今日は、第11回1級キャリアコンサルティング技能検定実技(論述)試験事例1必須問題問5で解答を考えてみます。

 

問5は、第13回の設問を用いて、次の通りです。

 

問5 問4で挙げた事例相談者Bの「問題」だと思うことの中から優先するものを取り上げ、具体的な指導方法を記述せよ。

 

そして、前回、問4の設問に、次のように解答しました。

 

問4 事例相談者Bの相談者Aへの対応について「問題」だと思うことは何か。事例に基づいて記述せよ。

 

BはAの留学のきっかけとなった知人の出来事から、数年企業で働いたら辞めて起業するという固定観念を持って面談を進めたことで、Aとの信頼関係を維持することができず、A自らが紹介された他の機関へリファーしてしまった。BはAが新卒採用に拘ることでビザの切り替えができなくなり、日本に滞在出来なくなった場合、どういう行動をとらなければならなくなるのか現実吟味させることが不足していた。それを回避するためには他の選択肢として中途採用枠を活用する必要があることを認識させる関りが必要であったと考える。また、大手以外でも大きな仕事に携わることができることを資料やデータなどの情報を提供し理解させ、大手への拘りを準大手や中堅企業に向けさせて、Aの行動変容を促すことが大切である。

 

上記の問4で指摘した事例相談者Bの対応の問題を一つひとつ検証して、どの問題を優先すべきか考えます。

 

①BはAの留学のきっかけとなった知人の出来事から、数年企業で働いたら辞めて起業するという固定観念を持って面談を進めたことで、Aとの信頼関係を維持することができず、A自らが紹介された他の機関へリファーしてしまった。

 

この問題では、BはAの知人の事例から、Aも同様に数年企業で働いた後、辞めて起業するという固定観念を持ってしまい、その先入観に基づいて面談を進め、Aの個別の状況やニーズに対する理解が不足し、Aの真意を正確に捉えられていません。

 

それで、その固定観念に基づく対応により、Aの真の意図や感情に共感しきれず、Aとの信頼関係を築くことができずに、その信頼関係の欠如は、キャリアコンサルティングにおいて重要な要素であり、これが不足していたため、AはBの助言に満足せず、Bは他の機関へリファーすることにしました。

 

つまり、BはAの焦りや不安に対する共感的理解が不足していたため、Aが抱えるビザの問題や内定が得られない焦りに対して、十分な共感を示すことができず、Aの心理的サポートが不足しているのです。

 

そして、BはAの計画や希望に対して無条件の肯定的配慮を示すことができず、Aの意見や感情を尊重しきれなかったため、Aが自己開示することが難しくなり、結果的に信頼関係を損なうことになってしまいました。

 

それで、Aの状況に対する具体的な対応策や助言が不足しており、Aの不安を軽減するための具体的なサポートが提供されていなかったため、例えば、ビザの問題に対する具体的な対策や、中途採用の可能性についての具体的なアドバイスが不足していたのです。

 

②BはAが新卒採用に拘ることでビザの切り替えができなくなり、日本に滞在出来なくなった場合、どういう行動をとらなければならなくなるのか現実吟味させることが不足していた。

 

これには、BはAの新卒採用へのこだわりがビザの切り替えに与える影響について深く考慮し、具体的な現実をAに伝えることができていませんでしたので、Aは自分の選択肢や行動の結果について十分に理解することができず、リスク管理が不十分です。

 

それで、Aが日本に滞在できなくなるリスクについて、Bは十分な対策を提示することができなかったので、キャリアコンサルタントとして、Aの状況に応じたリスクマネジメントが重要ですが、Bはこれを提供できていません。

 

Aが新卒採用にこだわることのリスクを回避するための代替案を提示することが不足していたので、中途採用の可能性や他のビザ取得方法について具体的なアドバイスを提供することが求められますが、Bはこれを行っていませんでした。

 

Aの問題を広い視野で捉え、包括的に支援することができていませんので、Aのビザ問題、新卒採用の難しさ、将来のキャリアプランなど、多面的に問題を分析し、統合的な支援を提供することが必要ですが、Bはこれに十分対応できていません。

 

Aの状況やニーズを深く理解し、その上で適切なアドバイスを提供することができていませんし、Aの新卒採用へのこだわりやビザの問題に対する理解が浅いため、Aの不安やリスクを軽減するための具体的な支援が不足しています。

 

③それを回避するためには他の選択肢として中途採用枠を活用する必要があることを認識させる関りが必要であったと考える。

 

BはAに対して中途採用枠という現実的な選択肢を具体的に提示し、説明することができていませんが、

 

それで、Aにとって重要な情報や選択肢を適切に提供することは、キャリアコンサルタントとしての基本的な役割ですが、Bはこれを十分に果たしていないのです。

 

また、BはAの状況やニーズに対して柔軟に対応することができていませんから、Aが新卒採用にこだわる理由や背景を理解し、その上で中途採用のメリットや可能性を説得力を持って説明する柔軟性が欠けていると考えます。

 

Aが直面しているビザの問題や年齢による新卒採用の難しさを現実的に捉え、その課題に対して効果的な対応策を提案する能力が不足しており、相談者の現実的な問題に対して具体的な解決策を提供することができなかったため、Aの信頼を得ることができていません。

 

また、Aの将来のキャリアプランや目標を深く理解し、その上で中途採用枠がどのようにそのプランに貢献できるかを説明することができていませんし、将来のキャリアプランに対する視野が狭いため、Aにとって最適な選択肢を示すことができません。

 

BはAに対して中途採用の必要性を納得させるための効果的なコミュニケーションが不足していますので、相談者の考えや感情に寄り添いながら、現実的な選択肢を分かりやすく伝えるコミュニケーションスキルが求められますが、Bはこれを十分に発揮できていません。

 

④また、大手以外でも大きな仕事に携わることができることを資料やデータなどの情報を提供し理解させ、大手への拘りを準大手や中堅企業に向けさせて、Aの行動変容を促すことが大切である。

 

Bに不足している本質的な問題は、Aのニーズや目標に対して柔軟かつ適切に対応する点があります。

 

Bは、大手企業以外でも大きな仕事に携わることができるという情報をAに提供することができていません。

 

それで、Aの視野を広げるための具体的な資料やデータを用意し、Aに他の選択肢の可能性を理解させる能力が不足しています。

 

さらに、Aが大手企業にこだわる理由を深く理解し、その理由に対する適切な対応策を提案することができていませんので、Aの真のニーズや目標を把握し、それに応じた柔軟な支援を提供する能力が欠けているのです。

 

Aの目標達成に向けて、柔軟に対応し、適応する能力が不足しているので、固定観念にとらわれずに、Aの状況に応じた最適な選択肢を提示し、柔軟に対応する姿勢が必要です。

 

また、BはAに対して効果的にコミュニケーションを取り、Aの考えや感情に寄り添うことができていませんから、Aに信頼を与え、納得させるためのコミュニケーションスキルが不足しています。

 

それで、Aの焦りや不安に対して十分に共感し、サポートする姿勢が不足していますから、Aの心理的な状態を理解し、その不安を軽減するための適切な支援ができていません。

 

これらの点を改善することで、BはAに対してより効果的な支援を提供できるようになります。

以上のことから、事例相談者Bの「問題」と思われる優先すべき問題を考えると、Bの固定観念による対応と共感的理解の不足であると考えます。

なぜそれを優先すべきかというと、固定観念による対応は、Aの個別の状況やニーズを無視し、不適切なアドバイスにつながるため、Aとの信頼関係を損ないます。

信頼関係の欠如は、Aが提供されるアドバイスを受け入れず、他の機関にリファーされるなどの問題を引き起こし、たらい回しにされることで、キャリアコンサルティングの効果を低減させます。

Aとの信頼関係が築ければ、AはBのアドバイスをより受け入れやすくなり、キャリア形成におけるサポートが効果的になります。

Aの個別の状況に応じた対応を行うことで、より適切なアドバイスが可能となり、Aの目標達成を支援できます。

共感的理解は、Aが自分の感情や状況を理解してもらえると感じることで、安心感や信頼感を高め、面談の質を向上させることができます。

このように、固定観念を排除し、共感的理解を深めることで、Bはより効果的な支援を提供できるようになると思われます。

 

その固定観念は、どのような出来事が関係しているでしょう。

 

BはAが留学を決意したきっかけとなった知人の出来事から、数年間企業で働いた後に辞めて起業するというパターンを前提に考えていました。

 

この固定観念が、Aの具体的な状況やニーズを正確に理解することを妨げました。

 

Bは、Aが数年間企業で働いた後に起業するという計画を抱えているため、新卒採用にこだわるAの姿勢を理解しきれず、固定観念に基づいて対応しました。

 

年齢的なハンデがあることも先入観の一因となり、新卒採用は難しいと決めつけていました。

 

Bは、Aが新卒採用に強いこだわりを持っていることに対し、現実的な選択肢として中途採用を提案することができなかったのだが、この背景には、新卒採用が一般的である日本の就職市場における固定観念も影響している可能性があります。

 

このように、Bの固定観念はAの背景や目標、そして日本の就職市場に関する一般的な理解に基づいて形成されたものであり、個別の状況に応じた対応を妨げることになりました。

 

この問題に対処するためには、Bが固定観念を排除し、Aの個別のニーズや状況を正確に理解するためのスキルを向上させる必要があります。

 

Aの固定観念を排除するためには、キャリアコンサルタントとして必要な基本的態度である「受容」「共感」「一致」の3条件が備わっていることが重要です。

 

その傾聴の態度でAの焦りや不安を受け止め、受け入れることが大切ですし、それで信頼関係を築くことが可能になります。

 

それが可能になれば、Aの年齢的なことや日本の就職市場のことに注目することから、Aの新卒採用や大手企業で内定を得たいという希望に目を向けることが大切なことに気づきを促すことができるのです。

 

それから、Aの新卒採用に対して中途採用という提案が、過去の経験をフラッシュバックさせることで、Aの起業に対する意気込みを低下させることも気づく必要があります。

 

以上のことから、BはAの新卒採用や大手企業への希望に対して無条件の肯定的配慮を示すことが大切であり、内定を得られない焦りや留学ビザの切替ができない不安に共感的な理解を示す必要があることを、事例指導者は指導しなければなりません。

 

そのためのには、ロールプレイを用いて、実践的に傾聴の態度や技法を学ばせる指導方法を取ることが重要になります。

 

では、これまでの分析に基づいて下記の解答例を記述します。

 

問5 問4で挙げた事例相談者Bの「問題」だと思うことの中から優先するものを取り上げ、具体的な指導方法を記述せよ。

 

Aの日本で起業したいという思いをしっかりと受け入れ、内定を取れないことによる焦りや留学ビザが切れることへの不安を共感的に理解し、信頼関係を築くことが重要である。BがAの年齢的なハンデにも関わらず、新卒採用枠で大手企業への内定獲得を目指していることに対し、「中途採用なら何とかなる」と応答したことがAとの関係にどのような影響を及ぼしたのかを検証する。Aの留学の目的や就職の目標を改めて確認し、Aが何に対して焦りや不安を感じているのかを振り返り、Bの対応が無条件の肯定的配慮や共感的理解が不足していたことに気づきを促す。具体的には、ロールプレイを行い、Bが相談者役を演じ、Aが苦悩や不安を引き起こしている問題に焦点を当てて面談を進めることで、Aの気持ちを深く理解させる。結果、Bがどのような姿勢や態度が必要なのかを学ばせ、Bの傾聴の態度やスキルの向上を目指して指導する。

 

では、以上で第11回1級キャリアコンサルティング技能検定実技(論述)試験事例1必須問題を用いて、新しい設問形式に基づいた解答の考え方を終わります。

 

まだ、この新書式では検定が1回しか行われていませんので、情報が少なくどのような解答が正答に近いものになるかは、誰もわかりません。

 

でも、受検者としては、それに挑戦して合格点を得られるように、毎日、自己研鑽することが重要です。