今日は、第11回1級キャリアコンサルティング技能検定実技(論述)試験事例1必須問題問4(その4)で解答を考えてみます。

 

問4 事例相談者Bの相談者Aへの対応について「問題」だと思うことは何か。事例に基づいて記述せよ。

 

これまで、3回にわたり、キャリアコンサルタント(事例相談者)と相談者Aの【来談経緯】【面談経過】【所感】から、事例相談者がAをどのように捉えて、どのような対応をして、何が起こったのかを掴み取りました。

 

では、具体的に事例相談者Bの対応の問題と抱えている問題を考えていきます。

 

相談者Aが留学するきっかけとなったのが、知人の成功体験で、Aの知人が日本に留学して日本企業に就職し、35歳頃に起業して成功したことです。

 

この成功体験がAにとって大きな影響を与え、起業への意欲を高めたと考えられます。

 

また、父親の影響もあり、Aの父親が会社を経営しているため、家庭環境や父親の影響もAの起業への意欲に寄与していると考えられます。

 

Aさんが、起業を思い立ったのが30歳の時で、日本の国立大学大学院に留学して2年が経過し、Aさんは32歳になっています。

 

それまでは、中国で小学校の先生をしていて、その仕事には興味を失くしています。

 

その話に、キャリアコンサルタントは、相談者Aのことを、以下のように理解したと考えられます。

 

 Aの知人が日本で成功したことがAの目標設定に大きく影響していると理解したことにより、Aも同様の成功を目指しており、そのためには日本の大手企業での経験が重要だと考えていると捉えています。

 

また、Aの父親が経営者であることから、A自身も起業への強い意志を持っていると理解し、家庭環境の影響で起業を自然なキャリアパスと見なしていると考えた可能性があります。

 

さらに、Aが知人の成功例をモデルにしているため、同じように新卒として日本の大手企業に入ることが必要だと考えていると理解したことで、キャリアコンサルタントはAに対して新卒採用の難しさを伝えつつ、他の選択肢についても検討するよう促しています。

 

しかし、Aの起業に対する強い意志と新卒採用への固執を完全には理解できず、効果的な支援ができなかった可能性があります。

 

それから、Aが内定をもらえない原因は以下の点に起因していると考えられます。

 

Aが32歳であり、日本の新卒採用市場では年齢が若い応募者が優先される傾向が強いため、Aの年齢が新卒採用での内定獲得を難しくしています。

 

Aの大学院での専攻はアジア文化であるのに対し、志望している職種はマーケティングや企画であるため、専門性と希望職種との関連が薄く、企業側から見て適性が疑問視される可能性があります。

 

Aは日本語検定1級を取得しているものの、実際のビジネスシーンでの日本語運用能力に不足がある可能性があり、それが選考過程でのコミュニケーションに影響を与えている可能性があります。

 

面接で自分の強みや経験を効果的にアピールできていないため、企業側に自分の価値を十分に伝えられていない可能性があります。

 

マーケティングや企画といった職種は人気が高く競争が激しいため、他の応募者と比べてAが特に優れている点を示すことが難しいです。

 

これらの点を考慮し、Aが内定をもらうためには、応募する職種や企業の選択肢を広げる、自己アピールの強化、面接練習の充実などの対策が必要だと考えています。

 

では、キャリアコンサルタントは、Aが1年生の3月ごろからエントリーシートを提出し、次のステップに選考が進まず、たまに面接に進んでも、ほとんどが1次で不合格となっていることの原因は何だと考えることが必要でしょうか。

 

Aのエントリーシートでの自己PRや志望動機が明確でなく、企業に対して自身の強みや熱意を十分に伝えられていない可能性があります。

 

アジア文化を専攻していたAがマーケティングや企画職を希望しているため、企業側がその関連性を理解しにくく、適性を疑問視している可能性があります。

 

面接での日本語の運用能力が十分でないため、コミュニケーションに問題が生じ、企業側に好印象を与えられない可能性がある。

 

面接で自分の強みや経験を効果的にアピールできていないため、他の応募者と比べて魅力的に見えない可能性があります。

 

Aが32歳であるため、日本の新卒採用市場では年齢が若い応募者が優先される傾向があり、年齢的に不利な立場にあります。

 

大手企業を中心に応募しているため、競争が激しく、Aが特に優れている点を示すことが難しい可能性があります。

 

就職が決まらないとビザの切り替えができず、日本に滞在できなくなる不安がパフォーマンスに影響している可能性があります。

 

これらの点を踏まえ、Aが次のステップに進むためには、エントリーシートの内容を充実させる、面接練習を重ねる、企業の選択肢を広げるなどの対策が必要です。

 

また、ビザの問題についても早期に専門家に相談し、適切な対応をとることが重要です。

 

しかし、キャリアコンサルタントの対応を見る限り、Aの内定が得られない原因に対して十分に気づいていなかった可能性が高いです。

 

キャリアコンサルタントは、Aの専攻と希望職種のギャップや日本企業の新卒採用の年齢制限については言及していましたが、エントリーシートの内容や面接での自己アピールについて具体的なアドバイスを提供していませんでした。

 

ビザの切り替えに関する不安についての具体的な対策や専門的なアドバイスを提供しておらず、Aの不安を解消するための十分な対応ができていませんでした。

 

Aが大手企業に拘る理由を十分に理解し、大手企業以外の選択肢を提案する際に、具体的な資料やデータを用いて説得する姿勢が見られませんでした。

 

日本語能力検定1級を持っているという情報を基に、面談時の会話がスムーズだったため、面接でのコミュニケーション問題を深掘りすることを怠りました。

 

後悔として模擬面接を行わなかったと述べていますが、これもAのパフォーマンス向上に必要なステップを見逃したことを示しています。

 

Aの意向や不安に対して共感や理解を示すことが不足しており、信頼関係を築くことができていなかったため、Aが他の機関にリファーされる結果となりました。

 

これらの点から、キャリアコンサルタントはAの内定が得られない原因に対して深く理解しておらず、必要な支援を提供することができていなかったと考えられます。

 

相談者Aは、新卒採用、大手企業、マーケーティングや企画などへのこだわりがあり、この思考が前提となっていますので、これを中途採用、中小企業、教師の経験や専攻科目に変えることができなくては内定をもらえないでしょう。

 

このまま、Aが就職活動を続けると、来年の3月の卒業までに内定を取れるのでしょうか。

 

大手の求人はほとんど終わっており、大手に拘っていると卒業までに就職できないばかりか、留学ビザから就労ビザに変更できずに、最悪の場合、本国の中国に帰国することになり、日本での企業が達成できなくなります。

 

ここで、留学ビザの延長ができることなど、正確な更新の手続きのことを知っていれば、もう1年間、挑戦できることが可能となります。

 

それで、キャリアコンサルタントは、相談者Aに対決技法を用いて、就職が出来なかった場合、Aがどのような行動をとらなければならなくなるかということに直面化させることが必要になります。

 

このようなアプローチを用いて、Aに内定をもらえるためには、前提を変える必要があることに気づかせることが大切なのです。

 

また、Aは、起業するためには、大手企業で大きな仕事に携わる経験が必要と考えていますから、このことにも自分の問題として意識化させることが重要です。

 

大手以外でも大きな仕事に携わることができることを、根拠を持ってAに説明することが必要です。

 

相談者Aの前提となっている選択を、別の選択肢に変えることができるであれば、それを変えさせなければなりません。

 

以上のことから、次の設問に答えます。

 

問4 事例相談者Bの相談者Aへの対応について「問題」だと思うことは何か。事例に基づいて記述せよ。

 

BはAの留学のきっかけとなった知人の出来事から、数年企業で働いたら辞めて起業するという固定観念を持って面談を進めたことで、Aとの信頼関係を維持することができず、A自らが紹介された他の機関へリファーしてしまった。BはAが新卒採用に拘ることでビザの切り替えができなくなり、日本に滞在出来なくなった場合、どういう行動をとらなければならなくなるのか現実吟味させることが不足していた。それを回避するためには他の選択肢として中途採用枠を活用する必要があることを認識させる関りが必要であったと考える。また、大手以外でも大きな仕事に携わることができることを資料やデータなどの情報を提供し理解させ、大手への拘りを準大手や中堅企業に向けさせて、Aの行動変容を促すことが大切である。