今回は、第11回事例3を用いて、次の問5の設問の意味と問題作成者の意図について考えることから始めます。
問5 問4で挙げた事例相談者Bの「問題」だと思うことの中から優先するものを取り上げ、具体的な指導方法を記述せよ。(25点)
この問いの意味と問題作成者の意図は何か考えます。
問いの意味
この問いは、問4で挙げた事例相談者Bの対応における複数の「問題」の中から、特に重要で優先的に解決すべき問題を選び出し、それに対する具体的な指導方法を記述することを求めています。
これは、受検者が問題を識別するだけでなく、その問題に対して効果的な対応策を提案できるかどうかを評価する設問です。
問題作成者の意図
問題の優先順位付け能力の評価
この問いは、受検者が複数の問題の中から最も影響力が大きい、または解決すべき優先順位の高い問題を選び出す能力を評価しようとしています。
事例相談者Bがキャリアコンサルタントとして、限られた時間やリソースの中で相談者Aに効果的に支援を行うためには、事例相談者Bの問題の優先順位を適切に判断することが求められます。
具体的な指導能力の評価
選び出した問題に対して、どのように指導を行うかという具体的な対応策を提案させることで、受検者の指導スキルや現実的な問題解決能力を評価しようとしています。
具体的な指導方法を考え、それを記述することで、受検者が理論と実践をどのように結びつけているかを確認します。
理論的な知識と実践的な応用力のバランス
問4での問題把握に続き、問5ではそれに対する具体的な指導方法を求めることで、受検者が理論的な知識だけでなく、実際の場面でどのように応用するかを問う意図があります。
これにより、受検者にキャリアコンサルタントの専門家、指導者としての実践力が評価されます。
この設問は、受検者の総合的な問題解決能力と指導力を評価するために設定されています。
では、この問いの意味と問題作成者の意図に基づいた解答例を考えます。
相談者Aのキャリア希望に対する共感的理解の不足です。具体的には、Bに共感的傾聴の技法を強化する指導を行います。まず、共感的傾聴の基本原則や技法を再確認し、Aの「ゲームクリエイターになりたい」という希望に対して、どのように感情に寄り添い、理解を示す応答ができるかをロールプレイングを通じて練習します。Bが適切な応答をするために、Aの言葉や非言語的な行動をしっかりと観察し、共感を示すフレーズを用いることを指導します。さらに、Bが自分の感情や判断を一時的に保留し、Aの視点に立って考える習慣を身につけるためのフィードバックを繰り返し行い、Aとの信頼関係を築く基盤を強化することで、指導します。
この解答例は、共感的理解に特化した具体的な指導方法を示したものです。
この次に、事例相談者Bの対応の問題で問題把握を優先した場合には、どのような解答ができるか考えてみます。
事例相談者Bの対応における問題把握を優先した場合の解答は以下のようになります。
Bの対応での問題は、Aのキャリア希望に対する問題把握の不足です。
具体的には、BがAの「ゲームクリエイターになりたい」という希望を十分に理解し、共感的に支援するための指導が必要です。
まず、Aのキャリア希望やその背景にある動機を深く掘り下げるために、Bに対して質問技法を強化する訓練を行います。
Aがゲームクリエイターを目指す理由や情熱、過去の経験などを詳細に引き出す質問を行い、その回答からAのキャリア目標の核心を把握する方法を指導します。
次に、Aがどのようなスキルや経験を持っているか、またそれに対してどのようなキャリアパスが適切かを分析し、その情報をもとに現実的なキャリアプランを一緒に検討します。
これにより、Aが抱える課題や不安を正確に把握し、それに基づいた具体的なアクションプランを提案することが可能となります。
最後に、Aのキャリアに対する理解を深めるために、Aが進行中のキャリアプランに対する反応を確認しながら、問題解決の方向性を調整する方法を学ぶ必要があります。
これにより、Aの希望に基づいた支援がより効果的に行えるようになります。
この指導ステップをまとめてみます。
Bの問題は、相談者Aのキャリア希望に対する問題把握の不足です。BはAの「ゲームクリエイターになりたい」という希望を十分に理解するため、共感的な質問技法の強化が必要です。具体的には、Aの動機や背景を掘り下げる質問を行い、Aのスキルや経験を分析して現実的なキャリアパスを共に検討します。また、現職のキャリアプランに対する反応を確認し、フィードバックを通じて問題解決の方向性を調整することが重要です。これにより、Aの希望に基づいた効果的な支援が可能になることを指導します。
次に、意思決定支援不足を指導するプランを考えてみます。
事例相談者Bの問題として、Aに対する意思決定支援が不十分である点を指摘した場合、どのような問題点があるか説明します。
問題点の詳細説明
Bの対応が不十分な理由は、Aのキャリア選択に対する具体的な情報提供と選択肢の分析が不足している点にあります。
Aは現職とゲームクリエイターという2つの異なるキャリアの選択肢に迷っているにもかかわらず、Bはこれらの選択肢に対する深い分析を行わず、Aにとって最適な選択を導くための支援が不足していました。
このような状態では、Aは意思決定を行うための十分な情報を持っておらず、不安や迷いを抱いたまま、適切な行動に移れない可能性があります。
指導方法の具体化
まず、Bには、ゲームクリエイターとしてのキャリアパスについての具体的な情報収集を指導する必要があります。
例えば、ゲーム業界の成長性や必要なスキルセット、成功事例などを調査し、それらをAに提供することです。
また、現職の利点や欠点についても同様に具体的に分析し、Aに提供します。
この情報は、Aが現在の状況と比較しながら、ゲームクリエイターへの道が本当に自分に適しているかどうかを判断するために不可欠です。
次に、意思決定支援ツールの活用を指導します。
例えば、簡単なプロコンリスト(メリット・デメリットのリスト)や意思決定マトリックスを用いて、Aが各選択肢のリスクと利益を視覚的に整理できるように支援します。
これにより、Aは自身の価値観や優先順位に基づいて、どのキャリアパスが最も自分に合っているかを明確に理解できます。
最後に、実行可能な行動計画の提案が重要です。
Bには、Aが選択したキャリアパスに基づき、どのようなスキルを習得すべきか、どのような準備を行うべきか、具体的なステップを提案するよう指導します。
例えば、ゲームクリエイターを目指すのであれば、具体的な学習プログラムや業界のネットワーキングイベントに参加することを勧めるなどの行動計画を示します。
このように、情報提供、リスク評価、行動計画の3つの柱を通じて、BがAの意思決定を効果的に支援できるように指導することが求められます。
例えば、意思決定支援不足を問題とした解答例は以下の通りです。
Bの問題は、現職とゲームクリエイターの選択に迷う相談者Aへの意思決定支援が不十分である点です。具体的には、Bは選択肢の詳細な分析や比較を行わず、Aのキャリア選択に対する具体的な情報提供が不足しています。指導方法としては、まず、ゲームクリエイターになるための具体的なステップと現職の利点・欠点を明確にし、情報を整理して提示することが必要です。さらに、意思決定支援ツールを活用し、Aが自身の状況に合ったキャリア選択を行えるように、選択肢ごとのリスクと利益を明確に評価し、実行可能な行動計画を提案することが求められます。このことにより意思決定支援のアプローチを指導します。
次に、事例相談者Bに対してジェラットの意思決定システムを用いた指導方法としての解答例を考えます。
まず、ジェラットの意思決定システムを活用して事例相談者に指導する際のポイントは以下の通りです。
予測システムの活用
情報収集の指導
相談者に対して、ゲームクリエイターと現職それぞれの職業に関する詳細な情報を収集させます。
具体的には、必要なスキル、業界のトレンド、将来のキャリアパスを調査します。
結果予測の実施
各選択肢が相談者に与える具体的な結果を予測し、どのようなメリットやデメリットがあるかを明確にします。
これには、将来的な職業的成功、生活の安定性、個人的な満足度などを含めます。
価値(評価)システムの導入
価値観の確認
相談者が自身の価値観、興味、長期的な目標を整理し、それらが各選択肢にどの程度一致しているかを評価します。
たとえば、ゲームクリエイターとしてのクリエイティブな挑戦が相談者の興味に合致するか、安定した現職が経済的安心を提供するかを確認します。
優先順位の設定
収集した情報をもとに、どの選択肢が相談者の価値観に最も合致しているかを判断し、どの要素が最も重要かを明確にします。
基準(決定)システムの適用
評価基準の設定
相談者が選択肢を評価するための基準を設定します。
基準には、職業の安定性、成長機会、個人のスキル適合度などが含まれます。
最終決定の支援
設定した基準をもとに、どの選択肢が最も適切かを決定します。
これには、選択肢ごとのリスクと利益を比較し、最も納得できるキャリアパスを選びます。
これをまとめると、相談者Aが「ゲームクリエイター」または「現職」の選択に迷っている場合、Bはまず、各職業のスキル要件や市場の動向を予測し、Aがどのようなキャリア成果を得られるかを説明します。次に、Aの価値観や目標に合致するかを評価し、どの選択肢がより自分に合っているかを判断します。最後に、評価基準に基づいて最終的な選択を支援し、実行可能なプランを提供します。
では、ジェラットの意思決定理論に基づいた解答例は以下の通りです。
Bの問題は、現職とゲームクリエイターの選択に迷う相談者Aへの意思決定支援が不十分である点です。Aが「ゲームクリエイター」と「現職」のどちらを選ぶべきかを考える際に、Aがゲームクリエイターになるために必要なスキルや市場の動向、現職で得られるキャリアパスを調査し、それぞれの選択肢が将来どのような結果をもたらすかを具体的に予測させます。次に、これらの結果がAの価値観や目標にどれほど一致するかを具体的に評価します。例えば、クリエイティブな仕事がAの興味にどれほど合致するか、あるいは安定した収入がどれだけ重要かを確認します。最後に、これらの評価結果を基に、Aが最も満足できるキャリア選択を行うための基準を設定します。このプロセスを通じて、BがAの意思決定を効果的にサポートできるよう指導します。
次に、ヒルトンの意思決定モデルを用いて、問5の解答を考えます。
このモデルは、フェスティンガーの認知的不協和理論に基づき、意思決定プロセスにおける不協和の解消に焦点を当てています。
この理論の意味と意図は以下の通りです。
理論の意味
不協和の解消
ヒルトンのモデルでは、個人が持つ自己概念や希望、期待と、外界から得られる情報との間に不一致(不協和)が生じるとされています。
この不協和は、意思決定のプロセスで重要な役割を果たします。
不協和が生じた場合、個人はそれを解消するために、自己の前提や信念を再検討するか、異なる選択肢を探索することになります。
前提の修正
不協和が小さい場合や前提の修正が可能であれば、個人は自己の前提を調整して新しい情報と一致させます。
これにより、自己概念と外界の情報との整合性を図ります。
逆に、前提の修正が困難な場合には、他の選択肢を探し、別の情報を求めることで不協和を解消しようとします。
理論の意図
意思決定の最適化
この理論の意図は、意思決定の過程を理解し、個人が直面する不協和を認識することで、より適切な意思決定を促すことです。
個人が自分の前提や信念と新しい情報をうまく調整することで、より納得のいく決定ができるようになります。
不協和の管理
不協和を管理することで、個人は決定過程でのストレスや混乱を軽減し、最終的にはより安定した選択ができるようになります。
これにより、個人の自己一致感を高め、選択に対する満足度を向上させることができます。
この理論は、特にキャリア選択や大きなライフイベントにおいて、個人がどのように情報を処理し、意思決定を行うかを理解するための有力なフレームワークを提供します。
では、このヒルトンの意思決定プロセスを用いて、事例相談者Bの相談者Aに対する対応の問題を改善する指導方法を解答します。
Bの問題は、現職とゲームクリエイターの選択に迷う相談者Aへの意思決定支援が不十分である点です。相談者Aがゲームクリエイターと現職の携帯ショップの正社員の間で意思決定を行うためには、ヒルトンの意思決定モデルを活用します。まず、各職業のスキル要件やキャリア展望を整理し、自己概念と職務内容との不協和を評価します。次に、前提が修正可能かを検討し、現職でのキャリアパスやゲームクリエイターとしての目標を再評価します。その後、各職業のメリット・デメリットを比較し、最も目標に合致する選択肢を決定します。この意思決定プロセスにより、Aが自分の価値観に基づいた最適なキャリア選択ができるよう支援できることに気づきを促し、指導します。
以上のように、事例相談者Bの対応の問題を改善する指導方法を、様々な角度と理論から考えてみました。
このようなトレーニング方法を論述問題に関して受検者が取り入れることで、面接試験における実践的な事例指導の参考になるのではないかと考えます。