第14回:問1相談者Aの訴えた問題は何か。 | キャリアコンサルタントの夢の形                     1級キャリアコンサルティング技能検定指導ブログ

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「キャリアコンサルタントの夢の形」指導者をめざす受検者の成長と、取得後の夢を現実に変える力を象徴する章です。扉を開き、心を深め、翼を広げた先にあるのは、あなたが描く理想を、確かな形として実現するための道しるべです。

 

今日は10月26日で、受検までは49日となりました。

 

50日を切ることになり、受検者の皆さんは論述試験対策に備えて、5つの問にどのように解答したらいいのか悩ましい日々をお過ごしのことと思います。

 

それで、今回は第14回1級キャリアコンサルティング技能検定実技(論述)試験を使って、解答のヒントになることを、これから5回にわたり皆さんに提供します。

 

 

参考になる方は参考にしてください。

 

 

参考にならない方は参考にしないでください。

 

順番に問1から解答を考えます。

 

問1 相談者Aが訴えた問題は何か、記述せよ。(10点)

 

まず事例を読み、Aがどのような立場で、どのような経緯をたどって相談に至ったのかを整理します。

 

Aは43歳で広告会社に20年間勤務し、2年前にマネージャーとなったが、ベテラン部下に加え新入社員2名の教育とフォローに追われ、自分の本来業務が後回しになった結果、十分な成果を上げられなくなっていました。

 

さらに新人の1名が半年で退職し、上司からの期待を裏切ったと感じたことが、強い自責感と喪失感につながっていると読み取れます。

 

また帰宅が遅くなることが増えたことで、

夫から

「これから子どもたちは大学受験で大事な時期なのに…」

と心配され、家庭との両立に対する葛藤が生じていました。

 

Aが退職を選んだ背景には、仕事の負担感に加え、家庭内での役割責任や夫の期待を優先せざるを得ない状況があったと考えられます。

 

次に退職後の言動に注目すると、

Aは

「自己PRに強い苦手意識を抱いており、不採用が続いている」

「面接を受けると思うと気が重い」

と語っており、再就職活動で自信を喪失している様子がうかがえます。

 

さらに

「こんなに転職が大変ならば仕事を辞めるべきではなかった」

と述べていることから、退職の決断自体に後悔の気持ちを抱いており、キャリアの方向性を見失っていると推測できます。

 

加えて

「バタバタしていて、いまは面談に行けません。また時間ができたら連絡します」

と面談をキャンセルしていることから、年末の慌ただしさや子どもたちの受験準備など、家庭を最優先せざるを得ない状況にあると考えられます。

 

この行動は単なる支援拒否ではなく、母親としての責任を果たそうとするAの価値観の表れであり、その結果として就職活動への意欲が一時的に低下している状況を示しています。

 

これらの要素を整理すると、Aの訴えは単なる転職活動の停滞ではなく、マネージャーとしての役割負担、家庭との両立困難、退職への後悔、そして母親としての責任感の狭間で揺れる心理状態に起因していることがわかります。

 

Aは職場での役割変化に適応しきれず成果を出せなかった自責感、家族の状況に配慮して退職した罪悪感、再就職への自信喪失が重なり、今後の方向性を見失っている状態にあると整理できます。

 

したがって、問1の解答を次のようにまとめました。


「Aは、マネージャーとして新人育成に追われ自分の業務が後回しになり成果が出せず、家庭との両立も困難となったことで退職したが、再就職活動では自己PRに強い苦手意識を持ち、不採用が続き自信を喪失している。今後の方向性を見失い、転職活動に前向きになれないことを訴えている。」

 

まず問1の構造を明確に整理すると、

「相談者Aが訴えた問題」

は、単に一つの困りごとではなく、A自身の過去の出来事(退職に至るまでの経緯)、現状の悩み(自信喪失と活動停滞)、将来への不安(方向性の喪失)が相互に関連して形成されています。


したがって、この三層構造でまとめることで、Aの問題を時間軸に沿って的確に把握できます。

 

過去の出来事としては、

「Aは、マネージャーとして新人育成に追われ自分の業務が後回しになり成果を上げられず、家庭との両立も難しくなったため退職した。」

 

現状としては、

「退職後は自己PRに強い苦手意識があり、不採用が続いたことで自信を失い、面接を受けることにも気が重くなっている。」

 

将来への不安については、

「子どもたちの大学受験を控え、母親として家庭を支えたい気持ちと再就職への焦りの間で揺れながら、今後の方向性を見失い転職活動に前向きになれずにいる。」

 

この解答を導くために、まず事例文中のAの発言と行動を時間軸(過去→現在→将来)に沿って整理します。

 

過去の退職に至るまでの出来事として、職場・家庭での両立困難があります。


Aは

「マネジメント業務に追われ自分の仕事が後回しになった」

「満足のいく結果が出せなくなった」

と語り、マネージャー業務への適応負担と成果の低下に悩んでいました。

 

さらに

「新人の一名が退職した」

ことに責任を感じ、

「期待を裏切った」

と述べていることから、自責感が強く自己評価が低下していました。

 

加えて、

「残業が増え、夫から『これから子どもたちは大学受験で大事な時期なのに…』と心配された」

とあるように、家庭との両立が難しくなり、退職を決断した経緯が読み取れます。

 

これらの事実から、Aは仕事と家庭の板挟みの中で心理的負担を抱え、退職という選択を余儀なくされた過去が浮かび上がります。

 

現状については、自信の喪失と転職活動の停滞として、心理的な閉塞があります。


退職後のAは

「自己PRに強い苦手意識を抱いており、不採用が続いている」

「面接を受けると思うと気が重い」

と述べ、再就職活動での挫折経験により自信を失っています。

 

Bの支援提案に対しても

「自己PRはどうしても苦手」

と繰り返しており、自分の強みを語れない自己概念の低下が見られます。

 

また

「バタバタしていて、いまは面談に行けません」

という発言は、心理的負担の増大とエネルギーの低下を示しており、現時点で転職活動に積極的に取り組む余裕がない状態です。

 

将来については、家庭責任との葛藤とキャリア方向性の喪失があります。


Aは

「子どもたちの大学進学を希望しており、学費を考えると早く再就職したい」

と語っており、家計への責任感と再就職への焦りを同時に抱えています。

 

しかし一方で、受験期の子どもを支えたい母親としての気持ちも強く、

「バタバタしていて今は面談に行けない」

という行動にそれが表れています。

 

さらに

「こんなに転職が大変ならば仕事を辞めるべきではなかった」

との発言から、過去の選択に対する後悔と将来への不安が顕在化しており、今後の方向性を見失っていることが明らかです。

 

このように、Aの訴えは、過去の役割過重と家庭との両立困難(退職の要因)、現在の自己効力感の低下と行動の停滞、そして将来の不安と価値観の葛藤という三層構造によって成り立っています。


したがって、Aの訴えを一文にまとめる際には、この時間的な流れを踏まえ、過去・現在・将来を連続的に表現することで、Aの訴えをより具体的かつ的確に表現できると判断します。

 

しかしながら、過去・将来・現在という時間軸でなければ、相談者Aが現在訴えていることが主訴であることを強調できないし、設問の問に合致しません。

 

それで、構成を過去・将来・現在という時間軸で考えます。

 

問1は

「相談者Aが訴えた問題」

を問う設問であり、論述採点官が求めているのは、

「Aが今まさに訴えていること=主訴」

を的確に捉えることです。

 

したがって、時間軸の構成は

「過去→将来→現在(主訴)」

とし、過去=背景(原因)、将来=不安(予兆)、現在=訴え(主訴)の流れで記述することが最も妥当です。

 

以下に、その構成に基づいて「解答を導く思考過程」と「最終解答」を示します。

 

解答を導く工程としては、まず、事例文を読み込み、Aが現在抱えている主訴を明確にするために、時間軸ごとに内容を整理することです。

 

過去の出来事と背景は、Aはマネージャーに昇進後、

「日中はマネジメント業務に追われ自分の仕事が後回しになった」

「満足のいく結果が出せなくなった」

と語り、成果が上がらない焦りと自責感を抱えていました。

 

さらに

「新人の一名が退職し、期待を裏切ったと思っている」

と述べ、責任感と自己評価の低下が重なっていました。

 

また

「残業が増え、夫から『これから子どもたちは大学受験で大事な時期なのに』と心配された」

とあるように、家庭との両立困難も重なり、退職に至った経緯が見えます。

 

これがAの抱える問題の基礎的背景です。

 

将来の不安と葛藤は、退職後、Aは

「子どもたちは大学進学を希望しており、学費を考え、早く再就職したい」

と話しており、家庭の経済的責任を果たす必要性を感じています。

 

しかし

「自己PRが苦手で不採用が続いている」

「面接を受けると思うと気が重い」

と語り、再就職への自信を失っています。

 

さらに

「こんなに転職が大変ならば仕事を辞めるべきではなかった」

と後悔し、将来の見通しを立てられず不安を募らせています。

 

この段階で、Aは

「働きたいが自信が持てない」

「母親としても家計を支えたいが行動できない」

という二重の葛藤に陥っています。

 

現在の主訴は、Aは

「バタバタしていて、いまは面談に行けません。また時間ができたら連絡します」

と連絡し、面談をキャンセルしています。

 

この行動から、子どもたちの受験期という家庭環境の変化と、年末の慌ただしさを背景に、母親として家庭を優先する気持ちが強く、心理的にも転職活動にエネルギーを向けられない状態が推測されます。

 

つまりAが現在訴えている問題(主訴)は、

「再就職したい気持ちはあるが、自信を失い、家庭を優先せざるを得ない状況の中で、今後どう動けばよいか迷っている」

という心の停滞と迷いです。

 

最終解答を(過去→将来→現在の時間構成)で示します。

 

「Aは、マネージャーとして新人育成に追われ自分の業務が後回しになり成果が出せず、家庭との両立も難しく退職した(過去)。子どもたちの大学受験を控え、早く再就職したいが自己PRが苦手で不採用が続き将来に不安を感じている(将来)。家庭を優先せざるを得ない中で自信を失い、今後どう進めばよいか迷っていることを訴えている(現在・主訴)。」

 

以上の解答は、仕事についての過去の出来事に端を発している構成になっています。

 

さらに、キャリア形成としての転職活動に焦点をあてた解答を考えます。

 

(過去):Aはこれまで、子どもたちの大学受験を控え、早く再就職したいが自己PRが苦手で不採用が続き自信を失っている。

(将来):一方でこれから、自分のキャリア形成をどう描けばよいか展望が見えず不安を抱いている。

(現在の主訴):そのため現在、転職活動を続けるか家庭を優先するか判断できず迷っていることを訴えている。

 

設問の意図との整合性を考えます。

 

「訴えた問題」は現在の主訴であるため、過去・将来を背景情報とし、結論部で現在の心理状態を明確に描く構成としました。

 

内容面の妥当性を事例の根拠との対応を示します。

 

「子どもたちの大学受験を控え」

→「夫から『これから子どもたちは大学受験で大事な時期なのに…』と心配された」

→家族責任の重さ・家庭優先の背景が的確に反映されています。

 

「早く再就職したいが自己PRが苦手で不採用が続き自信を失っている」

→「自己PRに強い苦手意識を抱き、不採用が続いている」

→「面接を受けると思うと気が重く…」

→退職後の活動停滞を正確に要約しています。

 

「自分のキャリア形成をどう描いていったらいいのか展望が見えず不安になっている」

→「こんなに転職が大変ならば仕事を辞めるべきではなかった」

との後悔と将来の不安から、キャリア形成への展望喪失を簡潔に表現しています。

 

「転職活動を進めるべきか、一時的に休止して家庭を優先するか迷っている」

→「バタバタしていて、いまは面談に行けません」から推察される心理的迷いの表現は推測的です。

→でも、文脈上自然で相談者Aの本音(深層心理)を明確にしており、十分に根拠があります。

 

いずれも事例に忠実に分析していますし、根拠に基づく再構成として非常にバランスが取れていると思います。

 

次回は、問2の設問について、解答を考えます。

 

ご期待ください。