前回に続き、第12回論述試験事例1必須問題問5についての捉え方を述べていきます。

 

設問は下記の第13回論述試験の問5の内容を用いて考えていきます。

 

問5 問4で挙げた事例相談者Bの「問題」だと思うことの中から優先するものを取り上げ、具体的な指導方法を記述せよ。(25点)

 

前回では以下の点で問題があることを取り挙げました。

 

①独立の提案が早すぎる点です。

 

②昇格に対する考えを深堀りしていない点もあります。

 

③業務の具体的な改善策の提案が不足している点もみられます。

 

④Aの家族の意見を聞いていない点も考えられます。

 

前回挙げた事例相談者Bの「問題」の中から、特に優先すべきものとして「独立の提案が早すぎる」を取り上げます。

 

これに対する具体的な指導方法は以下の通りです。

 

指導方法は、積極的傾聴と深掘りの技術を磨くことです。

 

積極的傾聴の強化として実践演習が必要です。

 

ロールプレイを通じて、相談者の話に耳を傾ける練習を行います。

 

Bが相談者Aの言葉や感情を正確に反映する技術を磨きます。

 

フィードバックセッションでは、実際の相談場面をビデオ録画し、スーパーバイザーや同僚と一緒に視聴してフィードバックを受けます。

 

特に、相談者の話を中断せず、しっかりと聴くことに重点を置きます。

 

深掘りの技術向上としては、質問技法のトレーニングがあります。

 

オープンクエスチョンやフォローアップクエスチョンの使用方法についてのワークショップに参加します。

 

例えば、「なぜそのように感じますか?」や「具体的にどのような点で困っていますか?」といった質問を使いこなします。

 

ケーススタディ分析としては、他のケーススタディを分析し、どのような質問が効果的だったかを学び、Bが相談者Aの深層にあるニーズや希望を引き出すための質問技法を身につけます。

 

コミュニケーションスキルの向上も考えられます。

 

エンパシーの訓練として、相談者の立場に立って考え、共感を示す訓練を行い、相談者が安心して話をできる環境を作り出します。

 

フィードバックの実践として、相談者の話を聴いた後で、正確にフィードバックを返す練習を行います。

 

例えば、「Aさんは現在の仕事と家庭のバランスに悩んでいるとおっしゃいましたが、その点についてもう少し詳しく教えていただけますか?」といった形で確認します。

スーパービジョンの活用もあります。

 

スーパービジョンで、経験豊富なキャリアコンサルタントから定期的に指導を受けます。

 

特に、深掘りの技術や質問のタイミングについて具体的なアドバイスを求めます。

 

現在進行中のケースについてスーパーバイザーと定期的にレビューし、適切な質問やアプローチについてフィードバックをもらいます。

 

これらの指導方法を通じて、事例相談者Bは相談者Aの本当のニーズや希望を深く理解し、適切な支援を提供するためのスキルを身につけることができます。

 

昇格に対する考えを深堀りしていない点を取り上げます。

 

昇格に対する考えを深堀りしていない点では、Aが「昇格に魅力を感じていない」と述べているものの、その背景や潜在的なキャリア目標について深掘りがされていません。

 

Aが本当は昇格を望んでいる可能性があるのに、それを引き出していないのが問題です。

 

Aは「今は以前のように昇格することに魅力を感じていません」と言っていますが、「なにか突破口がないかと思うのですが…。」とも言っており、「…。」で発言が終わっているのが気になるところです。

 

この終わり方は、沈黙と理解できなくもなく、その後に続く言葉を濁しています。

 

これは、前言の中に気づきがあるが、気づかないふりをしていると考えられます。

 

つまり、昇格することが、突破口になることを理解している表れではないでしょうか。

 

相談者Aの発言には「昇格に魅力を感じていない」としながらも「なにか突破口がないかと思うのですが…」という言葉が含まれており、その背後にある真意を深掘りする必要があります。

 

この問題を解決するために、事例相談者Bに対して以下の具体的な指導方法を提案します。

 

昇格に対する考えの深掘りと潜在的なキャリア目標の引き出しを指導します。

 

昇格に関する深掘り質問技法の導入としては、オープンクエスチョンの活用があります。

 

Aが「昇格に魅力を感じていない」と述べた理由を探るために、具体的なオープンクエスチョンを使用します。

 

「昇格に対して魅力を感じないのはなぜですか?」や「過去に昇格した時の経験はどうでしたか?」といった質問を通じて、Aの感じている具体的な問題点や感情を明らかにします。

 

未来志向の質問では、Aが将来のキャリアについてどう考えているかを探るために、「今後5年、10年後の理想的な働き方や役職はどのようなものでしょうか?」や「理想のキャリアビジョンを描くとしたら、どのようなものになりますか?」といった質問を投げかけます。

 

潜在的な希望を引き出すためのコミュニケーションスキルとしては、沈黙の利用があります。

 

Aが「なにか突破口がないかと思うのですが…」と発言した際の沈黙を利用して、その後に続く言葉を引き出します。

 

「それについてもう少し詳しくお聞かせいただけますか?」と促し、Aが心の中に抱えている本音を話しやすい雰囲気を作ります。

 

Aの発言に対して共感的な反応を示し、「Aさんが感じているそのジレンマはとても大きなものですね」と言うことで、Aがさらに話を続けやすくします。

 

昇格のポジティブな側面を探ることも必要です。

 

Aの過去の昇格や成功体験を振り返り、その時に得たものや感じた充実感を再確認させます。

 

「これまでのキャリアで達成したことで、特に誇りに思うことは何ですか?」と質問し、ポジティブな側面に焦点を当てます。

 

昇格のメリットとデメリットをリストアップし、Aが自分自身でその重要性を再評価できるようにします。

 

「昇格することで得られるものは何でしょうか?」と問いかけ、具体的な利点を引き出します。

 

これらの指導方法を通じて、事例相談者Bは相談者Aの昇格に対する本当の気持ちや希望を引き出し、それに基づいた具体的なキャリアプランを提案できるようになります。

 

今回で第12回論述試験事例1必須問題問5についての捉え方を終わります。

 

これまでの相談者Aと事例相談者Bの問題の捉え方について、5回にわたり述べてきました。

 

受検者の皆様の検定に対する考え方の参考になれば幸いです。

 

参考になると考える方は参考にしてください。