今日は、第11回1級キャリアコンサルティング技能検定実技(論述)試験事例2選択問題において、《相談者Aが訴えた「問題」は何か》について、解答を考えていきます。

 

この新書式における問1の問への解答を考えるときに、第12回までの設問の内容である、

 

「問1 この相談者Aについて、どのような問題があるか、あなたの考えをその根拠を含めて記述せよ。」

 

と、第13回の設問の、

 

「問1 相談者Aが訴えた「問題」は何か、記述せよ。」

 

この2つの設問の意図の違いは何かを考える必要があります。

 

この2つの設問の意図は、相談者Aの問題に対する理解の異なる側面に焦点を当てています。

 

それぞれの設問の意図の違いを説明します。

 

この2つの設問の意図には、以下の違いがあります。

 

(A):問1.「相談者Aについて、どのような問題があるか、あなたの考えをその根拠を含めて記述せよ」

 

こちらの設問は、相談者Aの状況や背景を総合的に分析し、相談者が抱えている本質的な問題を自分自身の視点から考え、根拠をもって説明することを求めています。

 

相談者の述べた問題だけでなく、相談者の全体的な状況や心理的な状態も含めて、どのような問題が根本にあるのかを考察することが求められています。

 

つまり、相談者Aの全体的な状況を踏まえた「本質的な問題」を自分の分析と根拠をもって答えること。

 

(B):問1.「相談者Aが訴えた『問題』は何か、記述せよ」

 

この設問は、相談者A自身が明確に訴えた問題を、そのまま記述することを求めています。

 

ここでは、相談者が直接言及した問題や不安、悩みを抽出し、それを簡潔にまとめることが求められています。

 

相談者の言葉を忠実に反映し、そのままの形で記述することが重要です。

 

つまり、相談者Aが直接言及した「具体的な問題」を、そのまま記述すること。

 

それでは、事例に基づいて、それぞれの解答を考えます。

 

(A):問1. この相談者Aについて、どのような問題があるか、あなたの考えをその根拠を含めて記述せよ。

 

相談者Aは、夫の転勤と育児の負担が増すことで、キャリアの継続と育児の両立に加え、キャリアアップに不安を抱えている。特に、ワンオペ育児の現実的な難しさが、キャリア形成に影響を与えるため、全体的なライフプランの再評価が必要である。

 

この(A)の解答はキャリア形成に焦点を当てています。

 

 解答Aは、相談者Aが抱える「キャリアの継続」と「キャリアアップ」に対する不安について述べています。

 

ワンオペ育児の現実的な難しさがキャリア形成に影響を与えることに触れ、全体的なライフプランの再評価の必要性を述べています。

 

(B):問1. 相談者Aが訴えた「問題」は何か、記述せよ。

 

相談者Aは、夫の転勤に伴い、育児とキャリアの両立が困難になることを懸念している。特に、育児の負担増加とキャリア形成への影響が大きく、育児のサポートとキャリア継続のため、転勤先に同行するかどうかが重要な課題として浮上している。

 

この(B)の解答は意思決定に焦点を当てています。

 

 解答Bは、相談者Aが夫の転勤に伴う育児とキャリアの両立の困難さを懸念していることに注目し、特に「転勤先に同行するかどうか」が重要な課題であるとしています。

 

この解答は、選択肢としての意思決定に関する問題を明示しています。

 

ところで、事例相談者視点と事例指導者視点で、相談者Aの訴えた問題を解答するというような構造で相談者Aの問題を把握することが行われているようです。

 

では、事例相談者視点で相談者Aの訴えた問題を考えてみます。

 

相談者Aは、夫の転勤による生活環境の変化に直面しつつ、増大する育児負担がキャリア形成に与える影響に不安を抱えている。特に、今後のキャリアアップを目指す中で、ワンオペ育児の現実的な難しさがキャリアに及ぼすリスクを懸念しており、現職を続けるための優先順位付けが求められている。

事例相談者視点で解答すると、このような解答になります。

 

この解答では、相談者Aが訴えている「夫への転勤先に同行する」という問題を捉えられていません。

 

また、事例指導者視点(受検者視点)で解答すると、相談者Aの訴えた問題をどのように表現したらいいのでしょうか。

 

相談者Aが気づいていなくて、事例相談者も気づいていない問題を解答することになるのですが、それは、相談者Aの深層心理に触れることになります。

 

相談者Aが訴えている問題は、事例相談者が記録している

(今まで通りに仕事を続けていくことができるのか不安になっている。)です。

 

相談者Aの発言からは、

「これから先、夫がいない状態で仕事と育児の両立ができるのか、とても不安です。」

「他に協力者…、思いつきません。」

「仕事も続けられることもそうですが、子ども達のことも考えると一緒に夫の転勤先にいった方がいいのか、とも思います。」

「子育ても仕事もしっかりやりたいし、キャリアアップもしたいと思っています。両立させるのは難しいのでしょうか。」

「私は、完璧主義でもないです…。でも今後マネージャー試験を受けることができるのか微妙な心境になっています。」

「ワンオペ育児しかないですかね…。そうですね、優先したいことを考えてみます。」

このようなことが、訴えられています。

 

相談者Aの発言から考えられる深層心理としては、以下のようなものが考えられます。

 

 相談者Aは、夫の不在時に仕事と育児を両立できるかどうかに強い不安を抱いています。

 

これは、自分の能力や限界に対する自信の欠如を反映している可能性があります。

 

また、将来のキャリアアップについても自信を持てず、特にマネージャー試験を受けることへの不安を感じています。

 

「完璧主義でもないです」という発言から、相談者Aは表面上は完璧主義を否定しているものの、内心では高い基準を自分に課していることがうかがえます。

 

そのため、キャリアと育児の両立において、全てを完璧にこなせないことへの不安や葛藤が生じています。

 

夫の転勤先に同行するかどうかという選択に対して、相談者Aは明確な決断ができずに迷っています。

 

この迷いは、自分自身のキャリアと家庭の優先順位をどのように設定するかについての内的な葛藤を反映しています。

 

相談者Aは、キャリアアップと育児の両方を成し遂げたいという強い希望を持っていますが、社会的な期待や役割に対するプレッシャーも感じています。

 

これは、自己実現と社会的期待の間でのジレンマとして現れている可能性があります。

 

これらの深層心理を理解することで、キャリアコンサルタントは、相談者Aが抱えている根本的な問題に対してより適切な支援を提供することができるでしょう。

 

この中から、相談者Aの訴えている問題を一つに絞ると、何が問題として挙げられるのでしょうか。

 

相談者Aの深層心理の中で一つに絞ると、「自信の欠如と不安」が最も根本的な問題として考えられます。

 

夫の転勤や育児の負担増加、キャリアアップに対する不安が全てこの問題に関連しており、これが相談者Aの他の迷いや葛藤を引き起こしている可能性が高いです。

 

自信の欠如が、選択に対する迷いや、キャリアと育児の両立に対する不安を増幅させているため、まずこの自信の欠如と不安に対処することが、相談者Aの問題解決の鍵となるでしょう。

 

では、キャリアコンサルタントが気づいていない相談者Aの問題で、事例指導者が気づくべき視点は次の通りです。

 

自信の欠如が、夫の転勤や育児の負担増加、キャリアアップに対する不安の全ての問題に関連しており、これが相談者Aの他の迷いや葛藤を引き起こしている可能性が高い。完璧にこなせないことから、選択に対する迷いや、キャリアと育児の両立に対する不安を増幅させている。

 

今回は、多面的で多角的な視点で、相談者Aの訴えた問題を考えてみました。

 

第13回の論述の書式が変更になったことから、どのように解答することが、到達点の60点を取れるかどうか、データが不足していますので、あらゆる側面と角度で解答を考えていくことが重要です。

 

上記の解答例は、全てタンタンの主観で作成したものですから、参考にしたい人は参考にしてください。

 

(続く)