今日は、第11回1級キャリアコンサルティング技能検定実技(論述)試験事例2選択問題において、《事例相談者Bの相談者Aへの対応について「問題」だと思うことは何か。事例に基づいて記述せよ。》について、解答を考えていきます。

 

第13回の問4は次の通りです。

 

問4 事例相談者Bの相談者Aへの対応について「問題」だと思うことは何か。事例に基づいて記述せよ。

 

また、第12回必須問題問2と選択問題問1の問題は以下の通りです。

 

【必須問題】

問2 この事例相談者の相談者Aへの対応について、どのような問題があるか、あなたの考えを記述せよ。

 

【選択問題】

問1 この事例相談者が抱えている問題は何か、あなたの考えを記述せよ。

 

この問4の解答をする場合、第12回から第13回の書式変更に対する問題作成者の意図は、どのようなとこにあるのか考えてみます。

 

第13回からの解答書式の変更には、いくつかの意図が考えられます。

 

統合的な理解の促進

第12回までの設問では、相談者Aの問題点と事例相談者Bの対応に関する問題が別々に問われていましたが、新しい書式ではこれらが統合され、受験者が事例全体をより総合的に理解し、関連する問題を一貫した視点から分析できるようになっています。

 

これにより、受験者が複数の視点を統合して考察する能力が評価されます。

 

実務的な対応能力の評価

実際のキャリアコンサルタント業務では、問題の発見とその解決策を分離することなく、一貫して対応することが求められます。

 

新しい設問形式は、受験者が実務において必要なスキル、すなわち問題の全体像を把握しつつ、それに対する対応策を即座に考え出す能力を測る意図があると考えられます。

 

時間効率の向上

問題点の把握と解決策の提案を一度に行うことを要求することで、従来の120分から80分にする解答時間の効率化が図られている可能性があります。

 

受験者がより短時間で効果的に問題を分析し、解答をまとめる能力が求められます。

 

思考の深さの評価

問題の統合により、受験者が事例に対してより深い洞察を持ち、複雑な問題をより深く理解し、その解決策を提案できるかどうかが評価される意図があります。

 

これにより、より高度な分析力が求められるようになります。

 

これらの要因から、新しい解答書式は、受験者がキャリアコンサルタントとしての総合的な問題解決能力を持っているかどうかをより適切に評価するための変更であると考えられます。

 

次に、問4 事例相談者Bの相談者Aへの対応について「問題」だと思うことは何か。事例に基づいて記述せよ。 この解答例を考える場合、どのようなことに留意したらいいのか考えます。

 

問4の解答例を考える際には、以下のポイントに留意することが重要です。

 

事例の具体的な内容を把握する

事例の内容を詳細に読み取り、BがAに対してどのような対応をしたのか、またその対応がどのようにAに影響を与えたのかを理解します。

 

題」としての要素を明確にする

Bの対応において、Aの問題解決を妨げた要因や、不十分な点を明確に特定します。

 

たとえば、共感的理解の欠如、具体的なアクションプランの欠如、意思決定のサポート不足などが挙げられます。

 

Aのニーズや視点を考慮する

Aがどのような問題を抱え、どのようなサポートを必要としていたのかを明確にし、その視点でBの対応が適切であったかを評価します。

 

Aの発言や行動から、Aの気持ちやニーズを推測することが求められます。

 

信頼関係の構築の重要性

Bの対応がAとの信頼関係を築けたか、またはそれを損なったかどうかを評価します。

 

Aが次回の面談をキャンセルした原因として、Bの対応がAの信頼を得られなかった点を考慮します。

 

対応の結果に焦点を当てる

Bの対応がAの問題解決にどのような結果をもたらしたか、あるいはもたらさなかったかを考慮します。

 

問題解決に寄与しなかった要因を明確に示すことが重要です。

 

具体的な改善点を考察する

Bがどのように対応すべきだったか、具体的な改善点を考え、それがなぜ重要なのかを説明します。

 

これにより、Bの対応の問題点を明確に指摘し、より効果的な支援方法を提案します。

 

これらのポイントを踏まえて解答例を作成すると、Aの視点に立った、具体的で効果的な改善策を提案できる解答が導き出せます。

 

それを考慮して、この解答例を作成してみます。

 

【問4:解答例1】

Bの対応問題は、Aのニーズや感情に対する共感的理解が不足していたことである。Aは夫の転勤によってキャリアと子育ての両立に悩んでおり、現状に対する不安を抱えていたが、BはAの発言に対し、表面的な解決策として「ワンオペ育児で頑張るしかない」と提案した。この対応は、Aの感情を軽視し、内面的な不安や悩みを深く理解しようとする姿勢が欠如していたことを示している。その結果、Aとの信頼関係が築かれず、次回の面談をキャンセルされた可能性がある。BがAの問題に共感的に対応し、Aが自分の感情や悩みを自由に表現できるような環境を提供していれば、より効果的な支援が可能だったと考える。

 

この解答例では、Bの対応の「問題」として、共感的理解の欠如を指摘し、それがAとの信頼関係にどのように影響を与えたかを具体的に説明しています。

 

これにより、Aの視点に立った改善点が明確になります。

 

ところで、この解答例には、相談者Aが夫の転勤先についていくと発言したことに対する対応の問題がありません。

 

相談者Aが夫の転勤先についていくと発言したことに対する対応に関しても、事例相談者Bの対応には問題が考えられます。

 

この点を反映した解答例を以下のように解答します。

 

【問4:解答例2】

Bの対応問題は、Aの夫の転勤先に同行するという選択肢に対する十分な対応が欠けていたことである。Aは「子供たちのことを考えると一緒に転勤先に行った方がいいのか」と発言したが、Bはその発言に対して「3年間はワンオペ育児で頑張るしかない」という表面的な提案をした。この対応は、Aが抱えている家庭とキャリアのバランスに対する深刻な悩みを軽視しており、Aが感じている不安や葛藤に対する共感的な理解が不足していた。また、Aが夫の転勤先に同行するかどうかという根本的な問題に対して、Bは明確な支援を提供できておらず、その結果、Aとの信頼関係が築けず、次回の面談がキャンセルされる事態を招いた可能性がある。BがAの感情やニーズに対し、より深く共感し、適切な対応を行っていれば、Aが自身の意思決定を行うための支援がより効果的に提供されたと考える。

 

この解答例では、Aが夫の転勤先に同行するという重要な選択肢に対して、Bが適切に対応できなかった点を指摘しています。

 

これにより、Aの悩みやニーズに対するBの対応の不足が明確にされ、改善点が具体的に示されています。

 

でも、事例相談者Bは、所感で、

次回の約束をしたが、キャンセルとなり、数週間後に、代わりに外部のキャリアコンサルタントを紹介してほしいとの要望があった。自分自身の対応に問題があったのかもしれない。

といっています。

 

つまり、事例相談者Bは、この相談者Aの要望から、自分自身の対応について自信を失くしている可能性があり、反省もしているようです。

 

従って、このことも考慮した解答例を作成する必要があります。

 

【問4:解答例3】

Bの対応の問題は、Aのキャリアと家庭の両立に関する不安に対して、十分な共感的理解を示さず、適切な対応を取らなかった点である。BはAの「子供たちのことを考えると一緒に転勤先に行った方がいいのか」という迷いに対して、「ワンオペ育児で頑張るしかない」といった提案を行い、Aの感情や考えを深く理解しようとする姿勢が不足していた。これにより、Aが自らのキャリアについて主体的な意思決定を行うための支援が不十分であり、BとAの間で信頼関係が構築されず、次回の面談がキャンセルされる原因となった可能性が高いと考える。さらに、Aが面談終了後に外部のキャリアコンサルタントの紹介を要請したことからも、Bの対応に対する不満や不安があったことが窺える。

 

以上のように、解答の問題点を深めて考えることで、最終的な解答を得ることができます。

 

自身の解答に満足することなく、最良のものを追求する姿勢が、事例指導者には求められます。

 

(続く)