の支援を続ける中で、そこが一番大切だと感じています。

 

そして、過度に今の状態の原因を過去に求めない、今の状態を未来に当てはめすぎない。

人生は偶然の積み重ねで予測不可能なものです。原因と結果論にとらわれて、自分に呪いをかけないでください。

親もまた、正解を求めすぎる社会の中で生きてきた一人です。

 

 

 

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