今日は、第11回1級キャリアコンサルティング技能検定実技(論述)試験事例4選択問題の問1の解答を考えてみます。
新書式に基づいて、相談者Dを相談者Aと読み替えます。
また、内定をもらった2つの会社
A社(地元の信用金庫)をC社、
B社(イベント企画のベンチャー企業)をD社に
読み替えます。
問1 相談者Aが訴えた「問題」は何か、記述せよ。
では、Aさんが抱えている全ての問題を挙げると、以下のようになります。
①内定先の選択
C社(地元の信用金庫)とD社(イベント企画のベンチャー企業)のどちらに決めるかで迷っている。
C社は家族の縁故によるもので、D社は自分の興味に合った仕事を提供している。
②家族からのプレッシャー
祖父や父親からの期待やプレッシャーにより、C社の選択を考えているが、自分の興味やキャリア志向と一致しないため葛藤している。
③自己認識の不一致
保育専攻でありながらも、保育関連の仕事には興味がなく、イベント企画などクリエイティブな仕事に興味を持っているが、専門性との不一致に悩んでいる。
④将来のキャリアの方向性
C社の安定性や給与の良さと、D社のクリエイティブな仕事に対する興味とのバランスをどう取るかで悩んでいる。
⑤情報の不完全さと不安
D社からの内定承諾書の提出期限が迫っており、選択を急がなければならない状況で不安を感じている。
また、実習が終わった後の進展や決断についての報告がないことも含め、不透明さが不安を引き起こしている。
⑥選択による将来のリスク
C社の縁故による内定があることで、将来的に辞める場合のリスクや家族との関係への影響を考えており、これも選択に影響を与えている。
これらの6つの問題が絡み合い、Aさんがキャリア決定において複雑な状況に直面しています。
この中で、相談者Aが重要だと感じている問題は、以下の2つです。
内定先の選択
Aさんは、C社とD社のどちらに就職するかで迷っています。これは、将来のキャリアに大きな影響を与える重要な決断であり、Aさんにとって非常に重要な問題です。
家族からのプレッシャー
特に祖父や父親からの期待やプレッシャーがAさんにとって大きな問題です。
以上のことから、次のような問1の解答が考えられます。
相談者Aが抱えている主な問題は、二つの内定先(C社とD社)の選択に関する決断に迷っていることです。特に、C社は家族の縁故で内定を得ており、地元の有力企業で安定した職場である一方で、D社は自分の興味があるイベント企画の仕事であり、クリエイティブな業務に対する魅力を感じています。内定を得たことで自信を持ったものの、どちらを選ぶべきか、将来的な安定性や興味・能力のマッチングをどう考えるかについて迷っています。
では、相談者Aが苦痛や不安を引き起こしている問題は何でしょうか。
相談者Aが苦痛や不安を引き起こしている問題は以下の2つです。
家族からのプレッシャー
祖父や父親からの期待により、C社を選ばなければならないというプレッシャーを感じていることが、Aさんにとって大きなストレスや不安を引き起こしています。
特に、祖父がC社の上層部との縁故関係を持っていることが、Aさんにとって選択の自由を制限されているように感じさせています。
将来のキャリア選択の不安
D社に強い興味がありながらも、C社の安定性や給与の良さとの間で迷っていることが、将来のキャリア選択に対する不安を引き起こしています。
特に、自分の興味と家族の期待が一致しないことが、Aさんの心の中で大きな葛藤を生んでいます。
相談者Aが積極的に取り組もうとする問題は何でしょうか。
相談者Aが積極的に取り組もうとしている問題は、内定先の選択です。
AさんはC社とD社のどちらに就職するかを早く決めたいと考えており、6月から始まる保育実習の前に結論を出す必要があると認識しています。
この問題に対して、Aさんは積極的に取り組もうとしており、キャリアコンサルタントにも相談しています。
相談者Aが無理なく取り組める問題は何でしょうか。
相談者Aが無理なく取り組める問題は、保育実習への参加です。
Aさんは保育関係には就職しないと決めていますが、保育実習にはきちんと参加する意向を示しています。
これは、Aさんが既に決意しており、計画通りに進められることから、無理なく取り組める問題と考えられます。
相談者Aがより難しい問題と考えている問題は何でしょうか。
相談者Aがより難しい問題と考えているのは、内定先の選択です。
特に、D社に強い興味がありながらも、C社の安定性や家族からの期待との間で迷っている点が、Aさんにとって非常に難しい問題と感じられています。
どちらを選ぶべきかという決断が、将来のキャリアや家族との関係にも影響を与えるため、この問題はAさんにとって特に困難なものです。
相談者Aが抱えている問題状況全般の改善につながると考えている問題は何でしょうか。
相談者Aが抱えている問題状況全般の改善につながると考えている問題は、家族との話し合いです。
Aさんが家族、とりわけ祖父や父親ときちんと話し合い、自分の気持ちや意向を理解してもらうことができれば、内定先の選択に対するプレッシャーが軽減される可能性があります。
家族との対話を通じて、Aさん自身が納得できる決断をするためのサポートを得られれば、他の問題にも良い影響を与え、全般的な問題状況の改善につながると考えられます。
相談者Aはどの問題に絞り込んで相談したいと思っているでしょうか。
相談者Aが相談したいと思っている問題は、内定先の選択です。
AさんはC社とD社のどちらに就職すべきか迷っており、この決断が将来のキャリアや家族との関係に大きく影響すると感じています。
そのため、最も重要な問題として、内定先の選択に絞って相談したいと考えていると思われます。
キャリアコンサルタントは、相談者Aの訴えた問題をどのように見立てたのでしょうか。
キャリアコンサルタントは、相談者Aが訴えた問題を以下のように見立てています。
内定先の選択に迷っている問題
AさんがC社とD社のどちらに就職すべきか迷っていることを、キャリアコンサルタントは重要な問題として捉えています。
特に、AさんがD社に興味を持ちながらも、家族や祖父の期待からC社に対するプレッシャーを感じている点を理解しています。
家族との関係に悩んでいる問題
Aさんが祖父からの縁故でC社の内定を得たことに対して、祖父や家族にどう説明するか悩んでいることを、キャリアコンサルタントは重要な要素として見ています。
家族とのコミュニケーションや期待に応えることが、Aさんにとって負担になっていることを認識しています。
自身のキャリア選択に対する不安
AさんがD社のベンチャー企業に対する興味を持ちながらも、その選択が自分にとって本当に正しいのか、自信が持てないでいることを理解しています。
この不安が、最終的な決断を難しくしていると見立てています。
キャリアコンサルタントは、これらの問題を総合的に見立て、Aさんが納得のいく決断をするために家族と話し合うことや、最終的には自分で決断することの重要性を強調しています。
では、キャリアコンサルタント視点で解答してみます。
Bは、AさんがC社とD社のどちらに就職すべきか迷っていることを主要な問題として捉えています。AさんはD社のベンチャー企業に興味を持ちながらも、家族や祖父の期待からC社に対するプレッシャーを感じています。また、自身のキャリア選択に対する不安が決断を難しくしており、家族とのコミュニケーションを通じて自分で納得のいく決断をすることが重要だと見ています。
では、相談者Aが保育実習も既に終わっていると思うが、その後の報告はない。ということについて、キャリアコンサルタントはどのように捉えているのでしょう。
キャリアコンサルタントは、相談者Aが保育実習を終えた後の報告がないことを以下のように捉えています。
実習の重要性
保育実習はAさんの専門性を高める重要な経験であり、その後の報告がないことで、実習がAさんのキャリア選択にどのように影響を与えたかが不明である点を懸念しています。
進捗確認の不足
実習後の報告がないことは、Aさんがキャリア選択についての進捗や考え方に変化があった場合に、その状況を把握できないことを意味します。
このため、相談の進行状況や実習の影響を理解するためのフィードバックが必要と考えています。
支援の必要性
Aさんが実習を終えた後も報告がないことから、実習に関する体験や感想、キャリアに対する考え方が変わった可能性があるため、追加の支援やアドバイスが必要であると考えています。
キャリアコンサルタントは、実習後のAさんの状態や考え方を把握し、適切な支援を行うために報告を待つ必要があると認識しています。
では、なぜ、相談者Aは、キャリアコンサルタントにその結果を報告していないのでしょうか。
相談者Aがキャリアコンサルタントに内定先の選択結果を報告していない理由には、以下のような可能性が考えられます。
決断の不確実性
Aさんがまだ最終的な決断を下していない可能性があります。
内定先の選択に関する迷いや不安が解消されていないため、決断が固まるまで報告を控えているかもしれません。
家族との調整
Aさんが家族や祖父との関係を調整する必要がある場合、家族の意向や期待と自分の希望との間での調整が完了していないため、結果を報告する準備が整っていない可能性があります。
実習の影響
保育実習が終了しても、その後の実習結果や体験がキャリア選択にどのように影響を与えたかについての反省や整理ができていない場合、まだ報告する段階に至っていないかもしれません。
心理的な障壁
Aさんが内定先の選択に対して心理的なプレッシャーや不安を感じており、その結果についてキャリアコンサルタントに報告することに対してためらいがある可能性も考えられます。
キャリアコンサルタントへの依存
Aさんがキャリアコンサルタントからのさらなるアドバイスやサポートを待っている場合、報告を遅らせることで追加の支援を受けたいと考えているかもしれません。
これらの理由により、Aさんが内定先の選択結果をキャリアコンサルタントに報告していない可能性があります。
次に、事例指導者視点では、相談者Aの訴えた問題をどのように見立てるといいのでしょうか。
相談者Aの訴えた問題を以下のように見立てます。
内定先の選択の迷い
Aさんは、C社(地元の信用金庫)とD社(ベンチャー企業)のどちらに就職すべきかで迷っています。
C社は祖父の縁故による内定であり、家族からの期待が強い一方で、D社には自分が興味を持つ仕事と職場環境があります。
この選択は、Aさんの将来のキャリアと人生設計に大きな影響を与えるため、最も重要な問題です。
家族の期待との葛藤
Aさんは、家族、特に祖父の期待に応えるべきか、それとも自分の希望を優先するべきかで葛藤しています。
祖父の紹介で得たC社の内定を受けることは、家族の期待に応えることになりますが、自分自身のキャリア希望とは異なります。
この葛藤は、Aさんにとって大きなストレス源です。
自己理解の不確かさ
Aさんは、保育専攻を選んだものの、実習を通じて自分に適性がないと感じ、今はイベント企画のような別の仕事に興味を持っています。
しかし、自分の適性や本当にやりたいことが何なのか、まだはっきりとは見えていないことが、決断をさらに難しくしています。
将来の安定性への不安
Aさんは、D社のようなベンチャー企業に対して興味を持ちながらも、その選択が将来的に安定しているのか不安を感じています。
一方で、C社は地元の有力企業であり、安定性が高いと考えられます。この安定性と自分の興味との間で、Aさんは迷っています。
家族とのコミュニケーション不足
Aさんは、D社の内定を家族に伝えておらず、家族とのコミュニケーションが不足している点も問題です。
特に、祖父に対してどう説明すればよいのか悩んでおり、家族との話し合いが進んでいないことが、Aさんの不安を増大させています。
これらの問題を総合的に見ると、Aさんは内定先の選択に悩むだけでなく、家族との関係や自分自身のキャリアに対する理解の不足、将来の不安に直面していることがわかります。
これらが複雑に絡み合って、Aさんの決断を難しくしていると見立てられます。
このことから、事例指導者視点での解答例は以下の通りです。
相談者Aの訴えた問題は、内定先の選択に悩むこと、家族の期待との葛藤、自己理解の不確かさ、将来の安定性への不安、家族とのコミュニケーション不足です。特に、C社とD社の選択で迷い、家族の期待と自己の希望が対立。実習後の適性や本当にやりたいことが不明確で、D社の将来性に不安を抱え、家族への報告や説明が進んでいない状況が、決断を難しくしています。
また、相談者Aが一番訴えたいと思っている問題は何でしょうか。
相談者Aが一番訴えたいと思っている問題は、「内定先の選択に迷っている問題」です。
以下の理由から、この問題がAさんにとって最も重要で訴えたい問題と考えられます。
明確な焦点
AさんはC社とD社のどちらに就職すべきか迷っており、内定の選択が彼女のキャリアに大きな影響を与えるため、この問題が最も重視されています。
感情的な葛藤
AさんはD社のベンチャー企業に興味を持ちながらも、家族や祖父の期待からC社に対するプレッシャーを感じており、感情的な葛藤が強く、この問題に対する悩みが深いです。
決断の難しさ
Aさんはどちらの選択が自分にとって最良か自信が持てず、この決断の難しさが主要な悩みの一つです。
これらの理由から、Aさんが最も訴えたい問題は、内定先の選択に関する悩みであると考えられます。
相談者Aが最も訴えたい問題は「内定先の選択に迷っていること」です。C社とD社の選択がキャリアに大きな影響を与えるため、Aさんにとって非常に重要です。D社のベンチャー企業に興味を持ちながら、家族や祖父の期待からC社に対するプレッシャーを感じており、この感情的な葛藤が深刻です。また、どちらの選択が最良か自信が持てず、決断が難しい状況が続いています。
これまでの解答例からは、「内定先の選択に迷っていること」のみが考えられます。
しかし、このような解答例では表面的で、相談者Aの個別的な問題を捉えることができていません。
相談者Aが保育実習を通じて得た体験や自己認識がキャリア選択に影響を与えた結果、内定先の選択に加えて保育士としてのキャリアビジョンを再考し、内定先を断るかどうかで悩んでいるという見立ては、いかがでしょう。
実習経験の影響
保育実習を通じて、Aさんが保育士としての適性や興味についての深い理解を得た可能性があります。
この体験がキャリア選択に影響を与え、内定先選びに対する悩みが複雑化したと考えられます。
キャリアビジョンの再考
実習の結果、Aさんが保育士のキャリアビジョンを再考し、新たな方向性を見出した可能性があります。
このため、内定先の選択肢に加えて、保育士のキャリアについても再評価する必要が生じたかもしれません。
選択肢の増加
実習を通じて保育に対する考え方が変わった結果、内定先の選択肢を再度検討し、場合によっては現在の内定先を辞退することも視野に入れていると考えられます。
報告の遅れ
保育実習がキャリア選択に与えた影響を整理しきれていないため、まだ報告する段階に至っていない可能性があります。
これは、自身のキャリア選択に対する明確な方向性が決まっていないことが影響しているかもしれません。
この見立てに基づけば、相談者Aが内定先の選択に加えて、保育士としてのキャリアビジョンを再考し、結果的に内定先を断る選択肢も含めて悩んでいるという状況は十分に理解できます。
この見立てに基づいた解答例を考えてみます。
Aは、保育実習を通じてキャリアビジョンが変わり、内定先の選択に加えて保育士としての方向性を再考していることです。実習体験がキャリア選択に影響を与え、内定先を断るかどうかで悩んでいます。報告が遅れているのは、実習の影響を整理しきれていないためであり、自身のキャリアに対する明確な方向性が決まっていない状況です。
いかがでしょうか、このように思考を論理的に展開していくと、表面的な問題だけではなく、相談者Aの深層心理に基づいた解答例に行きつくことができます。
この解答例は正答ではなく、タンタンミーティングにおける受検者とのコミュニケーションから、考えられたものです。
集団で対策講座を受講しても、このように思考を深化させることは、物理的に無理があります。
ZOOMによる個別指導には、このような利点が得られます。